こんにちは、メディアデザイン部のチョイです。
先日、地域商社「京都アンプリチュード」のショールームを訪れる機会をいただきました。
この記事では、私が実際に体験した京都アンプリチュードに展示されている伝統工芸を活かした新しい提案についてお伝えしたいと思います。
京都は、日本の歴史と文化が息づく場所です。
その中でも、伝統工芸は特に注目されています。
最近では、ホテルや施設のリノベーションやインテリアコーディネーションにも伝統工芸が取り入れられることが増えてきているようです。
そこで、伝統的な素材、技術や意匠を用いて、新しくもストーリーを持つ素材を提供する地域商社「京都アンプリチュード」が設立されました。
京都アンプリチュードは、2022年7月に京都中央信用金庫が100%出資して設立された地域商社です。
伝統工芸と施主、工務店や設計士とをつなぎ、コーディネイトの提案やメンテナンスなども行う彼らは、地域の魅力ある資源に着目し、「地域の新しい資源を世界へ届ける」というビジョンを掲げています。
ちなみに、「アンプリチュード」とは、幅を広げる、増幅させるという意味だそうです。
そのために、伝統的で革新的な技術から生まれた素材や意匠を、空間を引き立てるマテリアルや洗練されたプロダクトにリデザインし、新しい価値を持った素材や商品として京都から世界に発信しています。
▲見学会当日の様子
今回見学させていただいたショールームでは、独自コレクション「WAZAI」と呼ばれる約500の素材・アイテムが展示されています。
日本の伝統的な織り、染め、和紙、漆塗り、陶磁器、竹・木工細工など、多岐にわたる工芸品がそろっています。
和傘から生まれたランプシェードや、繊細な光を放つ絹ガラス、風情ある織物壁紙など、魅力的なアイテムが数多く展示されていました。
今回は、八清の建築ディレクション部のインテリアコーディネーターである岡田と一緒に見学し、どのようにアイテムを活用できるかアドバイスを聞きながら見て回りました。
岡田 直子
育児と仕事を両立する二児の母は、八清第一号のワーキングマザー。携わった業務は多岐に渡り、頼りになるマルチプレイヤー。 なんでも計画的に物事を進めるしっかり者だが、時に見せる天然ぶりは彼女の魅力。
それでは、実際に見学した中からいくつかの伝統工芸アイテムについてご紹介します。
歴史のある立地で伝統工芸の魅力を体感できるショールームへ
堀川御池近くにある京都アンプリチュードは、世界遺産に登録された二条城からわずかの約6分の距離(東大手門まで)に位置しており、京都市の中心部でもあり歴史も色濃く感じられる立地です。
▲地下鉄東西線「二条城前駅」2番出口から歩約2分、御池通りに面するショールーム
まずは1階で自由に内覧をしました。
1階のショールーム・ギャラリーショップでは、幅4mの超広幅の西陣織の緞帳や、壁を覆うダイナミックな竹のアートワーク、多様な織物・染物による空間「生地の森」など、京都ならではの伝統工芸の粋が楽しめます。
また、ここでは「WAZAIプロダクト」と呼ばれるアート商品の展示と販売も行われており、一般の方々も気軽に訪れて魅力的なアイテムを見て購入することができます。
▲1階には、伝統工芸の技を生かした置物、草木染のトレーなどの「WAZAIプロダクト」というインテリア小物が並び、訪れた人が購入できる
▲(手前の招き猫・奥のだるま)陶芸作家・金井悠氏の「BukuBuku」シリーズ
ショールームに入ってすぐに目を惹かれたのは、天井に設置された和傘照明でした。
繊細な竹骨で作られた美しい曲線が特徴であり、さらに、バックにある青い西陣織の緞帳と調和し、まるで空に浮かんでいるような様子に見えます。
伝統的な和傘の形状を踏まえつつも、シンプルでモダンな要素も感じられるデザインとなっています。
その独創的なアプローチが、まさに伝統と革新が融合した京都アンプリチュードならではの特徴と言えるでしょう。
和傘から和の魅力感じるランプシェードへ
▲この存在感のある照明は、ショールーム全体の雰囲気を一層引き立てています
江戸時代後期に創業した日吉屋は、全国でも数少なく京都では唯一の和傘の専門店です。
現在、和傘で培った伝統技術を活かし、インテリア照明やデザイン雑貨などの開発に取り組んでおり、世界各国で展開しています。
