こんにちは。メディアデザイン部の広瀬です。
今回選んだ行き先は故郷、兵庫県。
私が育った兵庫県西宮市は、大阪・梅田まで電車で15分、神戸・三宮までも電車で15分、遊びに行く先には困らなかった子ども時代でした。
京都に移り住んでからは、ずいぶんと遠のいてしまった神戸。
買い物したり遊んだりする中心部はなんとなくわかるのですが、周辺の町のことは全くわかりません。
出張研修のために、面白いリノベーション施設がないか調べていると、兵庫県には廃校になった校舎を利用した施設が点在していることがわかりました。
その中でも目に留まったのが、2022年にオープンした神戸市兵庫区にあるNature Studioという施設でした。
かつてのニュータウン
神戸市兵庫区。
その歴史は古く、平安時代には平清盛が日宋貿易の中心として大輪田泊を改修し、一時的ですが福原京という新しい都が築かれたエリアです。
町の中心を走るのは六甲山系から流れる「湊川」。
たびたびの氾濫により付け替えされる治水の歴史を重ね今日に至ります。
そして、今回訪れた旧湊山小学校の付近は平清盛が10年間過ごしたという邸宅「雪見御所」があったとされる場所です。
旧湊山小学校跡地
湊山エリアは神戸の急成長とともに開発されたニュータウンでしたが、駅からの遠さや坂道も多いことなどから転入が減ってしまい、現在では少子高齢化に加え空き家問題を抱えています。
大正6年創立の旧湊山小学校は、児童数の減少にともない2015年に閉校となり周辺の3校と統合されました。
そんな旧湊山小学校の校舎をリノベーションして誕生したのが「Nature Studio」です。
「自然と暮らしをつくる」をコンセプトに地域に根差した複合施設として2022年7月にグランオープンしたそうです。
元小学校の校舎を活用して生まれた施設は子どもたちも楽しめそうな雰囲気が感じられたので、家族とともに訪れてみることにしました。
地域のための複合施設「Nature Studio」
元校舎を活用した北館と東館とともに、元校庭だった広い庭と畑と駐車場から構成されています。
北館と東館は渡り廊下でつながれています。
施設を象徴するのが北館の外観。
フレームグリッドと呼ばれる壁のデザインが圧巻です。
縦横無尽に伸びるラインは、自然と暮らしを創る体験とつながっていく様子を表現しているのだそう。
シンボルであるフレームグリッドの外観
北館1階 ハーブ専門店とビール醸造所
北館の1階は、ハーブ専門店「HERB SHOP」とビール醸造所「open air 湊山醸造所」が入っています。
ハーブ専門店では、施設のコンセプト「自然と暮らしをつくる」を表すように、緑を植えたりスワッグを作ったりさまざまなワークショップが開催されています。
また、ビール醸造所は元給食室なんだそう。
食品を扱うという点で、以前の用途の面影が残るのは嬉しいことですね。
東館1階「みなとやま水族館」
かつて教室が並んでいた校舎が活用されています。
元校長室だったというエントランス兼ショップを通り抜け、ほの暗い館内に入ると幻想的に浮き上がったような水槽が目に入ります。
内装は、コンクリートむき出しの天井に、足元には昔懐かしい木の床材(実際に小学校で使われていたものを再利用しているそう)。
中央には木の根っこをイメージした大きなオブジェがあり、小学生のとき使っていたような小さな椅子が並んでいたり。
なんとも不思議な感覚を覚える空間です。
写真の水槽の高さにお気づきでしょうか。
水槽の前にはクッションが置いてあり、座り込んでじっくり生き物を観察することができます。
子どもたちと一緒に座り込み、しばらく魚を眺めてほっこりしました。
奥には靴を脱いで上がる部屋もあります。
高低差がつけられ、下から潜り込んで水槽の中から外を見ているような感覚になる洞穴も。
空間全体におこもり感があり、座り込んで魚を眺めていると動きたくなくなってしまいました。
水槽や飼育エリアを回遊できるようになっていて、思わぬところをカワウソが走る姿も見られ面白い工夫がたくさん詰まっていました。
奥には理科室を利用した部屋も。
少しかしこまった教室の雰囲気が思い起こされます。
ここではドクターフィッシュと触れ合うことができ、子どもたちは大喜びで手を突っ込み、魚に突っつかれる感触を楽しんでいました。
東館2階 フードホール
東館の2階は天井の高い解放感のあるフードホールがありました。
この空間の高さはどこかで感じたことがあると思っていたら・・・なんと体育館でした!
