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最近では、どこに出かけてもお土産をそれほど買わなくなりました。

というのも日本国内はのみならず、海外のものでも、ほとんどが買えてしまいます。

加えてお取り寄せやオンラインショッピングのシステムが発達して、その場所に足を運ばなくても、さまざまなものが手に入る時代になりました。

旅行に出かけたら、その場所で体験できることを満喫したいと思います。

お土産探しに時間を取られたくないということ、重い荷物を持ちたくないといいうこと、その2つの理由から買わなくなりました。

ところが何回も足を運んでいるのに、京都ではつい買ってしまうものがあります。

他の場所でもありそうなのに、なぜか京都だから買えるものが結構あるのです。

その「モノ」との出会い自体が京都ならではの体験につながっている気がします。

世界各国から届いた個性的なファブリック

50代を超えると、突然キモノに目覚めてしまいました。

それまではキモノは手間がかかるとか、高くて手が出ないとか、そんなイメージが強く、まったく眼中になかったのです。

ところがある日、見かけた反物に一目ぼれしてしまいました。

紅葉がデザインされたその反物は、洋服で育ってきた私に後先を考えずに購入させる魅力がありました。

それ以来、洋服から和服にシフトチェンジしてしまいました。

一度仕立ててしまえばサイズやデザインの関係から仕立て直しが難しい洋服に比べて、和服は手縫いが多いので、解いてしまえば8枚の平面のパーツに戻すことができます。

これほどサスティナブルなものはありません。

だからこそ、「布=ファブリック」の重要性が大切になる衣装です。

着物産業の中心だった京都は、今でもファッションの中心という伝統を受け継いでいます。

そのため、ありとあらゆるファブリックが集まっています。

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以前にも記事で取り上げた寺町のお店では、ウズベキスタンのイカット(絣)の生地を手に入れました。

帯にすれば素敵だと思っています。

このお店は店主自らが、ウズベキスタンのみならずインドや中国の奥地まで足を運んで、さまざまなファブリックを手に入れてくれています。

私の買ったシルクのイカットは、織手が引退してしまうとのこと。

もう手に入らないかも知れない最後の出会いかも知れません。そんな話を聞くと、より縁を感じて大切にしようと思います。

ここではファブリックだけではなく、世界各国から集めたリボンも棚いっぱいにあり、何にしようかと考えをめぐらすことができます。

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寺町の別の店では、アフリカからやってきたファブリックを手に入れました。

ラフィア素材に茶の濃淡の素朴な柄が、日本のキモノの色にも合います。

遠いアフリカのサバンナで育ったラフィアが、はるばる日本にやってきて、私の手元にやってきたと思うと感慨深いものがあります。

また同じ寺町には、日本の古裂が集められている店があります。

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特に日本の寒い地方で麻布やボロ切れ、古い布団などで繕われて、着続けられてきた「襤褸」という衣類が、今ではフランスを中心に海外の外国のデザイナーも注目する人気を集めているそうです。

寺町には他にもセカンドハンドのキモノを売る店やアンティークのキモノを並べた店もあり、わずか2kmにも満たない通りに、時間と距離を越えてきたファブリックの店が並んでいます。

訪れるたびに、何かしらの出会いがあるまちなのです。

検索では見つけられない書物との出会い

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京都に通いはじめたきっかけになった書店が叡電の一乗寺にあります。

