「住みたい田舎ベストランキング全国1位」を何度も受賞する愛媛県西条市。愛媛県と言って思いつくのは、瀬戸内の美しい海、温暖な気候、豊かな自然、おいしい水、そしてみかん。
一体何が人をそんなに惹きつけるのか。その魅力を探るべく、家族で2泊3日の愛媛旅をすることにしました。
四国に上陸!
秋晴れの中、京都南ICから高速に乗り、車を走らせること4時間。
瀬戸大橋で海が見えると車内はキャーキャー、ハイテンション!
橋を渡って四国の入口、香川県丸亀市に上陸しました。
お腹がペコペコだった私たちはそのまま車を走らせ、愛媛県最初の目的地「カフェ・ラ・ミール」へ。
新居浜市にあるこの建物は、建築家の谷尻誠・吉田愛が率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEが設計した素敵なカフェ。
インパクトのある三角屋根の上には無骨な石が敷き詰められ、まるで美術館のような佇まいに思わず感動!
子どもたちは早々に店内に入る中、私は外で一人でにんやりしながら写真撮影をしていました。
田舎を求めて愛媛に来て、最初がこのモダンな建物。
何だかとても楽しい旅になりそうです。
カフェ・ラ・ミール
住みたい田舎 西条市
素敵な空間でお腹を満たした私たちは、いよいよ「住みたい田舎ベストランキング全国1位」(宝島社「田舎暮らしの本」2021年版)の西条市へ。
事前にYouTubeで西条市の予習をした際に、ぜひ行ってみたいと思ったのが、「うちぬき」です。
西条市内には広範囲に地下水の自噴井があり、これらは「うちぬき」と呼ばれています。
あちこちで水が湧き出ているため、その地域にはなんと水道料金が無料の家も!?
なんとも羨ましい話ですね。この「うちぬき」は、名水百選にも選定されているそうで、子どもたちは、空のペットボトルいっぱいに水を詰め、とても満足気でした。
次に向かったのは、同じく西条市の「いとまちマルシェ」です。
公園のような広場に面した、ソーラーパネルの乗った大きな平屋の建物。
これは西条市に誕生した「糸プロジェクト」の一貫で建てられたもので、地元生産者さんの思いのこもった地産食材などがずらーっと並び、見てるだけでワクワクします。
今後は同敷地内に9人の建築家が作る住宅ゾーンも作られるとのことで、ここがさらに更に魅力的な場所に成長していく予感がしました。
「糸プロジェクト」は、愛媛県西条市に新しく誕生した「いとまち」に集まる人びとのための、参加型プロジェクトです。
「エネルギー」「テクノロジー」「グリーンインフラ」「食」「建築」をキーワードとした、東京大学隈研吾研究室によるマスタープランを基に、遊びやすく暮らしやすい自然溢れるまちづくりを目指します。
遊びやすく暮らしやすい自然溢れるまちづくりを目指します。(愛媛県西条市糸プロジェクトHP引用)
いとまちマルシェ
糸プロジェクト
宿泊地今治へ
初日の長い長い移動の旅を終え、1日目の宿泊先に選んだのは今治市にある「休暇村 瀬戸内東予」。
このホテルは瀬戸内海に面した高台にあるため、ロビーからも美しい瀬戸内海に浮かぶ島並が一望できます。
デッキに出て海や空を眺めていると、まるで時間が止まったかのように穏やかな気持ちに。
余談ですが、私の名前に含まれている「海」の字は、実は瀬戸内海の「海」ではないかとよく思うのです。
落ち着いた穏やかな海、だから、落海。
非常に珍しい名字ですが、瀬戸内海に面した広島県呉市の倉橋島には、なんと"落海"という名字の人がたくさんいるそうです。
自分のルーツは瀬戸内海にある?!
