こんにちは。プロパティマネジメント部の高橋と申します。
前回、「シェアという暮らし方」と題し、現代におけるシェアのあり方について一般論的に書いてみました。
今回は、前回書ききれなかった「シェア」による具体的な可能性について書いてみたいと思います。
キーワードは「セレンディピティ」
「セレンディピティ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
コミュニティマネジメントや場づくりの分野でよく聞かれる言葉ですが、Wikipediaによると、
素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。
と書かれています。
そう、前回の記事の最後に書いたシェアをおすすめしたい理由として「予測不可能なコミュニケーションから生まれる思いがけない出会い」をあげましたが、そこから幸運を掴み取る能力こそがセレンディピティという言葉の意味するものです。
脳科学者の茂木健一郎氏は、このセレンディピティの重要要素として以下3つのことを挙げています。
- action(行動)
- awareness (気づき)
- acceptance (受容)
「シェア」の度合いが強ければ強いほど、おおよそこれらを内包しており、セレンディピティが起こる可能性が高くなります。
「シェア」の持つ価値
(京だんらん西陣千両ヶ辻)
シェアハウスは最もシェアの度合いが高いからこそ、セレンディピティを発揮するための最高の環境であると言えます。
知り合い同士で始めたシェアハウスを除き、基本的には赤の他人と共同生活を送ることになります。
シェアハウスに住むという「行動」に加え、他人と生活ベースを共有するということは生活スタイルもリズムも異なるため、「気づき」と「受容」の度合いが高くなります。
具体的には様々な生活文化や生活スタイルの存在を知り、共同生活を行うために価値観のすり合せを行っていきます。
その過程で様々な「気づき」や「受容」が起こるわけです。
例えば、料理があまり得意ではなく、ほとんどしなかった入居者が、他入居者の作るお手軽料理に触発されて料理が好きになり、最後にはみんなに料理を振る舞うようになる。
体を動かすのがあまり好きではなくちょっと不健康だった人が、ヨガ好きの入居者に誘われて体験してみたら体を動かすのが好きになって健康になる。
そういったそれまでは思いもよらなかったことが日常的に起こってきます。
働く場をシェアするコワーキングスペースでも日常的に様々なセレンディピティが発揮されています。
むしろ、コワーキングスペースはセレンディピティのために作られていると言っても過言ではないかと思います。
利用者さんはそれぞれ業種も職種も様々な方が集まっているので、シェアハウスと同じく「気づき」と「受容」の度合いが高くなっています。
さらにコワーキングスペースは"仕事"にフォーカスする環境なので、仕事の受発注が起こりやすくなるのは当然のこと、コラボレーション、さらにはイノベーションを起こすという結果につながる可能性も高くなっているのです。
※コラボレーション...協力、連携、共同作業
※イノベーション...技術革新、新機軸の導入、開拓
(ビブリオン高瀬川で行った本イベントの様子)
たとえば、本好きの利用者がよくある本のイベントをやりたいと雑談レベルの話をしていたら、あちこちから様々なアイデアが出て来てまた様々な人を紹介され、あれよあれよと本の一大イベントを企画して成功させる。
さらにはより本を媒介にコミュニケーションを楽しむための新しいタイプの本イベントを作り上げてしまう。
そんな最初には思いもよらなかったことがよく起こります。
「シェア」の価値とは、思いがけない出会いがより起こりやすい状況、つまり、セレンディピティがより発揮されやすい環境である、というところにあるわけです。
一度は住んでほしいシェアハウス
前回の記事でも最後に書いた通り、弊社では「シェア」に関連する取組として、シェアハウス、コワーキングスペース(シェアオフィス)、コレクティブハウスなどを運営しています。
シェアハウスではお互いの交友関係もシェアすることが多く、知り合いのいない土地に来た時に、知り合いをつくる場所としても最適だと思います。
