愛知県の近代建築はステキらしい...という噂を聞いて行ってみることにしました。
こんにちは、プロパティマネジメント部の鴻巣です。
まち歩きが好きなのですが、歩きながら、ふと「これだけ街中で建物に囲まれているのだから、身近にある建築をいちいち楽しむことができれば、毎日がより楽しくなるのでは...?」と思い、いろんな建築に興味をもつようになりました。しかし建築科出身でもないので、ゆるめに広く浅く、とにかく楽しむのを目標にしています。
今回は愛知県の常滑・名古屋・犬山の3つのエリアでまち歩き。
4日で8万歩あるいて見つけた「推し」な建築、少しこちらでご紹介したいとおもいます。
常滑の推し! 世界のタイル博物館
世界のタイル博物館(INAXライブミュージアム)
建築に興味を持ったら避けては通れないのが「タイル」の魅力。
常滑のやきもの散歩道を通り抜けてぜひ行っておきたいと立ち寄ったのが、
「世界のタイル博物館」です。(INAXライブミュージアム内)
その名の通り、ここでは世界中の装飾タイルコレクションを見ることができます。
紀元前~近代までの7000点以上を収蔵。「タイル専門」のミュージアムです。
鮮やかなスカイブルーのタイルで飾られた大きな入口を通り中へ入ると、古代メソポタミア、エジプトから地域別・時系列に様々な装飾タイルが展示されています。
この展示でいいなあと思ったのが、例えばイスラームのタイル張りドーム天井。
夜明け~日没の光を表現する照明の変化と共にタイルが表情を変えるのがよくわかる展示方法がとられており、タイル単体だけでなく実際に装飾された様子を体感できるのが素敵だなと思いました。
イスラームのドーム天井
展示室にはスペイン・オランダ・イギリス・中国、そして日本のタイルの実物がずらりと並び、その量の多さに圧倒されました。
はがれないから中々見られないタイルの裏側もしっかり見せてくれていて、初心者にとても優しいミュージアム...裏側と言えば、個人的には山茶窯(つばきがま:小森忍が瀬戸に開いた製陶所)の椿のマークが裏の見えないところにあるのにちゃんと可愛らしいところが好きです。
海外のものでは、オランダの素朴な市民生活を描いた白地藍彩タイルが優しい雰囲気で気に入りました。
こちらはイギリスのタイル
何時間でも眺めていられそうですが、更に驚いたのが、このコレクションのうち約6000点は1人のタイル研究家、山本正之氏が常滑市に寄贈したものであるということ。
タイルの卸問屋への入社をきっかけに、タイルのルーツを求めて50か国以上を巡ったそうです。
行く先々で、建築の解体現場に出会っては廃棄されるタイルのかけらを大切に持ち帰ったのだとか。
コレクションが伝える世界の人々の美の感性や暮らしの風景をここで感じることができ、とても楽しいミュージアムでした。
しかしここまで集めさせてしまうとは、世界共通のタイルの魅力ってすごいですね。
こちらのINAXライブミュージアム、なんと「古便器」のコレクションや、既に解体されてしまった近代建築を飾ったテラコッタ(大きなやきもの装飾)を間近でみれる屋外展示もありました。
なんともユニーク!
また足を運びたいと思います。
INAX ライブミュージアム
タイル展示について
古便器
テラコッタ
旧杉江製陶所跡
空き地
見本室
このINAXライブミュージアムの向かいにあるこの空地、実はここには昨年まで旧杉江製陶所(現・東窯工業)という焼きもの工場がありました。
老朽化による解体寸前に戦前のカラフルで美しいタイルの見本室が発見され、救出・保存のためイベントやクラウドファンディングが行われました。
古い木造の事務所の中から宝石のように出てきた鮮やかなタイルがとにかくきれいで美しく、感激したのを覚えています。
間一髪のタイミング、救出しようとした方々がたくさんいたことにも感動。
兵どもが夢の跡、今はもうクリンカータイルやスクラッチタイルの破片があちこちに見えるのみですが、日本の近代産業の発展をしっかりと担ってきた工場だったことがしのばれます。
移設保存された所にまた行ってみたいと思います。
参考
メタバース動画 過去〜現在(移転先の状況) 再現率がすごいです
杉江製陶所見本室タイル救出活動報告/2022
現在の移設保管先等、詳しくはこちら
発見当初のYahoo掲載記事
博物館 明治村の推し
実は今回初めて訪れた博物館 明治村。
「博物館」を名乗るとおり、重要文化財指定を受けた建物を含め実に60以上の建造物が移築・保存され続けていることには感謝しかないと思いながら入ったら、村内は謎解きイベントでとっても賑わっていました。
確かに謎ときにはいいロケーション!