今回愛媛に来たのは、実はそういう理由もあったりします。
2日目の朝。伊予市
ビュッフェ形式の朝食を楽しんだ私たちは、伊予市を目指しました。
なぜ伊予市なのかというと、海岸沿いに「愛ある伊予灘線」というチャーミングなネーミングの鉄道が走っていて、どうしてもその海沿いをドライブしてみたかったんです。
高速で伊予ICを降りると目前に広がるのは、たくさんの緑にパノラマの海。
何もかもがキラキラと輝いているように感じ、テンションはMAXに。
念願の海沿いを気持ちよく走っているときに、たまたま「道の駅 ふたみ」に出会いました。
まだできて新しいRCの建物に、魅力的な品揃え。
白いビーチも併設されていて、なんとも理想的な道の駅なんです。
ビーチでは、バドミントンのような謎のスポーツを楽しんでる人が多くいたので、何だろう?と思ってググってみると、「ジャズミントン」という新しいスポーツだそう。
全米で大ヒットしたもので、日本には去年上陸したばかり。
そんな流行の最先端が、ここ愛媛で見られるとは!ぜひジャズミントン、トライしてみたいものです。
「愛ある伊予灘線」でぜひ行ってみたかったのが、度々ドラマなどのロケ地にもなるという、海の見える「下灘駅」。
駅の向こうに遮るものは何もなく、まさにフォトジェニック!夕日が海に沈む頃、それはそれはロマンティックなことでしょう。
駅の反対側には珈琲スタンドもあり、鉄道マニアやカップルなど、多くの方が訪れる人気スポットのようです。
愛媛の海を十分に満喫した後は、いよいよ内陸方面へ。
今回の旅のもう一つの目的は、古いまち並み巡りです。愛媛の歴史が感じられるエリアを目指したいと思います。
まず最初に訪れたのは「伊予市立翠(みどり)小学校」。愛媛県内最古の現役木造校舎で昭和7年(1932年)に建築されたとのこと。
洋風なデザインで、色あいやプロポーションがとにかく美しく、山と空にも映えます。
子どもたちを、こんな小学校に通わせたい!そう思いつつここを後にしました。
下灘駅
伊予市立翠小学校
歴史を感じる城下町散策
お腹が空いてきたところで、今度は"伊予の小京都"と呼ばれる大洲(おおず)市へ移動しました。
大洲市は坂本龍馬ゆかりのあるまちとしても有名です。
こちらは、幕末から旅館として歴史を刻んできた建物をリノベーションしたお店、「油屋」。
この地域の郷土料理である「南予(なんよ)の鯛めし」をぜひ食べてみたかったのです。
鯛のお刺身をご飯にのせ、卵の黄身を使ったタレをかけて・・・おっと、思わず、よだれが。
大変美味しゅうございました。
食後はそのまま、大洲城の城下町を散策することに。
小京都と呼ばれるだけあって、多くの古い町家が建ち並んでいました。
明治時代の元銀行を活用した「おおず赤煉瓦館」を覗いてみたり、昭和30年代のレトロな横丁を再現した「ポコペン横丁」で水晶のかけらを集めたりして、子どもたちもとても楽しそうでした。
そんな中、一際風情のある建物、「臥龍山荘(がりゅうさんそう)」を見学してきました。
臥龍山荘は国の重要文化財にも指定され、数寄屋造りの建築と美しい庭園、そしてそこから見える肱川(ひじがわ)の景色が楽しめます。
特に「不老庵」と呼ばれる数寄屋造りの離れは、崖にせり出すように絶妙なバランスで建てられていて、ただただ息を呑むばかり。
庵そのものを船に見立てて作られているのだとか。
ただし、高所恐怖症の方はご注意を!
油屋
おおず赤煉瓦館
ポコペン横丁
臥龍山荘
歴史的建造物が並ぶ内子町
まち散策を堪能していたら、辺りがだんだん暗くなってきたので、慌てて隣町の内子町まで車で移動しました。
楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまうものですね。
内子町と言えば、歴史的な八日町護国のまち並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている非常に興味深い地域。
こちらの散策は翌日の楽しみに取っておき、早速2日目の宿泊先「ファームインRAUM古久里来(こくりこ)」にチェックイン。
森の中のようなアプローチをくぐると見えてくるのは、古民家的な佇まいの母屋に、個性的な円筒形の宿泊棟、そして五右衛門風呂を楽しめる離れ。
もうワクワクしかありません!