また、ワンルームマンションなどとは異なり、常に誰かの顔が見えることの安心感も強くあります。
実際、弊社のシェアハウス入居者は京都府外からの移住者がほとんどで、シェアハウスのほか入居者を通じて新しい知り合いができたり、新しいことにチャレンジしたり、新しい趣味ができたりという方が数多くいらっしゃいます。
(京だんらん嶋原)
また、もともとは「シェアハウスを探していたわけではなかった。」という方も少なくありません。
最初はシェアハウスなんてありえない!と思っていた人も、写真で見て、実際に見学してみたら「シェアもありかも」「ここに住んでみたい」と思われるようです。
入居者の中には退去する時に、「一度はここに住むべき」とまで言い切った方もいます。
(八清のシェアハウス 京だんらんのFacebookページ)
詳しくは八清のシェアハウスの入居者インタビューをご覧ください。
ちなみに、とあるシェアハウスポータルサイトを運営する会社の社長さんは、
「シェアハウスに興味がないと言っている人を5人シェアハウスに案内すると、少なくとも3人はこういうのもありかもと意識を変える」
「一度シェアハウスを経験した人は次もシェアハウスに住むケースが多い」というようなことを仰っています。
シェアの多様化
最近はシェアハウスも多様化してきています。
たとえば北欧が発祥の地とされるコレクティブハウス。
各部屋に台所・浴室・トイレがあり、別で共同の食堂や談話室などがある住居のことをいいます。
弊社が運営する物件にもワンルームマンションにシェアルーム(共有のキッチン、リビングなど)が付いたコレクティブハウスがあります。
普通のシェアハウスは抵抗があるという方も踏み出しやすいのではないでしょうか?
(八清のコレクティブハウス Share16LDK コーポイチハラ)
(Share16LDK)
他にも、庭をシェアする家、路地をシェアする家など、部分的にシェアするような物件も登場してきています。
また、シェアハウスに入居する属性も幅広くなってきており、家族を対象としたシェアハウス、高齢者を対象としたシェアハウス、多世代型のシェアハウスなども登場してきています。
【参考】伴想舎(外部リンク)
「シェア」は人間関係が面倒、怖いなどマイナスイメージを持たれている方も多いかと思いますが、少しでも興味のある方はぜひ一度でも試してみてほしいと思います。
気軽にシェアを体験したい方には
やっぱりシェアハウスはちょっと・・・という方には、より気軽なかたちとしてコワーキングスペースを利用するという方法もあります。
コワーキングスペースは職業、年齢等多種多様な属性の方々が利用しています。
フリーランスの方の利用が多いですが、本業を持ち副業で利用される方、これからビジネスを立ち上げようとしている方もいらっしゃいます。
コワーキングスペースは働く場所ですが、同時にコミュニケーションをとる場所でもあります。
特に副業やビジネスの立ち上げを予定している方でなくても、他の利用者とのコミュニケーションによって様々な刺激を受けることができると思います。
ぜひ一度、八清が運営するコワーキングスペースを見学してみてください。
コワーキング∞ラボ京創舎
(コワーキング∞ラボ京創舎)
日常に取り入れるかたちではありませんが、最近流行りのゲストハウス(昔で言えばユースホステル)で体験してみるのもいいかもしれません。
ドミトリータイプの部屋であれば1つの部屋を複数人でシェアする形になりますし、大抵のゲストハウスではリビングなどの共用スペースを宿泊者でシェアする形をとります。
ゲストハウス内で食事をしたり寛いだりしていると、ぽつぽつ他の宿泊者が集まってきて、「どこから来たの?今日何してたの?」などコミュニケーションが始まります。
そうしてコミュニケーションをしていると、それぞれの旅先でのおすすめを教えてくれたり、一緒に出掛けてみたりということがよく起こります。
また、仲良くなると「今度うちの地元に遊びに来なよ」みたいにお互いの地元に遊びに行きあったりするわけです。
なんなら意気投合して付き合っちゃったり、結婚しちゃったり。(僕ではありません)
ゲストハウスにもそうした予期せぬ出会いがあります。
皆さんがコミュニケーションをともなう「シェア」を取り入れた暮らしに興味をもっていただけるとうれしいです。
コメント