「八清の気になるスポット」ではいつも素敵なお店を中心に紹介してきましたが、今回は「まちブラ壬生編」でお世話になった染め物屋さん「株式会社京都紋付」をさらに深堀し、イベントにも潜入取材してきました!
京都ならではの伝統技術を守り続ける一方、さらにその技術を進化させ、新しい展開にチャレンジされている姿に感銘を受け、さらに取材をさせていただくことになりました。
株式会社京都紋付は、着物の染物屋さんで黒染めに特化し、格式高い紋付着物を100年染め上げてきた老舗企業です。
京都で100年続く紋付の染物屋さんと聞くと順風満帆のように思えるかもしれません。
ところが、社長にお話しを伺うと、冠婚葬祭の定番だった着物の紋付を着る人が減った現代、着物業界の衰退により廃業する同業者が増え続け、100事業所を超える黒紋付の組合員は3事業所に激減し、ついに組合は3月に解散してしまいました。
京都紋付の着物関連の売上も億単位から数百万円にまで落ち込んだそうで、伝統産業を守るために大変苦労をされたそうです。
昔は冠婚葬祭といえば黒紋付姿が当たり前でしたが、今は洋服の時代。
どんなに優れた技術があっても黒紋付が売れなければ、事業は衰退していく一方となり、厳しい局面を迎えることとなったのでした。
捨てられる洋服を黒染めしてアップサイクル
そこで、100年受け継がれた伝統技法を守るために社長が決断したのが、洋服業界への参入でした。
京都紋付では独自の技法があり、黒の中でもより黒く「深黒(しんくろ)」に染め上げます。
汚れて捨てるしかなかった服でも「深黒」に染め直すと見違える様に美しく、色をチェンジすることで洋服がさらに魅力を増し現代人に受け入れられました。
この深黒に染めるだけでなく撥水加工も加わり、この技術は世界のアパレル業界の注目を集めることになりました。
見事V字回復を遂げ、世界的な有名ブランドや大手メーカー、大手商社とタッグを組み、廃棄処分を無くすSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも関心を向けられています。
Exhibition in Praise of Black@二条城内「香雲亭」
2022年9月6日、二条城内の「香雲亭」にて行われた、「Exhibition in Praise of Black」に潜入しました。
日本の世界遺産でイベントとは、さすが京都の老舗。
世界で愛される「黒」となった会社にぴったりの場所ですね。
伝統ある日本家屋に並べられたマネキンは異彩を放ち、日本庭園をバックに黒の洋服が浮き上がったように目に入りました。
このイベントは、染色・縫製加工の伝統技法を活用し、新たな価値を与え廃棄衣料の削減とアップサイクル(本来は捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアなどで新たな付加価値を持たせること)による新たな文化を広めることを目的として、京都紋付により設立された「一般社団法人RE WEAR(リ・ウェア)」の設立記念イベントとして開催されました。
事前に参加者から預かった衣類を黒染め加工し、二条城内「香雲亭」にて一部を展示した後、記念パーティーで黒染めした衣類をお返しするというものです。
展示会では、黒に染め直され新たに蘇った服の美しさや隠れたデザインが浮き上がる面白さなど、ビフォー・アフターが分かるように展示されていました。
絞りの技法を使った物や「イッセイミヤケ」の高級ジャケットを染め上げた物など、興味を引く物も多く、どれも個性が出ていて美しく蘇っていました。
黒染めは「染め上げるまでどんな風に仕上がるのか予想がつかないのも楽しみの一つ」だと言います。
素材やシワなどによっても「出来上がりが変わってくる」そうで、世界で一つの作品が出来上がるようです。
展示されていた品にQRコードがついている洋服は最初の企画段階から、黒に染める事を前提とした商品とのことで、QRコードを読み込むとビフォーアフター画像を確認する事が出来ます。
子ども服など汚れやすい服は、後で黒に染められると思うと白い服でも汚れを気にせず使用出来ていいですね。
着物好きとしてはやはり、黒紋付の着物は別格に美しく感じますし、日本の魂を感じます。
この技術を後世に受け継いでいって頂きたいと切に思いました。
ドレスコード「黒」のパーティー&新法人設立発表会
アフターパーティーでは、ドレスコードは黒。
全員黒だとなかなかの迫力ある集団ですが、皆さんさすがアパレル関係者だけあって、それぞれの個性が光ってとっても華やかな雰囲気です。
黒紋付姿で現れた社長の姿は貫禄がありますが、気さくな人柄が人と人を結びつけ、熱く信念を持って勢いよく発信される姿にみんなが引っ張られて動いていくような逞しさも感じられ、素敵な記念パーティーでした。
場所は京都御所近く、お料理が美味しいと評判のホテル「京都ブライトンホテル」で行われました。
ナプキンも美味しいお食事までも「黒」!で、テーマに合ったこだわりが感じられ、どこまでも目を楽しませてくれます。
「古き良き伝統を守りながら新しいモノ作りを発信していく、だからこそ『京都ブランド』は世界中から注目されている」のだと、京都の美意識を感じる体験でした。
深黒を実際に体験!
今回、シャツとパンツを黒染め加工して頂きましたが、出来上がりは肌触りがしっとりと感じ、やっぱり黒色が深いだけあって、美しく仕上がりました。
色褪せていたブラックジーンズも見事に蘇りました。
色落ちしないように加工されているとのことですが、念の為1、2回は単独洗いがおすすめだそうです。
黒染めオーダーはホームページから手軽に申し込めて完結するように開発されています。
Tシャツ(2,750円)、パンツ(5,500円)など、手軽さや料金のわかりやすさも現代人に受け入れられたのかもしれません。
タンスの中に眠っていて、しばらく着ていないけど捨てるのはもったいない、という服はありませんか?
是非、黒染め体験してみて下さい。
着心地の良い、着たい服に生まれ変わりますよ。
今回ご紹介した企業
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