未改装の京町家を購入して、ご希望のプランで改修をしたいというお客様は多くいらっしゃると思います。
八清では未改装物件を購入いただいたお客様でご希望の方には、改修を請け負ってくださる設計事務所さんや工務店さんをご紹介させていただきます。
改修を請け負ってくださる組織の1つとして「京町家作事組」さんをご紹介させていただくこともあります。
今回は京町家のプロ集団である、「京町家作事組」さんに会いたい!ということで、八清 暮らし企画部・波多野とともに京町家の改修についてお話をうかがいに、素敵な京町家の事務所へ行ってきました。
建築士の井澤さんと冨家さん、工務店の荒木さんと小林さんにお集まりいただき、座談会形式でいろいろうかがってきました。
参加者プロフィール
井澤 弘隆(代表理事・設計担当)
学生時代に末川協氏の元でアルバイトをしたのがきっかけで、京町家の魅力にどっぷりはまる。現地調査及び建物状況への所見を得意とし、京町家作事組で行う、伝統構法の構造改修に力を注ぐ。
冨家 裕久(一級建築士)
冨家建築設計事事務所 代表。2010年より京町家作事組に加入。設計事務所開業当初は店舗設計が主だったが、開業5年目あたりから、町家の改修に目覚め、町家改修の仕事を見て学んで、現在開業20年で町家の実績も10年ほど。京町家耐震診断士の活動などにも従事。
荒木 勇(工務店)
創業1925年、設立1973年のアラキ工務店 代表取締役。大工志望者を受け入れ5年で一人前へと社内で育てる。アラキ工務店は京町家作事組創設当初から、勇氏は加入して約10年。構造改修に主眼をおき、施工品質の向上を図るとともに、建築士の想いや施主さんのこだわりを実現すべく尽力する。
小林 良洋(工務店)
創業元治元年小林工務店 代表取締役、農学博士(木質構造) 一級建築士。同社は代々神職を務め、五代前から大工を始めて今日に至る。京町家作事組が京町家の作り方をそのまま残していこうとする実直な姿勢に共感し2020年に加入。
波多野 哲也
八清 暮らし企画部。建築士の資格をもち、工事部門でキャリアを重ね、現在は営業部門と統合された、暮らし企画部で京町家をはじめコレクティブハウスなどさまざまなプロジェクトをプロデュースする。
京町家作事組とは?
―まず、京町家作事組とはどういう組織なのでしょうか?
伝統構法で建てられている京町家を実際に設計や改修をしている技術集団です。
会員の中には設計事務所、工務店、左官屋 瓦屋などがあり、お客様からご相談があれば、内部で役割分担を決めて対応しています。
ご相談から設計、施工までを一括でお手伝いさせていただいています。
それ以外でも、京町家や伝統構法の普及活動として、体験イベントや見学会なども行っています。
34社が所属しています。(2020年4月現在)
京町家を改修するのに必要な職種がそろっています。
設計、工務店、左官、瓦屋、板金屋、表具、畳、洗い屋、電気、ガス、水道関係などもですね。
どういう流れで改修を行うのでしょうか?
京町家作事組の事務所で月に2回ほど理事会を行っておりまして、相談があった案件は皆で情報共有をして、初回の相談にうかがう設計担当と工務店の者を設定しておうかがいします。
ご希望などをお聞きして、計画案を作成し、費用の概算を出させていただいて、それで決まれば、進めさせていただいて、工事完了、受け渡しといった流れです。
せっかく組織としてやっているので、案件が進行中はその担当者だけではなく、別の者が違った目線で図面のチェックをしたり、工事中には現場に行って、検査をしたりもします。 そこは組織としてのメリットかなと思います。
もちろん丸々1軒の改修だけではなく、瓦の葺き替えや左官の塗り替え、畳の交換、庭の手入れなど細かいこともご相談いただけますし、京町家の活用のご相談にも対応しています。
伝統構法での構造改修
―では、京町家作事組が行う、京町家の改修とはどういったものなんでしょうか?
施主さんのご希望や残してほしいところ、あるいは予算などはもちろん当然のことですけれども、京町家作事組として一番メインに掲げてるのが伝統構法で構造改修を行うというところですね。
業者さんの中には構造の修繕が必要な箇所を見つけられないまま内装をきれいにして改装してしまっている場合もあるのですが、我々は見えなくなる部分ですが、安心安全というものをより健全にすることが重要だと考えており、そこがポリシーです。
どういうところを優先してされているのでしょうか?
