最近は、少しずつ認められつつある「おひとり様」ですが、旅行に出かけるにしても、食事に行くにしても、なかなかおひとり様は気を遣う世の中です。
ところが総務省のデータによると、単身世帯は今後ますます増加していく傾向にあります。
2040年には全世帯の約4割が単身世帯になるそうなので、いずれ「おひとり様」を無視して経営していくことは出来そうもありません。
出典:総務省ホームページ (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd141110.html)
実は私もひとりで出かけることが苦手でした。
仕事の出張や取材なら慣れていますが、オフで旅行に出かけるのは、なんとなく苦手でした。
京都に足しげく出かけるようになったのは、そんな私でも受け止めてくれる環境が整っていたからだと思います。
今回は「京都でおひとり様を満喫」した経験についてお話します。
ひとり飲みのできるお店
長らく東京でひとり暮らしをしてきたのに、正直に言って、いまだにひとりで飲み屋に入ることが苦手です。
東京では、知人や友人と飲みに出かける以外、ひとりで飲みに行く機会はありません。
飲むのは大好きなので、誘われたら、まず断ることはありませんが、ひとりでは好んで出かけません。
ところが京都では、なんだか自由にひとりでふらっと飲み屋さんに入ることができるのです。
一見さんには厳しい、とか、常連の店には入りにくいとか、いろいろ話は聞きますが、まったくそんなことはありません。
たとえば、おひとり様用のセットのあるお店がありました。
確かにひとりでは頼む品数が限られますが、そのお店では人気のメニューをひとり分ずつ少しずつ盛った一皿が用意されています。
そんなお店にはひとりでも入りやすく、おひとり様ビギナーの私でもチャレンジできました。店主は女性で、うまくその場になじめるように気を遣ってくれました。
常連らしい方にワインも奢ってもらい、楽しいひとときを過ごしました。
それからは京都ではひとり飲みを体験するのがラクになりました。
有名なおでん屋さんで隣に座った方が外国のゲストに、湯葉のことをソイミルクスキンと説明するのを聞いて「なるほど」と頷いてみたり、地元の人しか来ないようなお店でひとり飲みをしてみたり。
だんだんと経験を積んだおかげで、京都ならひとり飲みを堪能できるようになりました。
観光客をたくさん受け止めてきた街だから、おひとり様の対応にも慣れているのかも知れません。
ひとりで滞在する宿泊施設
宿泊施設も京都はバラエティ豊かです。
高級旅館や高級ホテルなどの有名なところはもちろんですが、ひとりで滞在できるリーズナブルな宿泊施設も整っています。
まず京都に多いのはゲストハウスと呼ばれる施設です。
古民家をリノベーションしたものやワンルームマンションを一棟丸ごと宿泊施設にしたものもありました。
個室もありますが、ドミトリーと言って二段ベッドが置かれて、他の人と同じ部屋で滞在するタイプのものもあります。
パンデミックの前は、海外からの人も多く利用していて、あるときは日本人が私だけといった場合もありました。
習い始めの英語でコミュニケーションできたのはいい経験でした。
チェックアウトした後、人気の蕎麦屋で偶然再会するなど、いい思い出になりました。
また真夏のゲストハウスでエアコンの調子が悪く、全員がエアコンの効いているリビングに集まるということがありました。
自転車で東京から沖縄を目指す高校生やサーカスの仕事で全国を渡り歩いているという人に出会いました。
次にデザイナーズホテルと言えるような洗練された宿泊施設も多数あります。
5,000円ほどの料金で個室が利用できます。
共用になりますが清潔な浴室とトイレも用意されています。
驚いたのは、枕が2つのタイプから選べたり、バスタオルが好きなだけ利用できたり、滞在する人の好みに寄り添ったサービスが用意されていたことです。
また別のホテルでは、有名な映画監督がデザインした部屋に泊まるという経験をしました。
いくつか個性的なアーティストがデザインした部屋が用意されていた中で、全面ピンクの桜という部屋を選んでみました。
エントランスやラウンジにはさまざまなアートが置かれていて、一つ一つ見るだけでも貴重です。
さらに短期滞在したい場合は、時間で宿泊できるカプセルホテルも見つかります。
友人と飲みに行く約束があるときは、ほんとうに眠るだけしか滞在しません。
そんなときに利用しやすい施設です。
行くと必ず立ち寄る店
京都に通いつめて10年以上経つので、毎回必ず立ち寄る場所というのもできてきました。
私の場合は御池通りから丸太町につながる寺町通りです。
観光客をあまり相手にしていないのか、年末年始もお盆もしっかり休んでしまう街です。
ここには骨董店や日本の古裂を扱う店、古い着物を売っている店などが集まり、古いものが好きな私にとってはパラダイスです。
しかも三条京阪近くの骨董店は格式が高く入りにくいのに比べて、寺町は入りやすいお店が多いのです。
なかでも必ず立ち寄るのが寺町二条にあるお店です。
世界中から集めたファブリックやアクセサリーを小さな店にぎっしりと並べてくれています。
インドの奥地や中国、インドネシアの奥地まで行って買い付けてきた布地は、一つひとつに物語があるような貴重なものばかりです。
とりわけ素晴らしいのはリボン、壁の一角がすべて世界各国から集めたリボンでいっぱい。
はじめて訪れたときは、その場所で何を買おうか30分以上悩んでしまいました。
オーナーの女性は美術を専攻していた方で、どこにどんな生地があるか、どんな人が紡いでいるか、自ら足を運んでいるので、その話を聞くだけでも勉強になります。
最近では立ち寄るついでに、京都の情報を教えてもらうようになりました。
新しくできたパン屋さん、おすすめのレストラン、話題の美術展等々、情報誌にもまだ乗っていない情報を教えてもらって出かけることも度々です。
気が付くと1時間以上もお邪魔していることも。
そういうお店との出会いも、ひとりで歩いているから。
今では京都滞在の間に必ず1度は立ち寄るようになりました。
私にとってかけがえのない場所なのです。
私に良く似た人がいるという安心感
京都に行っても、特に目的を持たずにぶらぶら歩くことが増えました。
雑誌に載っている情報以外に、自分で見つけたいという気持ちが強いからです。
そんなある日、昼時過ぎに京都に着いた私は、どこかでお昼ごはんを食べたいと思いながら歩いていました。
四条から三条に歩く道の途中で、小さな和食屋を見つけてふらっと入ってみました。
夜は飲み屋さん、昼間はごはん屋さんという風情の気取らない店でした。
観光客向けではなく、地元の人向けのお店のようです。
私が「こんにちは、まだお昼食べられますか?」とドアを開けると、お店の方が全員、私の顔を見てハッとしました。
もちろん私は初めて入る店です。
なぜかなと思って怪訝な顔をしたら、なんと私に似た常連がいるそう。
その人は私と同じように東京に住んでいて、私と同じように京都が好きで、訪れるたびに、その店に立ち寄って、そこで食事をしていくそうです。
「年恰好も雰囲気も似てるから、○○さんが来たんかと思たんよ」と店主らしいおばさんが教えてくれました。
はじめて入った店なのに、なんだか居心地が良く、食事も美味しく親切にしてもらいました。
私のようにひとりでふらっと京都に来ては、地元のお店に入り、地元の人と話をしていく。
そんな人が結構たくさんいるのではと思います。
いつか、そのそっくりさんに京都のどこかで偶然に会ってみたいと思っています。
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