優しい森長さんご夫婦によって営まれているこちらの宿は、1995年に民泊の先駆けとして営業が開始され、町内のグリーンツーリズムをまさに引っ張ってきたお手本的の宿なんです。
グリーンツーリズムとは、「緑豊かな農村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動」と定義(農林水産省)
奥様の振る舞う美味しい食事を頂いたあとは、子ども好きで気さくなご主人の森長照博さんが、内子町のことを中心にいっぱいお話してくださいました。
内子町の発展のために様々な活動をされてきた凄い方で、興味深いお話をたくさん伺うことができ、ご主人からは溢れんばかりの"内子愛"を感じました。
伺ったお話の一部は、以下のような内容です。
- 内子町は2011年9月にドイツ・ローテンブルク市(ロマンティック街道の中間点にある都市)と姉妹都市になったこと
- 内子町の芸術文化活動の拠点である芝居小屋「内子座」の舞台裏のこと
- この宿の成り立ち(元々は畑で、森なんてなかった!)と、グリーンツーリズムの重要性
- 葉っぱの裏を枝でこすると文字がかける「タラヨウ(多羅葉)」のこと
お話が終わると、ご主人がお庭から「タラヨウ」の葉っぱを何枚か取ってきてくれました。
タラヨウは、「はがきの木」とも呼ばれ、郵便局のシンボルツリーにもなっているそうです。
実際にみんなで葉っぱの裏に文字や絵を書いたのですが、子どもたちは大喜び。
ホントに素晴らしい体験ができ、とても素敵な夜になりました。
翌朝、森の中で鳥のさえずりが聞こえる中、気持ちのいい朝を迎えました。
おいしい朝食をいただいたあと、後ろ髪を引かれながら森長夫妻にお別れをし、宿を後にしました。
「道の駅 内子フレッシュパークからり」の朝市で買い物をしてから、いよいよ内子町の重要伝統的建造物群保存地区に向かうことに。まずは昨夜のご主人のお話にも出てきた「内子座」から。
タイミングよく何の公演もなかったため、中を自由に見学することができました。
「内子座」は大正5年に創建され、今なお現役の芝居小屋。
一時は老朽化で取り壊されそうだったのを地元住民が一致団結して残すことになった国の重要文化財です。
舞台中央の回転機構や奈落(地下も見学できる!)、1階客席である枡席、二重織り上げ格天井など、とにかくロマン溢れる素敵な芝居小屋でした。
内子町の重要伝統的建造物群保存地区の建物は、質素な京町家と比べると、装飾も多く、遊び心のある印象を受けました。
壁面に施された鬼瓦?や、星マークのような模様、七宝模様を連想させる「なまこ壁」など、どれも凝った造りで、まるで職人が腕を競い合っているかのよう。
外から見てるだけで、当時の職人の想いを馳せることができます。
内子町の歴史的まち並みは、ぜひまたゆっくり訪れたいと素直に思える、素晴らしいところでした。
屋根の両端に付けられた棟飾りは「立浪型鳥伏間(たつなみがたとりふすま)」と呼ばれているもの。
船の帆をイメージしているそうです。
壁面に鬼瓦?
下屋根の上には星マークのような模様が。
七宝模様を連想させる「なまこ壁」
予定していた全ての行程を終え、ついに京都に戻るときがやってきました。
辺りも暗くなってきて、ちょっぴりセンチメンタルな気分に。
行きは瀬戸大橋から四国にやって来ましたが、帰りは「しまなみ海道」経由で本州に渡ろうと決めていました。
しまなみ海道と言えば、先日、同じ部署の同僚である本門、鬼頭も研修旅行で訪れたばかり。
本州に到達する前に一つくらい島に立ち寄りたいなと思い、降り立ったのが今治市の大三島(おおみしま)です。
この島で「WAKKA」という海が一望できる素敵な施設を見つけました。
"輪っか"という名の通り、主にサイクリングを目的とした方に向けたカフェや宿泊スペースがあり、自転車好きには堪らない、憩いの場となっています。
閉店間際に滑り込みセーフで辿り着いた私たちは、カプチーノを片手に美しい海を眺めながら、しばし愛媛旅の余韻に浸っていました。
愛媛県、また必ず来るぞ、と心に誓って。
道の駅 内子フレッシュパークからり
内子座
WAKKA
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八清社員が日本各地へ興味が赴くままでかけ、見て、聞いて、普段の業務では得られない知見を広めてきましたのでレポートします。
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