昨年の夏にプライベート旅行で台北・台南に行き、台湾の魅力にハマってしまった私。
今回の出張研修は海外OKということで、迷わず台湾に行ってまいりました。
王道の台北はあえて行かず、昨夏に行けなかった台中、もっと知りたい台南に行ってきました。
1日目 台中
関空から桃園空港まで飛行機で3時間。
桃園空港から電車で1時間ほどの場所が台中です。
極寒の京都から気温25度前後の台湾へ。
桃源郷かと思うような暖かさで、到着早々、来てよかったと思いました。
星のや グーグァンへ宿泊
初日は駅から直行で宿に向かいました。泊まるのは今回のお目当てのひとつである「星のや グーグァン」!
高鐵(台湾の新幹線)台中駅から車で1.5時間ほどの山あいの温泉街に星のや グーグァンがあります。
建物内に入ると広々としたモダンなロビー。入った瞬間に上質な雰囲気を感じられます。
お庭を見渡せるライブラリーは24時間利用可能です。
台湾や日本の本が置かれていてコーヒーやお茶と一緒に楽しむことができます。
到着したのが夕方だったのでお部屋に行く前に夕食へ。
ありがたいことに、星のや グーグァンのスタッフさんは全員日本語が話せます。
一生懸命に日本語を勉強されたことが感じられ、あたたかいおもてなしを受けられます。
感動したことは食事の席についたとき。
スタッフさんがサッとお箸の向きを変えてくださりました。
どうして私が左利きだと分かったのだろうと驚きました。
スタッフさんに聞いてみると、フロントの方が私が左利きであることに気づき、レストランの方に伝達したそうです。
素晴らしい連携とおもてなし。
台湾に日本の星のやの心が紡がれているなぁと感じました。
食事は台湾の素材に日本の調理法を取り入れたここでしか食べられない特別なお料理ばかり。
親しみやすいけれども新たな発見がある大変美味しいお食事でした。
食事のあとはお部屋へ。
お部屋はメゾネットタイプで2階には温泉かけ流し露天風呂があります!
シンプルかつ洗練された空間はとても居心地が良いです。
大浴場もあり、湯上り処にはアイスキャンディーが。
台湾で日本の温泉宿を体験できます。
虫の声や水の流れる音が心地よく体と心が癒されます。
いつまでも夜空を眺めながらぼーっとしていたいなと思いました。
夜も素晴らしいのですが、感動したのは朝!
温泉が流れる音と小鳥の囀りで目を覚まし、起き上がるとグーグァンの緑が目前に広がります。
最高の目覚めでした。
台湾粥の朝食後はお庭を散策。
星のや グーグァンはランドスケープデザインが素晴らしいです。
周辺の自然と人の手で造り込んだ庭の一体感、木々に溶け込む建築。
本当に気持ちがいい空間です。
柔らかい日差しが降り注ぎ、風が心地よく、睡蓮が可憐に咲いている。
この旅がいいものになることを予感させる朝でした。
2日目 台中散策
星のやグーグァンをあとにして、2日目は台中の街中へ。
まず向かったのは台中国立歌劇院です。
コンセプトは「芸術と暮らしのための劇場」。
伊東豊雄氏の設計で「いきもの」として作り上げるというコンセプトでつくられた建物です。
外観は曲線が描く大きな開口部が特徴的です。
内部も天井、壁、床がつながる曲線の空間。
洞窟のような空間はやわらかく包まれているような感覚になります。
有機的な建物は訪れた人々を受け入れているように感じました。
開放的なカフェには光がたっぷりと入り込みます。
小学生が見学に来ていたり、観光客や地元の人が思い思いに過ごしていました。
誰でも入れる空間が多く、まさに日常の中に溶け込むオープンな劇場でした。
「暮らしに芸術を溶け込ませよう」という劇場の意図が伝わります。
台中中心部は高層ビルが多く、歌劇院最上階からの眺めは圧巻でした!
建設中の商業施設やマンションも多く街が活発に動いているのを感じました。
2日目の宿泊先は「SOF Hotel」。
廃墟をリノベーションしたホテルです。
50年以上前にホテル「白雪大飯店」として建てられましたが、白雪大飯店は廃業。
建物は十数年放置され荒廃していったそうです。
その後、SOF Hotel現責任者がその建物を再びホテルとして運用することを決定。
ニュージーランドのFearon Hay建築設計事務所が設計を行い3年半の年月をかけてフルリノベーションされました。
正面から見ると古い状態を残した外壁からベランダの植物が見えていてまさに廃墟!
中はどうなっているのかとワクワクします。
中に入ると中庭から光が差し込み、廃墟と光、植物の調和がとても美しいです。
中庭の上部は古いトタン屋根のままだったり、壁の古い塗装もそのまま残されています。
客室内もコンクリート剥き出しの柱、梁に天井。
天井は補修したところをあえて分かる仕上がりです。
シンプルなお部屋ですが、家具や照明と建物のバランスが良く、とにかくかっこいい空間。
外観や躯体はできるだけ廃墟の状態を残しています。
きれいにしてしまうのではなく、残せるものは残し、古いものを勝たせて魅せている。
日本ではなかなか見ることのできないとてもかっこいいリノベーションホテルでした。
次の日は宮原眼科・台中第四信用合作社に向かいました。
台中駅近くにある大人気のアイスクリーム屋さんです。
宮原眼科は、台湾が日本統治下にあった1927年に建てられました。
当時は元々日本人の眼科医・宮原武熊氏が開業した病院でしたが、戦後、宮原医師が日本へ帰国した後は「台中市衛生院」として国民党政府によって管理され、閉鎖後は数十年間そのまま建物だけが残されました。
この歴史的な建造物を、パイナップルケーキで有名な日出グループがリニューアル。
スイーツ店「宮原眼科」としてオープンしました。
レンガの壁とガラス屋根の外観がインパクトのある建物ですが、内装もすごい!