日吉屋の5代目当主である西堀耕太郎さんは、自社の経験に基づいたノウハウやネットワークを広く伝統産業振興に役立てたいという思いから、アドバイザリー事業にも注力しています。
また、京都アンプリチュードとも協業し、日吉屋だけでなく様々な「WAZAI」の提案も行っているそうです。
伝統産業である和傘は千年以上の歴史を持ちながらも、戦後の高度経済成長と生活様式の劇的な変化により斜陽産業となってしまいました。
かつては「普段使い」の商品として広く愛用されていた和傘も、現在では「伝統工芸品」として扱われることが多くなり、存続が非常に困難となっています。
しかし、日吉屋は和傘の新たな使い道を模索し続けてきました。
その結果、現代のライフスタイルに合致する新しいカタチとして、「古都里/KOTORI」と呼ばれるランプシェードが生まれました。
▲日吉屋五代目当主 西堀耕太郎さんに「WAZAI」や京都アンプリチュードの活用の仕方ついて説明していただきました
このランプシェードは、和傘の魅力をそのままに、洗練されたデザインと機能性を備えています。
和紙や竹などの伝統的な素材を使用しつつも、現代の照明としての要素も取り入れられています。
日吉屋の熟練した職人たちの手で作り出されるランプシェードは、和傘を太陽にかざした時に差し込む和紙のやさしい透かしの光や温かみと、シンプルで幾何学的な模様が見事に融合した新しいアート作品とも言えるでしょう。
また、和傘のように開閉ができるため、使わない時の収納にも便利です。
これまで伝統工芸品としての枠にとらわれていた和傘が、新たな息吹を得て現代の暮らしに調和しつつも、和の魅力を感じさせるランプシェードとして生まれ変わったのです。
日吉屋の取り組みは、伝統と革新を結びつける素晴らしい例となっています。
八清のインテリアコーディネーター・岡田から素材の魅力と活用方法提案
「この照明器具は、某照明器具メーカーのカタログ記載商品でもあり、2007年に開業した『THE SCREEN』のエントランスを飾った時には、一目散に見学に行ったほど、私にとってはお馴染みの、業界でも有名な商品です。
これまで、いくつもの建物にコーディネイトして参りました。
サイズ、カラーバリエーション共に豊富なので、空間に合わせてコーディネイトできるのも魅力の一つ。
和紙を通した穏やかな灯りですので、寝室にもオススメです。
1灯だけでも十分にインパクトのある照明器具ですが、吹き抜け、高天井、勾配天井の空間に多灯使いすることで、印象的な空間がつくれます。
また、この器具は和傘のように開閉できるのも特徴。
灯具から外してコンパクトに収納できるので、気分に合わせて着せ替えできる優れものです。」
・例えばこんな使い方
(sumica vol.4 一体環の家)
存在感抜群の螺旋階段を中心とした高天井の空間。
異なるサイズの「古都里」を吊り下げ、優しく穏やかな灯りで心が和む居心地の良い空間を演出することができます。
繊細な柄が上質な空間を演出する絹ガラス
▲様々な模様がある絹ガラスを置いてあるマテリアルライブラリー)
次に、2階のマテリアルライブラリーを訪れました。
こちらでは、日本の素材・技術・意匠に焦点を当て、現代の空間やインテリアプロダクトなどで使用可能な壁紙、壁面パネル、タイル、床材、テキスタイルなどが取り揃えられています。
その中で、多くの八清社員を魅了したアイテムとして、絹ガラスをご紹介いたします。
▲実際に2階の個室の扉にも使われている、七宝柄の絹ガラス)
絹ガラスは、金糸を含む極薄の絹織物と紋様の輝きをガラスに閉じ込めた装飾合わせガラスです。
この素材は、きもの白生地ブランド「伊と幸」が独自の感性と伝統工芸士の技術を結集して開発したものであり、スタイリッシュな空間装飾材として注目されています。
独特な透明感を持ち、光が通り抜けるときに輝きを放ちます。その美しい輝きは、繊細な絹織物と日本古来の伝統美である「雅」との融合によって、さらなる華やかさをもたらします。
また、絹ガラスは高い耐久性と機能性も備えており、長期間にわたって美しさを保ち続けることができます。
