e9-01.jpg

2019年6月22日、京都南東九条に、作品をつくる・地域をつくる劇場「THEATRE E9 KYOTO」がオープンしました。

「東九条」は、京都駅から徒歩圏内にありながらまだまだ開発が進んでいない地域。

八清の倉庫であった場所が、100年続く小劇場に生まれ変わることとなったストーリーを、立ち上げにかかわられた八清の青山幸司さんと、THEATRE E9 KYOTO支配人の蔭山陽太さんに取材しました。

劇場×コワーキングスペース×カフェが併設する空間

e9-room1.jpg

THEATRE E9 KYOTOは、ブラックボックスと呼ばれる100席ほどの小劇場となっており、演者と観客との距離も近く臨場感あふれる空間作りが魅力となっています。

すでに2020年3月末まで公演が決まっており、ダンスや演劇、コンテンポラリーアートなど、様々なジャンルの作品を展開しています。
(詳しくは公式HPをご覧ください。→https://askyoto.or.jp/e9/program)

鴨川沿い1階にはカフェを構え、1年を通じて市民とアーティストが集える「広場」として運営されています。
公演前は待ち合わせ場所として、観劇後は歓談の場所として。人や情報との出会いがある場所となり毎日賑わっています。

そして2階には、ビジネスパーソンの集うコワーキングスペースを展開。
国内においてビジネスとアートが一緒になっている施設は珍しく、 ましてや劇場とコワーキングスペースが一緒になっている施設は国内初。

e9-cw1.jpg

ビジネスパーソンにとってのアートが注目されている昨今、文化芸術が身近にある空間は大変魅力的ではないでしょうか。
(コワーキング・カフェ運営:株式会社ラ・ヒマワリ)

e9-cw2.jpg

今回お話を伺った支配人の蔭山さんは、閉じていないアート施設として、"繋がりや偶然の連続"を期待していると言います。

住宅街の中に人が集まる劇場があるというのは、閉じたエリアを開くことにも繋がります。

この場所だからこそできる取り組みをしたい。

様々な場所で劇場を運営されてきた蔭山さんだからこそのエリアへの想いがそこにありました。

小劇場への熱い想いがカタチに

e9-kageyama.jpg

昔から50席以上の小劇場がたくさんあったという京都。

大学が多く、発表の場も多い環境から、様々な演劇やダンス、舞台芸術が行われてきました。

劇場をより身近に、というのが小劇場の良さ。駆け出しの演者にとってもスタートするにはちょうどいい。

そんな中、ほぼフル稼働していたにも関わらず、持ち主の高齢化や建物の老朽化のため、 ここ数年の間に5つの小劇場がクローズしてしまいます。

そして、33年続いていた"アトリエ劇研"という名の劇場までもクローズしてしまうことに。

当時、ロームシアター京都を運営していた蔭山さんは、アトリエ劇研のディレクターであったあごうさとしさん(現シアターE9ディレクター)に相談をうけ、京都の小劇場を存続させるための物件はないだろうかと、八清の青山さんに相談を持ちかけました。

八清の文化事業のきっかけとなった劇場

e9-aoyama.jpg

八清のお客様として交流のあった蔭山さん(現THEATRE E9 KYOTO支配人)より、京都の小劇場として転用できる物件はないだろうかと相談を受け紹介することとなった八清の倉庫。
それまでは、八清が古建具や家具、備品などを保管する倉庫として使用していました。

倉庫として購入した30年前、不動産としての価値はまだまだ低いものでした。
そこが今回劇場に生まれ変わることで、人に足を運んでもらう不動産に変わる。
不動産業者として、地域が盛り上がりエリアの価値を上げていく一助となれればこんな嬉しいことはないです、と青山さん。

町家を多く取り扱う八清にとって、たくさんの人が回遊することで価値を高める事業に関わることは、会社としてとても幸せなこと。
八清の文化事業のきっかけともなったプロジェクトはすでに多くのひとの力で動き出しています。

刻み込んだのは100年続けたいとの想い

e9-wall.jpg

クラウドファンディングによって支えられているTHEATRE E9 KYOTO。

プロジェクトが始動して以降、世代、地域をこえて、非常に多くの方々からの支援が集まりました。

新しいものをつくるけれど、かつて関わったひとたちの歴史にも支えられ成功したクラウドファンディング。

劇場入り口には、ご支援された方のネームを刻んだプレートが壁一面に広がっています。

刻み込んだのは100年続けたいという想い。

支援者の中には、子供の名前を刻むなど、世代を超えたネームを刻んだ方も多く、自分だけでなく家族で足を運ぶ場所になるようにとの想いが込められています。

地元のひとに愛される劇場に

THEATRE E9 KYOTOは、"100年続く小劇場"を目指しています。

劇場はパブリックな場所であることが大事だ、と蔭山さん。

開かれた場所であるということは、何より地域の人たちが使う施設でなければなりません。
そのため、周辺の学区に住んでいる方には年間1万円で劇場を利用してもらう仕組みをつくりました。

コアな演劇ファンの方たちだけでなく、劇場に来たことがない近隣の方にも足を運んでいただくためには気軽に利用できることが大事です。
もしかしたら一生触れることのなかったかもしれない演劇の世界に、触れるきっかけにしたいという想いが込められています。
地元の方に来ていただくことで、よりリアルな反応を受け取れるため良い意味で緊張感があるのだといいます。

なんと言ってもロケーションが素晴らしいTHEATRE E9 KYOTO。
最寄駅の東福寺駅からは歩いて7分、京都駅からも徒歩圏内。
目の前には鴨川が流れるとても静かなエリアとなっています。

「芝居や公演ももちろん、ここにしかない場所をみに来てほしい。いつでもご案内しますよ。」と蔭山さんの大きな笑顔をいただきました。
芸術の秋、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

e9-kageyama2.jpg

2019年11月には、一般社団法人アーツシード京都が京都市からの受託事業として、 「東九条野外劇場 まちがつくる×まちがめぐる×まちがのこす」を開催予定です。

現代芸術家森村泰昌氏による新作能/狂言師茂山千之丞氏による市民狂言/東京ヘブンアーテイスト制度の創設で知られる橋本孝雄氏プロデュースの大道芸、これら3つのプログラムをメインとし、エリア内の市有地を活用した文化芸術イベントとなっております。

詳しくは、「THEATRE E9 KYOTO」HPをご覧ください。
https://askyoto.or.jp/info/1402