しかし謎を解いている暇はないので早速目的地へ向かいます。
せっかくなので京都から移築された建築から回ったのですが、早々に再訪を決意...広すぎて、素敵な建物が多すぎて目が足りませんでした。無念。
聖ヨハネ教会堂
今回いちばん見てみたいと思っていたのが、こちらの聖ヨハネ教会堂です。
京都の河原町五条の交差点を少し下がった所にあった赤れんがの教会堂。
明治40年(1907年)建設、昭和39年(1964年)に移築、京都の近代化の歩みをずっと見守っていた建物ですね。
設計は、京都平安女学院の聖アグネス教会も手がけたアメリカの建築家J.M.ガーディナーで、確かに何となく可愛らしいけど凛としてる雰囲気が似てる...ような...?
外観の様式としては中世ヨーロッパのロマネスク様式に、ゴシックのデザインを交えているのが特徴だそうです。
色んな窓やドアの欄間につかわれている三葉形の文様が可愛い。
1階が煉瓦造り、2階が木造の内部は明るく広々としていて、天井には竹のすだれが使われてますが、それは京都の気候に合わせているのだそう。
何となくアジアテイストな不思議な雰囲気もします。
現在も跡地に同じ教会がありますが、この建物があった当時はそばを市電が走り、周辺にはお寺もたくさん、そして高瀬川沿いのにぎわいが加わって、さぞエキゾチックなエリアだったのではないかと妄想してちょっとわくわくしました。
聖ザビエル天主堂
こちらも同じく京都河原町通り沿いにあったカトリック教会です。
建設は明治23年(1890年)、移築は昭和48年(1973年)。河原町通り沿いには素敵な教会が2つもあったんですね。
現在跡地に立つカトリック河原町教会は空へ反りながら伸びる屋根が特徴的ですが、こちらはゴシック様式、リブ・ヴォールトの天井を眺めてからの正面のバラ窓、内陣・側廊のステンドグラスがとてもきれいでした。
中へ入ったらちょうど光が窓から差しこみ、教会内部がステンドグラスの虹色に。
幻想的な雰囲気が素敵でした。
清水医院
可愛い雰囲気ですが目立ちます、長野県の中山道沿いにあったという清水医院。
建設は明治30年(1897)ごろ、移築は昭和48年(1973)。
壁に目地を入れて石積みのようにしてみたり、窓や入口はアーチ形であけてあったり、隅には柱型を付けてあったり、外側から見たらかわいい洋風のおうちに見えますが、中に入ると畳敷きの待合室は、完全に和の雰囲気。
建具は室内側で引き戸になっています。頑張って洋風を装っているような、内と外のギャップが可愛いかったです。
ちょっとシルバニアファミリー感...!
他、半円形に貼りだしたベランダが美しい西郷従道邸、明治村の一番の人気スポット・帝国ホテル中央玄関、森鴎外・夏目漱石住宅、宇治山田郵便局舎など、できるだけ回ってきましたが、さすがに回り切れませんでした。
西郷従道邸など、いくつかの建物では、無料で内部のガイドをしてくれます。
内部ガイドツアーでないとみれない部分もあり、世界のタイル博物館で紹介されていた芝川又右衛門邸の暖炉のタイルが見たいので、次は事前チェックを怠らず、計画して再訪したいと思います。
博物館 明治村
名古屋市内の、推し!
ここからは名古屋の街中で素敵な建物探しです。
名古屋陶磁器会館
昭和7年(1932年)に建てられた、アールデコ建築の名古屋陶磁器会館。
ちょっと中心部から東の方に外れた感じなのですが、このあたりのエリアが明治半ばから陶磁器の輸出・製造の中心地だったそうで、それを象徴する建物だからかタイルがふんだんに使われています。
外壁は表に見える部分だけでなくて東西南北がすべてスクラッチタイル...!