京都の大学に通っていた私の兄が下宿していたので、学生の頃に何度も来たことがあるエリアです。

まち並みは当時とそんなに変わっていませんが、この書店が誕生したためか、周辺にしゃれた店が点在するようになりました。

なぜ、この書店にわざわざ東京から通うようになったかというと、検索アプリでは見つけることができないような本に出会えるからです。

たとえば「超合法建築図鑑」。

これは日本の厳しい建築基準によって制限されている建物が事細かに説明されています。

道を歩いていて見つける変わった外観の建物が、どうしてそのような形状で建てられているかがわかります。

こんな本が世の中にあるとは知らず、見つけたときに小躍りしたことを覚えています。

この書店にはきっと本が大好きな店員がいて、それぞれ自分が読みたい本をセレクトしているのではないかと想像しました。

また「バナナは皮を食う」は、鞍馬口近くのcaféで見つけた本です。

マジョルカタイルがカラフルなお店の片隅に古書が置かれて売られているのですが、その品揃えが個性的。題名に惹かれて思わず購入しました。

檀ふみ編纂の食のエッセイは、暮らしの手帖創刊60年を記念して出版されたもの。

吉川英治や坂口安吾、井伏鱒二といった文章の達人たちが書いたエッセイは、珠玉のものばかりです。

「NYCのシェアハウス」は、五条モールで見つけたもの。

なんと八清さんの現社長である西村直己さんが読み終えて出していたブックコーナーの中にありました。

シェアハウスがちょうど注目されつつある頃で、外国のシェアハウスはどんな感じだろうと思っていたタイミングで出会えました。

ニューヨーカーたちの部屋はそれぞれ個性的で見飽きることがありません。

西村さんに取材した直後ということもあり、やはり京都ではご縁がつながっていると感じました。

誰かからバトンを渡されたもの

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もともとアンティークなものが好きということもありますが、元の持ち主が大切にしていたものを引き継がせてもらっているという感覚が好きです。

三条にあるアンティークの店で見つけた黄色い鳥の入れ物は、店の棚にチョコンと置かれていました。

私が手に取ると店主の方がニコニコしながら「今日、並べたばかりですよ」 とのこと。

酉年生まれなので何か鳥に纏わるものを傍に置きたいと思っていたところでした。

いったい何をいれたらいいのか分からないほど小さいのですが、大切に持って帰ってきて私の家の棚に収まっています。

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銀の食器たちは三条通りにある中古の家具屋さんに置かれていました。

気を付けて歩かないとぶつかってしまいそうなほど家具でいっぱいのお店は、少しだけいつも銀製品が置いてあります。

銀は手入れをしないとすぐに黒く変色してしまいますが、使い込まれた銀器はきちんと手入れされていて、大事にされてきたことが分かります。

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最後に紹介したいのは北野天満宮の朝市で手に入れた小皿です。

一時期、深夜バスに乗って早朝京都に着き、そのまま朝市に行くということをしていました。

朝の7時頃の骨董市は観光客が少なく、ゆっくり見られるのが楽しみでした。

そんな私の目の中に飛び込んできたのがこの小皿でした。

いつもなら古伊万里や珉平焼に目が行くのですが、素朴でコロンとした姿が気になったのです。

裏を返せば3つの小さな足がついていて、使いやすそうです。

いくらか聞いたら、なんと1枚200円、4枚揃えても800円です。

3,000円や5,000円といったお皿が並ぶ中で、肩身の狭そうにしていましたが、すぐに連れて帰ることにしました。

以来、取り皿として活躍中です。

まだ買えていないものがある

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京都で何かを買うときは、単にモノのやり取りではなく、必ず店主や店員の方とのコミュニケーションがあります。

そのモノの持つ背景や歴史といった大切な情報も受け継ぐことになります。

それが目に見えない価値となるので、京都での買い物が代えがたい経験になるのではないでしょうか。

使うたびに、目にするたびに、その記憶がよみがえり、その時間を何度も思い出すことができます。

京都で買ったものは、いずれ京都で暮らすときに使いたいものばかりです。ですが、一番欲しいものは実はまだ買えていません。

京都の町家が私のめざす究極の買いたいものなのです。

町家は年月を経て魅力が増した部材が使われていたり、独特の手仕事を感じさせたり、唯一無二の存在です。

だからこそ、きちんと受け継ぐ必要があります。

中古の不動産を買うことは以前暮らしていた人からバトンを渡されることだと思っています。

京都で、いつかその日が来るようにと願っています。

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