天井まで続く大きな本棚、レトロな商品棚やタイルの床。
映画の世界に入り込んだかのような非日常空間が広がります。
病院だったときからあったと思われる受付カウンターもあり当時の雰囲気を残しています。
宮原眼科のすぐそばにあるのが第四信用合作社です。
日出グループ傘下のデザートショップのひとつで、宮原眼科の姉妹店です。
1966年に建てられた銀行だった建物がリノベーションされています。
コンクリート造で古い柱や梁が無骨でかっこいい建物です。
店内にある金庫の分厚い扉が銀行だったことを想起させます。
アイスクリームの受付の仕切りは銀行時代にも受付に使われていたものだと思われます。
建物に使われていた瓦がサインになっていたりとここでも古い物が活かされています。
コンクリート剥き出しの柱にガラスが当たっていて隙間があるけれど塞がれていません。
日本なら塞いでしまいそうですが、店舗ならこれでもいいなぁと思いました。
元々とても凝ったつくり、良いつくりの建物なので、多少の劣化があってもとても上質な空間に感じられました。
この2つの建物が大人気スポットになっているのはアイスが美味しいからだけではなく、リノベーションが建物の魅力を最大限に引き出しているからだと思います。
台中では現代建築とリノベーション建築を見学して改めて建築がまちや後世に及ぼす影響の大きさを実感しました。
3日目 台南
3日目は台湾の京都と呼ばれている台南へ。
台北や台中と比べると建物が低く落ち着いた雰囲気の街です。
台南駅から宿へ向かいます。
3日目の宿はリノベーション民宿です。
京都で町家の宿泊施設が増えているように台南でも古民家をリノベーションした宿が増えています。
宿泊したのは「新東亞旅社」
築100年の建物は、1998年まで現オーナーの祖父が「新東亞大旅社」として経営していた元旅館です。
現オーナーが、旅館時代の外観や内装を保ちつつ、建物を民宿として再生させました。
1階はカフェ、2階が宿となっています。
フロントへ行くとオーナーさんがとても親切に案内をしてくれました。
外装も内装レトロ感を残していてタイルや格子がかわいい!
階段の手すりは長年使われてきたからこそのツヤがあり、歴史を感じます。
建物に合わせたヴィンテージ家具、麻のカーテン、レトロ照明が空間に溶け込み、とにかくかわいい。
100年前にタイムスリップしたような感覚になります。
水回りは清潔で気持ちよく過ごせました。
4日目 台南散策
台南の街中には古民家をリノベーションしたカフェや店舗が多く京都のようです。
路地も多く、民家の格子やタイルには様々なデザインがあり歩くだけで楽しい街です。
窓の鉄格子は「鉄窓花」と呼ばれています。
様々なデザインがあり、つい足を止めて写真を撮ってしまいます。
1920年代に日本から伝わった鉄窓花は、1970年代に最盛期を迎えたそうです。
デザインはオーダーメイドで家主の職業や趣味等がデザインに反映されているそうです。
古い建物が多く残っている台南だからこそ見られる風景です。
日本語が書かれた看板も多く日本人には親しみやすい街だと思います。
歩き疲れて路地にあるカフェで一服しました。
このカフェがとても良かった!
古民家カフェですが、柱、梁、壁などがほぼ古いまま活用されています。
インテリアや装飾が、古くて錆びれている(良い意味で)空間に彩りを添えます。
ベンチにはコーヒー豆の袋が敷かれていてその上にクッションが。
古い建物にお花が映えます。
落ち着く、いつまでもいたい空間です。
ここでもきれいにしすぎない台湾リノベーションセンスの良さを感じました。
他にもギャラリーや物販店、バーなどセンス抜群のリノベーション建築が台南にはたくさんありました。
1日中歩きまわって宿へ。
最終日の宿は「天下南隈 Provintia Hotel」。
1985年に建てられた「天下大飯店」という台南のランドマーク的存在のホテルをリノベーションしたホテルです。
元の建物の良さを活かしながらモダンかつ快適な空間にリノベーションされています。
昭和感のあるレストランは建設当時にタイムスリップしたかのようです。
お部屋内の家具は全てオリジナル。
窓枠などに使われているアールの角が家具や扉にも反映されていて、オリジナル建築への愛情が伝わります。
インテリアには籐や帆布などが多く使用されており台南の魅力を伝えています。
ライブラリーや共用キッチン、ゲームセンターもあり家族で来ても楽しめるホテルです。
台湾に感謝
暖かいからか、台湾はおおらかで優しい人が多い印象です。
日本語メニューがあるお店も多く、年配の方は日本語を話せる人もいます。
台湾と日本の文化はつながっていて、融合しているところが多いなと感じました。
そして今回の研修で改めて台湾のリノベーションの巧みさに感動しました。
日本ではほとんど壊されてしまったような建物がとても上手に活用されています。
古いものが主役。
主役を活かすために何をするのか。
どこまで足すのか、助けるのか。
そのセンスが抜群だと思いました。
足し過ぎない、きれいにし過ぎない。
でも美しく魅せる。
これが台湾リノベーションのすごさと魅力だと思います。
日本が見習うところは多く、まだまだできることがあると感じました。
古さを魅力的に見せる考え方を学んだ出張研修でした。
台湾の優しさに感謝。
また必ず行きます。
多謝!!
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