ところどころ細かなところにもテラコッタが使われ、周辺と比べるとちょっと浮いてる?くらい豪華な存在感でした。
内部でも陶磁器の展示や販売をされていましたが、暖炉やステンドグラス、モザイクタイルなど、細部へのこだわりが感じられる建物でした。
中産連ビル
ぶらぶら歩いていて目に入ったのが、渋いブルーグリーンのタイルにコロンとした白い窓がポップな建物。
白枠の窓の配置がリズムカルでスキップしそうです。
エントランスは白い床の曲線が美しくて、その奥にリッチな色味の木製手すりがスカイブルーの床に映える、堂々とした階段が鎮座していました。
良い、渋かわいい!と心の中で拍手していたのですが、なんとここは建築家の坂倉準三氏が設計を手がけ1963年に完成した、名建築として名高い中産連ビルさんだったのでした。
親切な管理の方にお声掛けいただき、快く写真・見学OKくださった上にオリジナルグッズまで頂きました。
中産連ビルさん、だいぶ愛されていて余計可愛く思えます。
ありがとうございました。
インスタ、フォローしました。
※現在は、エコバッグを配布されているとか。
もう一度会いに行きたいです。
中産連ビル
名古屋渋ビル研究会さん
THE TOWER HOTEL NAGOYA
室内の写真のインパクトで宿泊を決めたのがこちらのホテル。
1954年完成した名古屋テレビ塔が2021年中部電力MIRAI TOWERに名前を変え、2022年には国の重要文化財に指定されたのですが、なんとその塔の中にホテル THE TOWER HOTEL NAGOYAを作ったのだそうです。
室内には、実際にタワーを支えている鉄骨部分が通っていてちょっとぎょっとしますが、国の重要文化財はせっかくなのでたくさんなでておきました。
アートを楽しめるスモールラグジュアリーなホテルで、丁寧なスタッフさんに案内いただくまるごとアーティストの作品のようなお部屋、世界的アーティストの作品をゼロ距離で鑑賞できる秘密の部屋、お茶好きに嬉しいウェルカムスイーツ、隠しエレベーターで行くタワーの展望台からのパノラマ夜景、絶好の景色を見ながら食べる朝食、どこをとっても非日常でアーティスティックなホテルでした。
さて名古屋市内中心部、名古屋城から徳川園にかけての一帯は、歴史的遺産の宝庫として「文化のみち」と呼ばれるエリアだそうです。
THE TOWER HOTEL NAGOYA
文化のみち 二葉館 (旧川上貞奴邸)
遠くからでもしっかり目立つオレンジの屋根が特徴的なこの建物は、日本初の女優・川上貞奴と、 電力王・福沢桃介が大正~昭和初期に住んでいた和洋折衷の住宅です。
移築・復元されたという事ですが、元あった場所は前述の中産連ビルさんの近くに旧二葉御殿、の石碑があったところ(そんなに離れてません)。
1920年頃とありましたが、設計施工は日本初の住宅専門会社のあめりか屋さんです。
京都のあめりか屋さんのお仕事だと、昨年特別公開された革島医院(麩屋町六角下がる)が思い浮かぶのですが、似てる?のでしょうか。
中に入ると、ダンスホールのような大広間にステキな螺旋階段が。
大女優がゆっくりと一歩一歩降りてくるにふさわしい、重厚でエレガントな曲線美。
そしてもう1つステキなのが色とりどりのステンドグラス。
踊り子、初夏の草花に鳥、アルプスの山々、寄木張りの美しい床に良く映えていました。
他、円形のソファやそれを囲む上げ下げ窓等、移築復元後もできるだけオリジナルな部分を残すようにしたそうです。
広間の奥には畳敷きの和室。
川上貞奴の愛用品などの展示もあり、大正ロマンに引かれてか女性の来館者が多く、皆さん食い入るようにガイドさんのお話を聞いたりされてたのが印象的でした。
文化のみちエリアにはまだまだ見どころがたくさんあるので、またじっくりと巡ってみたいと思います。
文化のみち 二葉館
最後に
今回の研修の旅では、他にもレトロなカフェボンボン、名古屋市政資料館、旧豊田佐助邸、松坂屋の初代社長伊藤祐民の別荘群の1つ、揚輝荘や伴華楼なども訪れました。
それぞれの訪問先で快く案内してくださる方がいたり、ここが素敵なのよ~見て~と自分の「推し」ポイントを教えてくれる方がおられたり。
1人で回っている気が全然しない、なんとも濃いめな4日間でした。どこももう一度行きたい、好奇心を刺激されるところばかりです。
このレポートも、ちょっとだけどなたかの好奇心をくすぐることができたらいいなと思います。
読んでくださってありがとうございました。
2022年度の記事はこちらで最後となります。
2023年度も新たに出張研修のレポートを公開してまいりますので、よろしくお願いします。
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八清社員が日本各地へ興味が赴くままでかけ、見て、聞いて、普段の業務では得られない知見を広めてきましたのでレポートします。
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