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京都というと、「和食文化」の総本山というイメージがあります。

和食は2013年に世界文化遺産に登録されるほど、世界的に認められています。

日本を訪れる観光客のほとんどが「食」に関して大きな期待をしているのではないでしょうか。

その象徴ともされ、数々の名店が並ぶのも京都の特徴でしょう。

ただ。そのようなお店は予約が必要だったり、紹介制だったり、味わうために手間がかかります。

相応の予算も用意しなければなりません。

京都には、そのような従来のイメージから離れたユニークな食文化があることに気づきました。

「ハレ」と「ケ」という場をきちんと分ける京都では、食に関しても面白い特徴があるような気がします。

総務省統計局に家計調査品目別の地域別ランキングという統計があります。

2020年から2022年の平均のデータでは、京都市はパンの消費量が全国1位、コーヒーの消費量は大津市に次いで全国2位、牛肉の消費量は全国1位でした。

和食のイメージから一見ほど遠い、パンやコーヒー、そして牛肉の消費量が高いというのは、京都の人は伝統を尊重しながら、実はかなりの「あたらしもの好き」だということではないでしょうか。

今回は訪れるまちとしてではなく、住むまちとして考えた場合に、身近な「ケ」の場合の食文化について考えてみたいと思います。

意外にパン好きはデータで証明されている

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「日本で一番パンを食べているのが京都」と聞くと、ものすごく意外な気がします。

ところが京都のパンの消費量はずっと1位か2位。

ときどき神戸市と入れ替わることがあるようですが、ほとんど1位の座を保っています。

神戸は外国人居留地があったので、なんとなくパンを食べるイメージが自然にありますが、実は「京都人がパン好き」という事実は最近になって注目されてきました。

その理由としては諸説ありますが、職人が多いので片手で食べられるパンが便利だったから、とか、学生が多いので簡単に食べられるパンが人気とか、いろいろ理由が挙げられています。

なかでも「あたらしもの好き」という説が納得できるような気がします。

京都は千年もの間、日本の首都の地位を続けてきました。

今の東京がそうであるように、どんな時代も最先端の情報を最初に取り入れるのは人が集まる都市です。

京都は常に新しいものが入ってくる土地であり、新しいものを受け入れる土壌が備わっているのではないでしょうか。

進々堂や志津屋といったチェーン店は身近な存在で、特に志津屋のカルネはフランスパンに、ハムとスライス玉ねぎをはさんだシンプルな味ですが、「京都人の国民食」と言われるほど馴染んでいる日常食です。

東京で京都のイベントを開催したときに、カルネを用意して喜んでもらいました。

またフランス風、ドイツ風、等々、さまざまな種類のベーカリーを見つけられるのも京都の楽しみ。

1つのブロックに1つのベーカリーが存在するのではないかと思うほど、たくさんの個性的な店が見つかります。

コーヒー消費量が多いのは文化的な理由がある

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京都は一般的に緑茶や抹茶のイメージがもたれていますが、実はコーヒー消費量も全国トップクラスなのです。

パン好きということから併せてコーヒーも飲むというのは自然なことかも知れません。

京都はチェーン店の喫茶店も見かけますが、ローカルな喫茶店が多いです。

何よりどのまちにも個人経営の喫茶店がしっかり息づいています。

どの喫茶店にもご近所の常連がいて、まるでもう一つのリビングのように使っている人たちを見かけます。

また大学の多さもコーヒー好きを増やしている理由かも知れません。

京都は人口10万人あたりの大学数が全国1(総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた」から)で、勉学に励む学生の姿を見られるのも京都の特徴ではないでしょうか。

学生や教授がカフェに集まりコーヒーを飲みながら過ごすという説があるようです。

もともとお茶を飲んで一服するという文化が根付いていたので、コーヒーもすんなり生活に溶け込んでいるのかも知れません。

「肉じゃが」の肉は牛肉がオリジナル

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私が東京に住み始めて一番驚いたのは、「肉じゃが」の肉が豚肉だったことでした。

徳島生まれで、子どもの頃から関西の影響を受けて育っていたので、実家で食べ慣れていたのも牛肉でつくった「肉じゃが」でした。

これは関東と関西の肉文化の違いのような気がします。

諸説あるようですが、まず農耕用に飼われていた家畜が関東と関西で違ったことに理由があるようです。

寒さの厳しい関東では馬が使われ、比較的温暖な関西では牛を使っていたそうです。

明治時代に食肉文化が外国から入ってくると、農耕用の牛や馬を食べるという文化ができました。

しかし日本人好みではなかった馬の代わりに関東では豚肉を食べるようになり、牛肉は日本人好みの味だったため、関西では牛肉を食べる文化が続いたそうです。

ちなみに「肉じゃが」は京都府の舞鶴が発祥。

日露戦争が始まる前の明治34年、舞鶴市に旧日本海軍の「舞鶴鎮守府」ができ、初代司令長官として赴任してきたのが、東郷平八郎でした。

イギリスに留学経験のある彼が、若い頃食べた味が忘れられず、料理長にビーフシチューを作ってほしいと要望したところ、デミグラスソースの存在を知らない当時の料理長が、代わりに醤油や砂糖を使い、作ったのが「肉じゃが」だそうです。

また京都は全国的に有名な牛肉の産地に囲まれています。

但馬(神戸牛)、松坂牛、近江牛とあげればきりがありません。そうした地の利もあったと言われています。

すきやきやしゃぶしゃぶは、もはや和食の代表、牛肉文化は京都の食文化の一部だといえるかも知れません。

だしまき玉子から考える「だし」文化

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私が東京に住んで次に驚いたことは、東京の玉子焼きの甘さでした。

ご飯のおかずで食べる玉子焼きがなぜ甘いのか今でも理解できません。

京都で2週間ほど滞在して、移住体験をさせてもらったことがあります。

そのとき驚いたのはスーパーマーケットでの「だしまき玉子」の豊富さでした。

6種類以上の「だしまき玉子」が総菜コーナーに用意されていました。

なかにはお弁当のメイン総菜が「だしまき玉子」のものもありました。いろいろ試してみましたが、どれも味わい深く、だしの味がしっかりした玉子焼きで感動しました。

京都の「だし」文化へのこだわりが、玉子焼きをひとつのメインディッシュに格上げしているのかも知れません。

東京では玉子焼きはメインではなく、あくまでもお弁当のサイドディッシュの地位に置かれています。

京都にはおだし専門店が作るだし巻き定食が食べられるお店もあるそうです。

4種のお出汁を飲み比べて自分の好きなだしを選び、それで「だしまき玉子」を作ってくれるそう。

次回は足を運んでみたいと思っています。

そういえば京都の玉子サンドも独特です。

東京ではゆで玉子をつぶしてマヨネーズで会えたものを挟むのが主流ですが、京都では、ふわふわのオムレツを挟んだものが人気です。

私も子どもの頃に食べたのはオムレツタイプ。

京都の玉子サンドを食べるたびに郷愁を感じます。

京都の人がふだん食べている食事こそ、ほんとうの京都の姿がありそうです。

最近は有名な店ではなく、地元の人がふだん使いしているお店やスーパーマーケットに行くことが多くなりました。

他にもいろいろ探検してみたいと思っています。

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