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京都以外での伝統構法建物の利用方法やまちなみを学習するために北陸に行きました。

三国湊エリア

最初に伺いましたのが福井県坂井市にある三国湊エリアです。

こちらは江戸時代に盛んだった北前船荷揚げ資材の一大集積地だったそうです。

東北、北陸、山陰には北前船の停泊場所は多くありましたが、その中で三国湊は港としての形状やバックヤード設置の利便性等が大きく寄与して大繁栄をした港の一つです。

保存対象は沿岸の旧街道沿いにある三国町のエリアです。

少し海側より入り込んだ九頭竜川河口部に存在します。

12月らしい寒さでした。

建物やまちなみはきれいに保全されています。

一際目を引くのが旧森田銀行本店です。

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1920年に落成した建物ですが三国町の豪商森田家が創業した銀行です。

北前船で財を成した豪商は山形の本間家や淡路島の高田屋等が有名ですが、こちらの森田家もこの界隈では地元の名士だったと思われます。

建物はレンガ造りの洋館で完成当時はさぞ森田さんの鼻が高々だったと思います。

これぞ100年建物だと思いました。

大きな建物に関心がありますが、この地域にある伝統構法住宅が現在どのように利用されているのか気になり近所を探索しました。

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この地方の伝統構法の特色なのかなぜか下屋は板金です。

理由を調べる術を持ち合わせていないのですが推察として雪対策があるのではと思いました。

大屋根からの落雪により瓦のズレの防止等かと思います。

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また大屋根の端部側には袖壁が設置されています。

ウダツとは少し違う形状で防火対策としての機能があるかもしれませんがこれも先述同様、大屋根に積もった雪の重みを軒先で踏ん張る事ができるよう壁面に梁を補強する意味があるのではと感じました。

もっと勉強をしないといけないです・・・

この地域にも特産や旨いもんがあるはずですが、残念ですがタイムオーバーで食べられずでした。

次回訪問機会があればと思います。

金沢へ

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2日目は金沢市に行きました。

以前ひがし茶屋街、主計町茶屋街は見学した事があり「金澤町家」という建築物を見学した事があったのですが、今回は京都でいう町家の看板建築なるものが金沢にもあるのか、また金澤町家がいかにカスタマイズされながら利用されているのかを確認したく、旧鶴来街道方面の住宅見学に向かいました。

場所は金沢市寺町、野町エリアです。

こちらの有名な保存建物はにし茶屋街のエリアです。

ひがし茶屋街、主計町エリアに比べて規模はコンパクトです。

通り沿いの建物は綺麗に整備されており観光地の建物という面構えです。

夜の帳が落ちてからの方がもっと風情があるのだろうと思います。

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にし茶屋街の少し東側にお寺が密集している場所があります。

正しく寺町です。

今回は寺社が密集する場所に近接する金沢市の昔ながらの住宅地である地域を散策しました。

場所は寺町台と言われ伝統的建築物群保存地区に指定されています。

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期待通り旧街道沿いには多くの町家が残っています。

とても楽しい!!

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ほとんどの住宅が居住用のようです。

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多分かつては通り沿いの建物は店舗としても利用されていた形跡が見受けられましたが駐車場にされている建物が多くありました。

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看板建築らしきものも発見!!

下屋上の増築、1階の改装具合 京都で見慣れた風景です。

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少し路地に入ると連棟の姿は見る事がなく独立した昭和初期ぐらいの建物が多く確認できました。

鎧張りに石川独特の黒い瓦。

連棟よりこの独立した建物の方が金澤町家らしい形状かもしれないです。

黒瓦は能登瓦とも呼ばれ産地は七尾市や珠洲市とのことです。

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釉薬を塗布する事で耐寒性や積雪に対する強度が増すのが特徴らしいです。

しかしその反面、我々が京都で通常利用する淡路瓦より大きく重いようです。

自重があるためか京都の瓦のように土で瓦を固定する事はしないで野地に瓦を直貼りする施工との事です。

その地域にあった施工方法は先達の知恵で確立していったものと感心するばかりです。

保存地区に指定されているからだと思いますが比較的改装が簡易になされている様に感じました。

1階部には店舗サッシを取付して2階部は開口部を少し改装した感じの住宅が通り沿いには建ち並んでいます。

旧街道沿いなので少し前は商店街のような店舗が多かったのではないかと推察します。

当日がゴミ回収日だったようで、早朝の散策だったので住民の方は指定ゴミ袋を持ち、所定のゴミ置き場に出されている姿を多数確認しました。

生活道路を歩くと時間によってはごはんの支度をするいい匂いや、笑ってしまいそうな親子げんか、テレビを見ながらか笑い声が聞こえたりする感じはとても好きです。

「ここで生きてるよ」という生活感には安心や安らぎがありなんかホッとできる瞬間です。

京都と違い金沢は武家の都市です。

生業は違いまた気候も違います。

生活されている金澤町家を訪ねて工夫や設えを見聞きする事ができれば最高であっただろうと思います。

今回の研修では京町家における先人の創意工夫を現在京都で生活する我々が更なる知恵を絞り、安全、安心、快適な生活を送って頂ける京町家として後世に伝承できる住宅を作り続ける大切さを感じる事ができる有意義な研修であったと思います。