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今回の出張研修では、北海道東川町にある北の住まい設計社を訪ねました。

北の住まい設計社を知ったのは偶然でしたが、ホームページを見ただけで、環境配慮への取り組みの本気度やものづくりへの真剣さが伝わってきて、是非お話を伺いたいと思いアポイントを取らせていただきました。

東川町は、旭川市の中心部から車で30分ほど走ったところにあります。

色づき始めた木々に囲まれた自然豊かな広い敷地に、工房、ショールーム、カフェなどが点在していました。

10月下旬の北海道にしては暖かい日で、思わず深呼吸したくなるような気持ちの良い空間でした。

北の住まい設計社のはじまり

1985年に、社長の渡邊様がこの地へ来られた当時は、この辺り一帯が畑で、すごく寂しい場所と感じ、「自然に戻そう」と思われたそうです。

そして、時間があれば木を植え、その木々が成長し今の林となりました。

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(当時)

 

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(現在)

工房は、廃校になった1928年築の小学校の校舎を改装し使われています。

校舎は老朽化が進み、かなり朽ちていましたが、永く使ってもらえる家具づくりをしていく場所として、この古い建物を修理して再生することに意義があると考えられました。

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ゆらぎのある美しい昔のガラスや、廊下と教室の間取など、ほとんど当時の姿のまま使われています。会社のあり方のシンボルのような存在です。

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初めは、木箱やキーホルダーを作るところから始まり、家具づくり、そして家づくりへ発展し、最近では新築住宅や、旅館の改装なども手掛けておられます。

永く使うことのできるものをつくる

今回ご対応くださったのは、設計から営業まで幅広い業務を担当されている秦野様。

一番初めにお話しいただいたのは「永く使うことのできるものをつくる、環境に負荷をかけない、これをモットーにしている」ということでした。

秦野様のおっしゃる「永く使う」とは、「100年は使っていただけるもの」という意味です。

それは「3世代に渡って使えるもの」という意味でもあります。

そのためには飽きのこないシンプルなデザインでなければなりません。

ひとつひとつのデザインと設計を吟味されるので、家具は企画から完成まで1年かかるそうです。

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ショールームに並ぶ家具はどれも機能的で美しく、普遍的な形をしていて、このような家具を代々受け継いで使えたら、とても素敵だなと心が温かくなりました。

製作の工程では、ひとりの職人が手仕事で、ひとつの家具を完成させます。

長年、様々な条件下で生きてきた木は、人間と同じように、それぞれに個性や表情があります。

それらを活かすには、知識と技術をもった職人の手仕事が欠かせません。

木は本来、土に根を下ろしていたのと同じ年月を、家具や家として生き続けられるそうです。

北の住まい設計社の家具は、その年月に耐えられるように、丈夫かつ部材の交換や修理のできるつくりになっています。

また、ひとつひとつの家具には、ロット番号を示すシールが貼られていて、誰がいつ、どの素材を使ってつくったものかが、わかるようになっているため、もし家具に不具合が出た際には、乾燥の仕方など製作工程を見直して、フィードバックができるようになっています。

環境に負荷をかけない

北の住まい設計社では、2015年に輸入材をやめ、北海道産の広葉樹だけを使って家具をつくる決断をされました。

輸入材は、長時間の保管や輸送に耐えられるよう、防腐剤や防虫剤が塗布されていて、家具を作る職人や、それを使うお客様の健康被害が懸念されます。

また、それらの化学物質は、破棄されても土には還らず、燃やしてもダイオキシンが発生します。

主流であった輸入材をやめるにあたって、たくさんの課題がありましたが、ものづくりの在り方を考え抜いて出した結論で、たくさんの方の協力や試行錯誤の末、現在の形にたどり着いたそうです。

材料ひとつひとつにも、こだわって選定されています。

例えば、塗料にはエッグテンペラという、中世のヨーロッパで使われていた絵の具を用いていて、材料はなんと水と油と卵です。

塗料を吹き付け乾燥させるという工程を2度繰り返し、出荷まで2か月かかりますが、環境にやさしく、マットで美しい質感に仕上がります。

「年月とともに角などが剥げてくることもありますが、そういった経年変化をかっこいいと感じてくださる方に使ってもらいたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

弊社の「100年先まで末永く住まえるように」というコンセプトのもと、経年美を愛でる考え方と似ていて共感する部分が多くありました。

ソファや椅子の座面は、直接人の肌に触れるので安心できる素材をという想いから、革は180年以上同じ手法で鞣しを行っているスウェーデン・タンショー社のものを使われています。

多くの革は、防腐や柔軟にする目的で薬品を使って鞣されますが、同社の革は、植物タンニンときれいな水を使い、人の手でじっくりと鞣されています。

シートの中身も、石油由来のウレタンではなく、ヤシの素材や羊毛のフェルトなど天然素材を使いながら、快適な座り心地を追求されているという徹底ぶりです。

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また、ベッドマットレスには、天然ゴムのラテックスが使われています。

従来のベッドには、ポケットコイルが使用されたものが多くありますが、このようなスプリング入りマットレスは適正処理困難物に指定され、その廃棄方法が問題になっています。

スプリングとウレタンや綿、不織布などが使われた複雑な構造のため、分解に1人で3時間かかるとも言われています。

徹底された木材の品質管理

一般的な木製家具には、空気からの水分の吸収や乾燥を防ぐため、ウレタンやラッカー塗料が塗られています。

北の住まい設計社では、そういった塗料は使わないため、お客様のところで乾燥が進み、曲がりや割れが発生しないように、倉庫で3~4年の長い年月をかけて、じっくりと自然乾燥させています。

防腐剤も使用しないので、その間、木材にカビが生えないように、風通しの良い前列に積まれた木材と後列の木材を入れ替えたり、積み上げた木材同士の隙間をつくるためのスペーサーがあたる位置を変えるために組み替えるという気が遠くなるような作業を定期的にされています。

その後、さらに家具に最適な含水率まで下げるために人工乾燥機に入れて、乾燥による木材内部の収縮や引張りの力(乾燥応力)を抜きますが、ここでも薬品は使わず、東川町のきれいな地下水の蒸気のみを使って乾燥させます。

(東川町は、北海道で唯一上水道がなく、町民全員が、地下の天然水で暮らしているという魅力的な場所です。)

また完成した木材は、保管中も環境が変わらないよう、木材用の床暖房が入った倉庫で出番を待ちます。

このように、木材そのものの品質管理も徹底されています。

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(自然乾燥用の倉庫)

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(保管用の倉庫)

一つの家具を完成させるまでに、たくさんの時間と手間がかかりますが、つくる人、つかう人はもちろん、地球環境、子どもたちの未来のことまでを考えて、愛の詰まった家具をつくられていることに感動しました。

弊社では今年、京都産材を活用した中古住宅の改装シリーズ「MOMO HOUSE」を始動し、まもなく記念すべき第一号が完成を迎えます。

実際に取り組む中で、工期の長期化など事前には見えなかった課題もあり、一つひとつ解決策を模索しながら進めています。

少しずつではありますが、地域や地球にやさしい住まいづくりを探求していきたいと考えています。

北の住まい設計社

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MOMO HOUSE

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京都産の木材を使って中古住宅のリノベーションするプロジェクトです。

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