この広々とした空間にダイナミックな天井は、間違いなく体育館ですね。
カレーショップ「マンドリル」、メキシカンタコス「SIESAR TACOS」、リンゴ飴・リンゴスイーツ青森りんごの専門店「あら、りんご。」、クラフトビール「open air ビアカウンター」など、バラエティ豊かに揃いイートイン、テイクアウトすることができます。
体育館の半分が調理場になっています。
調理室をあえて見せているのも、なんだか給食室っぽいですね。
青森りんご専門店 「あら、りんご。」
カレーにタコス、リンゴ飴でお腹を満たした後、外に出て庭を楽しみました。
豊かな自然で満たされる元校庭
元校庭だったところは大きな庭と畑になり、さまざまな種類の木や草が植えられています。
野菜やハーブ、果樹など食べられる植物を中心に植えられている「NATUER FARM」
つまりここは「エディブルガーデン」です。
「エディブルガーデン」とは食べられる植物や野菜などを中心に造られる庭のことで、商業施設の屋上や公共施設にも設けられる例があります。
食べられるというだけでなく、草花がミツバチや蝶の蜜源になるなど生物の多様性に寄与し、人々がつながる場にもなると言われています。
ここでも夏野菜を植えるワークショップが行われ、大人も子どもも自然と触れ合う機会を提供されています。
そして庭にはなんとニジマスの釣り堀が!
子どもたちのやりたい!リクエストに応えることに。
たくさん泳いでいたのですぐに釣れるだろうと思っていましたが、これがなかなか釣れない!
1時間半ほどかけて、ようやく3匹釣ることに成功しました。
釣ったニジマスはすぐそばにあるガーデンキッチンでフリッターにして食べることができます。
これも体験!ということで釣った3匹をすべておいしくいただきました。
北館2階・3階 学童保育と小規模保育園
印象的な外観の北館は、2階、3階が学童保育と小規模保育園です。
昼頃に到着したときは静かな雰囲気だったのですが、15時頃になると小学校から移動してきた子どもたちの賑やかな声が聞こえるように。
元校舎に賑やかな子どもの声、これ以上ない活用方法ではないかと胸が熱くなりました。
旧校舎の面影がしっかり残る北館
地域に根差した施設として
実際に訪れてみるまで、水族館があるというので観光施設なのかと思っていたのですが、そうではないことに驚きました。
私たちのような観光客もいれば、庭のテラス席にはご近所に住まわれているだろうお年寄りや、赤ちゃん連れの親子がくつろぎ、学校終わりにやってきて宿題をしている小学生もいる、とても穏やかな時間が流れていました。
施設のWebサイトでは、マーケットのようなイベントや、さまざまなワークショップの告知がされており、たびたびイベントが催されているようです。
イベント後の記事には老若男女問わず楽しそうな様子が写し出されていて、地域に向けて開けた施設であることが伝わってきます。
数年後には、西館が新築される予定もあるようで、高齢者福祉施設や医療機関、レストランなどが入る計画がありますます地域に欠かせない施設になるのではないかと思います。
地域と人をつなぐ「Nature Studio」。
地域の人の思い入れが深い場所残して活用し、人が集まりたくなるような仕掛けが施されていて人が集まる、そんな地域コミュニティの在り方を目の当たりにしました。
八清も不動産流通を生業にしている限り地域との関りは切り離せません。
ただ流通させるだけでなく、大きな面としてまちを見たときに将来どんなまちになっていくのか、地域とどのように関わっていくのか、ということを私たちはしっかり考える社会的責任があると思います。
地域やまちをデザインする、私たちの仕事はまちの未来を左右する仕事なんだと改めて感じさせられました。
西館が完成したらまたぜひ訪れてみたいと思います。
Nature Studio(ネイチャースタジオ)
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八清社員が日本各地へ興味が赴くままでかけ、見て、聞いて、普段の業務では得られない知見を広めてきましたのでレポートします。
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