私たちが絹ガラスと出合ったのは、京都のクリエイターや職人が作る様々な建材やファブリック、工芸品、アートなどが展示されている、京都アンプリチュードさんのショールームを見学させていただいた時です。
ガラスに挟まれた繊細な紋様がとても目を引き、ぜひとも八清のリノベーション物件で使ってみたいという話をしていました。
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京都アンプリチュードに展示されている伝統工芸を活かした新しい提案についてお伝えしたいと思います。八清の岡田とどんな風に使ったら素敵なしつらえになるかも妄想してみました。
京都産木材を使って中古物件をリノベーションするプロジェクト「MOMO HOUSE」をスタートするにあたり、京都の伝統工芸を取り入れ、京都ブランドのリノベーション住宅として京都らしい価値を提供したいと考え、京都アンプリチュードさんで出合った、絹ガラスをぜひ使ってみたいということになりました。
白生地メーカー伊と幸
今回、京都アンプリチュードさんにご協力いただき、絹ガラスのメーカーである、株式会社伊と幸(いとこう)さん(※以下、伊と幸と記載)にお話を聞く機会を得ました。
伊と幸は1931年に絹の和装用白生地メーカーとして創業されました。
白生地とは着物に使用する生地の事で、染色加工をする前の白い生地を言います。
白生地に織り込まれる地紋様は日本画家でもあった創業者の伊藤幸治郎氏が図案を描かれていたそうで、現在も日本画の心得がある社内の図案家が製作されるそうです。
自社で描かれる図案を大切にしながら、繭や生糸、製織までどの工程でも白生地メーカーとして高い品質を守り続けておられます。
しかしながら、創業時と今では着物を着る機会が激減。
新たに着物の文化性や職人をはじめとする作り手の方々の活躍の場を、業界を越えて広げるべく、インテリア商材へと展開されるようになりました。
絹ガラスを開発
ガラスに絹織物を挟み込んだ絹ガラスはガラスの重厚感と絹の繊細さが融合することで高級感のある空間を演出することができます。
伊と幸のショールームにお邪魔して様々な絹ガラスを見せていただきながら、私たちが展示品を見たときに引き付けられた理由は、金糸や銀糸の儚げな煌めきと伊と幸オリジナル地紋様の美しさにあるのではないかという考えに至りました。
お話を聞くまではレースのような生地を挟み込まれているのかなと想像していましたが、実は薄い生地に紋様を刺繍しているのだということを教えていただきました。
絹は紫外線や空気による酸化や劣化がおこりやすい素材です。
ガラスに挟み込むことで、そうした酸化や劣化を防ぐことができるというのも大きなポイントです。
繊細な絹織物を長く楽しむことができる絹ガラスは、割れたときの飛散防止に優れ、99%紫外線カット機能が備わっているのも魅力です。
生地や柄、素材、厚みなどオーダーが可能。
着物の紋様には意味があるものが多くあります。
例えば、1つの輪に4つの輪を重ねてつないだ紋様の七宝柄は輪が連鎖しつながることから、円満やご縁などの意味をもちます。
二色の正方形が交互に並ぶ市松は途切れることがないので、無限の繫栄を意味します。
こういった古くから親しまれている紋様をベースに伊と幸ならではの創造性や技術も加わり、独自の美しい紋様へと昇華しています。
しつらえる空間によって、紋様の意味を掛け合わせることでより奥深く遊び心のある空間へしつらえることもできます。
絹ガラスの中には金を手作業で描く金彩が施された生地も選ぶことができます。
伊と幸のショールームで金彩の実演をしていただき、実際に体験もさせていただきました。
とても繊細な作業で、体験してみると職人技のすごさに驚くばかりです。
こうした職人技を後世に残していくという意味でも、価値のある商品だと感じました。
またガラスよりも軽量で加工性の高い絹アクリルも販売されています。
ガラスと同じように透明性があり、絹の繊細さを感じられるので、障子に入れたり、照明にしたりすることもできます。
八清で造る和の趣きを持たせたリノベーションにはとても相性が良さそうです。
純国産をブランド化
かつて日本の一大産業として生産されていた絹糸ですが、現在は99%以上を海外で生産されたものを輸入しているそうです。
良質な国内産絹糸の生産を途絶えさせないために、伊と幸では1996年に繭・生糸から白生地までの統一ブランド「松岡姫」を立ち上げました。
契約農家に養蚕をお願いし、繭から生糸を紡ぎ、白生地を製織します。
繭を作る蚕は湿気に弱く、適切な温度と湿度管理を必要とする繊細な生き物です。
また、着物ひとそろえに必要な繭の量は相当で、エサとなる桑の畑も広大な規模が必要となります。
養蚕農家だけでなく国をあげて大切に育てられてきた国産の絹でしたが、安価な海外産の糸や化学繊維の普及により、日本の絹は希少なものになってしまいました。
純国産の伝統を守り、良質な製品を届けたいという思いから、立ち上げられた「松岡姫」のお話をうかがい、私たちがスタートさせた、京都産木材のプロジェクト「MOMO HOUSE」とも通ずるものがあると感じました。
リノベーション物件にて
さて、では実際に絹ガラスがどのように使われているのか完成間近の物件を見に行ってきました。
廊下とLDKの間にある引き戸の上と洗面脱衣所、トイレの引き戸の上に入っています。
柄は麻の葉紋様を選びました。
麻の葉は子どもの成長を願い、かつての風習では新生児の産着などに用いられた紋様です。
麻の葉は生長が早く、まっすぐにのびる特徴があるからだそうです。
「長生き」や「無病息災」の意味も込められています。
また麻の葉は虫がつかない神聖な植物とされています。
京都産木材を使用しリノベーションした当物件も住まわれる方を長く見守ることができるようにとの願いを込めてこれを選びました。
木の建具のとても良いアクセントでありながら、光を通す役割も果たしています。
お話をうかがったことで、さらに絹ガラスに愛着がわきました。
この素晴らしさを買主様にも引き継げるようお伝えしたいと思います。
長く受け継いできた文化を新しいかたちに変え次の世代へとバトンを渡すお手伝いができることをうれしく思います。
この絹ガラスがここに住まう方の日常に光を届け、京都産の木材が見守り支えることを願っております。
株式会社伊と幸

絹ガラスはショールームで見せていただくことができます。ショールームへ行かれる際は事前予約が必要です。
京都市中京区御池通室町東入龍池町448-2
木と緑を楽しむ京町家

専用通路の奥に佇む京町家は、広い庭と大きな窓を備えながらも、周囲の視線を気にせずプライバシーが守られた空間です。窓から眺める庭は、春の芽出しから冬の雪景色まで、四季折々の変化を楽しませてくれます。
MOMO HOUSE

京都で生まれた木材を私たちの暮らしに使うこと。それだけで持続可能な社会に貢献することが可能です。それは木材と私たちに最適な環境をもたらし、地域経済や地球にもやさしい。個々の暮らしだけでなく地域や地球にも素敵な循環をつくるのがMOMO HOUSEです。
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