規模にもよりますけれども、全体的に改修をしなければならないようなご相談の時には、まずは大切な優先順位のお話をお客様にさせてもらってます。
改修の優先順位
- 雨漏りを直す屋根の改修
- いくら内装設備を整えたところで、雨漏りをしていたら仕方ないのでまずは屋根雨漏りしてないかをチェックします。
- 構造改修
- 柱が腐っているなどの理由で建物が沈んで傾いてしまっているのを垂直に戻して、柱が落ち込んでしまっている高さのレベルも戻して、建てられた当初の状態にできるだけ戻します。それらを京町家作事組では伝統構法による構造改修と呼んでいます。
- 設備のインフラ
- 古い配線や配管がそのまま残ってしまっていては漏電や漏水の危険性があります。京都市は土管が残っているところが多いのですが、土管が残っていると地面がやせてまた柱が傾くので、優先度が高いです。
この優先順位さえ守れば、あとは内装設備にはどれぐらいお金をかけてどんな風にしようかというのは希望の内容や予算からある程度にはできるという風に考えてますので、そこはケースバイケースですね。
あげまえ※1、いがみづき※2、足元(根つぎ※3)、壁の中、屋根のうらを大切にしましょうというのはお伝えしたい部分です。
見えなくなる部分だけじゃなくて京町家を改修する以上、見えている部分が新築と同様になってしまうと京町家である意味がなくなってしまいますので、結果として見えている部分が京町家らしさであるので、見えない部分を大切にした結果見えている部分があるということになります。
※1 あげまえ 下がってる柱を元の位置まであげて戻す
※2 いがみつき いがんでいる柱を垂直に戻す
※3 根つぎ 腐ってしまっている足元の柱を新しいものに差し替え
―改修する際のこだわりを教えてください。
京町家を改修するときは今後も住まいとして使えるように、今は違ってもまた住まいとして使えるようにという想いでやっています。
最初にその町家ができたときの売りになる魅力の部分というのがあるので、それは大切にしたいですね。
リフォームになるとこの部分は魅力やから残した方がいいという話はお客様にご提案させていただきます。
関心のない方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとまずそれを言ってみるということはしています。
工務店なので、設計図面具体的に実際に仕上げて行けるように頑張るというところです。
ただ、あとで不具合がおこると困るので、意見を言わせてもらうこともあります。
できるだけ町家を残していくのが大事だと思っています。
京町家作事組は私の父と梶山先生という方が25年前に京町家をきちんと直せる職人さんがなかなかないというのと、どこに頼んだらいいかわからないということがあって、京町家をちゃんと元の状態に戻せる職人を育てようということではじまった組織です。
最初の想いを今後も継承すべく、いい加減な仕事をしない、見えないところも手を抜かないでやる、予算の中でできるだけいい材料を使って、お客様に喜んでいただけるようにやるということですね。
まだ京町家作事組には入りたてなのですが、先輩方の設立当初の思いを大切にしていきたいなと思っています。
設計だけでは改修工事はなりたちません。
呼吸の合う施工者と図面では確定できない事項を現場で確認しながら工事を進めることが重要です。
設計・監理と言いますが、監理の比重が大きい仕事だと感じています。
お客様の中には耐震を考慮した改修をしたいとおっしゃる方もいらっしゃると思うのですがそのあたりのお考えはいかがですか?
伝統構法で元の状態に戻すための構造改修を基本的には行っているので、限界耐力計算でこれだけの性能出しますよというのを目指しているわけではないんです。
法律はいかに揺れないかということに重点をおいています。
それはそのほうが耐力計算がしやすいので。
免震というのはあらゆる間取りのバリエーションによって存在するので、一概に数値を出すというのが難しいという側面があるんです。
弱点になる箇所に壁などを補強するという方法はありますが、耐震改修と言えるほどの補強をすると間取りや町家の意匠が崩れてくるので、意匠を残すことを優先すると難しいですね。
世の中的には耐震等級3を目指せということになっており、火災保険が安くなったり、ローンが通りやすくなったりしていますが、それとは別の次元で改修していると考えてくださったほうがいいかも知れないですね。
改修後のケアはいかがでしょうか?
アフターケアとして、竣工後の完了検査と1年検査を行っているほか、ご希望に応じて3年目に無償で点検を行う制度があります。
それに限らず何かあったら工務店さんに連絡いただいたら修繕します。
改修やリノベーションというと、どんなデザイン・内装にしようというところに考えがいきがちですが、構造をしっかり修繕することがとても大事なんですね!
京町家の改修となるとやはり専門の知識や経験が必要になってきますので、構造を見てちゃんとアドバイスをしてくれるプロに頼みたいところです。
予算を考慮して改修すべき優先順位をしっかり提案してもらえたうえで、どんな内装・デザインにするかももちろん相談に乗っていただけます。
京町家作事組とは?というところから、ポリシーについておうかがいしました。
後編では、改修を前提に購入する場合どんな京町家がいいのか、これからの展望などをお聞きしました。
今回お話をうかがったのは
京町家作事組
事務局:京都市中京区三条通新町西入ル釜座町32番地マップ
受付:月~金 10:00~12:00/13:00~16:00
TEL:075-252-0392
※お越しになる場合は、必ず、事前にご連絡ください
後編の記事はこちら
後編では京町家購入のポイントや今後の展望などをおうかがいしました。
京町家の物件あります!
八清Webサイトより物件一覧をぜひチェックしてみてください!!
- この記事を書いた人Hasegawa Yuka
- 寡黙で知的、の~んびりな空気を漂わせておきながら超スピードで八清ブログ記事を書き上げるメディアデザイン部のテキストマシーン。ほがらかな笑顔で相槌♪聞き上手な彼女は社外的な取材もこなす。彼女にインタビューされた日にはすべてを暴かれてしまうに違いない。
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