マテリアルライブラリーでは、様々なデザインの絹ガラスが展示されており、その優れた特性や美しさを実際に確認することができます。
また、生地や柄の選択だけでなく、お客様のご要望に合わせた特殊加工も可能です。
壁面やパーティション、天板などのデザインにおいて、上質な空間を演出するための素材として広く活用されています。
八清のインテリアコーディネーター・岡田から素材の魅力と活用方法提案
「展示されていたように、パッと思い付くのは、建具への組み込み。
展示は框ドアですが、障子建具の和紙の代わりに使うのも素敵だと思います。
この他私がチャレンジしたいのは、室内の窓や、欄間使いなど。
ステンドグラスが用いられるシーンを絹ガラスに置き換えても素敵だな、と。」
▲金糸を用いた絹ガラスの模様を見入っていた岡田)
・例えばこんな使い方
(sumica vol.5 今よりもっと幸せになれる家)
天窓が設けられた階段と階段下のPCコーナー。
階段の間仕切り扉に絹ガラスを取り入れることで、洋室にも相性の良い和モダンテイストに一変します。
トップライトから降り注ぐ自然光がガラスを通して、落ち着いた品のある空間を演出してくれます。
日本情緒を備えたモダンな雰囲気を醸す織物壁紙
続いて目に飛び込んできたのは、2階の一角に置かれた彩りの織物壁紙です。
織物壁紙は、絹や麻、綿などの自然素材を使用しています。
その特徴は、一般的なビニールクロスにはない質感や表情、そして心地良い手触りです。
テクスチャー感が豊かな織物壁紙は、自然素材の温かみと独特の風合いを引き出し、立体的な素材感によって空間に奥行きを与え、上品なラグジュアリーさをもたらします。
また、織物壁紙は建材としての耐久性も備えています。
見た目の美しさだけでなく、実用性も兼ね備えた魅力的な素材と言えます。
マテリアルライブラリーでは、素材やデザインの異なるラインナップが豊富に取り揃えられていますので、自分の好みや空間に合わせて最適な素材を選ぶことができます。
自然の美しさと繊細さを大切にしながら、モダンな雰囲気を追求した空間づくりに織物壁紙は一役買うことでしょう。
八清のインテリアコーディネーター・岡田から素材の魅力と活用方法提案
「織物壁紙は、国内メーカーの壁紙の見本帳等でも珍しいものではありませんが、特にこの写真の麻の素材感と色彩に目を奪われました。
コンセプトに合う建物が出て来るまでひそかに温め続けています。
織物なのでやはり、汚れや水がかりの無いシーンが安心ですね。
寝室も良いですが、せっかく素敵な商材なので、多くの人の目に留まる玄関からビューポイントに使いたいと思いました。
建具に利用するのもカワイイと思います。」
・例えばこんな使い方
(sumica vol.5 今よりもっと幸せになれる家)
収納やクロゼットの内側に、少しインパクトのある色柄の織物壁紙を使用してみるのもいいかもしれません
質感のある壁紙が美しく浮かび上がり、収納周りを上品かつ華やかに演出します。
進化を続ける伝統工芸を目の当たりに
この度は京都アンプリチュードの見学会に参加し、進化を続ける伝統工芸の魅力を実感しました。
ご紹介させていただいたものに加え、ショールーム内には数多くの素晴らしいアイテムが展示されており、まさに伝統工芸の宝庫に迷い込んだような感覚でした。
中には見たことのないプロダクトや素材も多く、訪れること自体が楽しい体験であり、八清でもこれらのアイテムを取り入れた家を実現したいという妄想を膨らませました。
▲他にも西陣織のテキスタイルや、和紙壁紙など豊富なラインナップが展示されています
伝統工芸が家にあると一気に華やかで上質な空間を演出してくれます。
ショールームでは、活用方法に迷った方にもコーディネイトの相談にも応じてくれるため、ぜひ一度足を運んでみることをおすすめします。
京都アンプリチュードのショールームで、伝統工芸の素晴らしさと魅力を存分に味わい、自分の理想の空間を実現するためのヒントを見つけてください。
京都アンプリチュード
住所 京都市中京区御池通堀川東入森ノ木町208番地の2
Tel 075-286-8815
E-mail info@amp-kyoto.co.jp
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