今回は京都の観光地の中でもとても人気の高い二条城や京都御所にもほど近い『出水(でみず)』エリアをまちブラしてきました。
『出水』とはどんな場所なのでしょうか?とてもローカルなエリアで、京都の中心地でどんな生活ができるのかをイメージできますよ。
出水エリア
京都は夏は暑く、冬は寒い盆地ですが、京都盆地の希なる地形は、天然の地下ダムを担っていて、その大きさは琵琶湖の8割程とかなり豊富な地下水を留めていると言われています。
古来から良質な地下水が豊富に湧くため、平安時代には宮中の飲料水を司る「平安宮主水司(へいあんきゅうもんどのつかさ)」が置かれていました。
そして、この京都市の中心の「洛中(らくちゅう)」では酒作りが盛んに行われ、最盛期の室町時代には酒蔵が約350軒もあったそうです。
その一帯は水が豊富で、豆腐や生麩など水に関わる産業も盛んな地域だったそうです。
また、雨で湧泉があふれて道路に浸水したことから「出水(でみず)」という呼び名が江戸時代から確認されており、今でも残っています。
130年続く洛中で唯一の蔵元『佐々木酒造』
明治時代には131軒あった洛中の蔵元も今は一軒のみ。
京都中心街に現存する、貴重な蔵元『佐々木酒造』を訪ねてきました。
2023年に130周年を迎えた歴史深い酒蔵を守るのは、4代目の佐々木晃社長。
3人兄弟の末っ子で、2番目の兄である俳優の佐々木蔵之介さんのご実家として、メディアにも取り上げられていますね。
千利休が茶の湯をたてたという『聚楽第(じゅらくだい)』の跡地で酒造りをされていて、敷地の一角には石碑が建っていましたよ。
聚楽第ゆかりの『銀明水』を使ったお酒『聚楽第』は代表銘柄として人気です。
趣ある日本家屋に陳列された酒の瓶。
飲む前から日本酒が美味しく感じられますね。
猫ラベルの日本酒
猫のイラストが所々に目に入り、思わず猫ラベルの可愛い日本酒に手が伸びました。
特別純米『猫の集会酒 にゃん酒』なんて可愛いネーミング!
「なぜ猫?」とお伺いしたところ、以前は3匹の猫が蔵に迷い込んだところを保護して、看板ネコとして活躍していたことからラベルになったそうです。
今は高齢のため社長のご自宅で過ごしているそうですが、猫も「従業員」としてカウントされており、「リモートワーク中」というのがホームページにもしっかり記載されているところはユーモアがあってほっこりしますね。
今でも店内にはラベルやいたるところに猫のイラストを見ることができ、看板ネコの存在感は健在です。
猫はネズミや害虫から酒蔵を守っていて、「ネコ蔵」としてテレビの取材を受けた事もあり、とても人気だったようですよ。
京都洛中酒蔵ツーリズム
こちらの蔵は蔵人(くらびと)さんが案内してくれる酒蔵見学ツアー『京都洛中酒蔵ツーリズム』も人気で、お邪魔した時も丁度ツアーが終わったタイミングで、少し酒蔵も覗かせて頂きました。
蔵の扉をくぐるとお酒のいい~香りに包まれました。
冷んやりとして気持ちのいい空間に並ぶ大きな樽は迫力満点で圧巻です。
現在は木の樽は使われておらず、温暖化する気候に対してテクノロジーと昔ながらの智恵を融合して管理されています。
蔵人さんは職人のイメージとは違って、明るく上手にお話しして下さるので、そこも酒蔵見学が人気の理由なのでしょう。
購入前にできるうれしい試飲
店内では試飲体験も出来るので、自分好みのお酒をじっくりと選ぶのも楽しそう。
その他、商品棚には化粧品や麹商品なども展開されていて、家族のお土産やお友達へのプレゼントとしても喜ばれそうです。
今回は可愛い「猫」ラベルと、以前まちブラ取材で訪れた着物のまち「西陣」ラベルと、「古都」も一緒に購入しました。
にゃん酒130 特別純米300ml 888円
西陣 特別純米300ml 990円
古都 純米吟醸原酒300ml 770円
作家・川端康成の「古都」が好きで丁度春限定ラベルになっていたので、風流でいいなと思って純米吟醸の中からそれを選んだのですが、川端康成自身が「この酒の風味こそ京都の味」と揮毫(きごう)した字をラベルにされたと知り、その字を見入ってしまいました。
素敵なエピソード付き、純米吟醸原酒「古都」は、まろやかな甘味と舌触りにキリッとしまる後口で飲む程にまろやかさが増し、古都を想い描きながらうっとりするお酒でした。
お酒が飲めない方におすすめなのが、甘酒。
白い銀明水 190ml 324円
昔から飲む点滴と言われ麹の力は素晴らしい事は知られていますが、こちらの甘酒は梅エキスが入っていて、「和風ヤクルトの味」と紹介されましたが、正にピッタリです!
とってもサッパリとした後味に甘さ控えめ、ミニボトルでごくごく飲みやすかったです。
佐々木酒造株式会社
京都市上京区日暮通椹木町下ル北伊勢屋町727
【小売部 佐々木酒店】
油一筋200年『山中油店』
先ほどの佐々木酒造でいただいた冷えた甘酒を片手に北西へ向かって歩いていくと、中村公園が見えてきました。
都会のオアシスですね。
中村公園から下立売通を西に向かうと、まるでタイムスリップしたかのように、江戸の面影をそのままに丁寧に手入れされた重厚な日本家屋が見えてきました。
日本庭園も美しく、驚きと感動で足早く歩いて来た足がピタッと止まっていました。
今でも動く水車は家主が設計から携わり、今でいうDIYをされたとか。
趣ある庭先になっています。
油の専門店として、文政年間に創業され、200年近くの歴史があり、建物は国の登録有形文化財、京都市の重要景観建造物に指定されています。
開放感ある店内には、昔使っていた量り売り用の入れ物や大きな鉄鍋が展示されていて、当時の様子を垣間見る事が出来ます。
昔ながらの雰囲気を守る為に大規模な修復工事もされていて、瓦も全て焼き直した特別な物が使われていました。
お店では塗装用の油も扱われていて、木の呼吸を妨げず木材も長持ちさせる事が出来るそうです。
口に入れても問題ないくるみ油や荏油(えゆ)は食器にも使えます。
地域色もあって、京都は茶色、お茶屋さんでは赤の自然塗料がよく使われているそうです。
建物が本当に綺麗に手入れされているので、油の力って凄いなと感心してしまいました。
江戸時代後期から移り変わる時代と共に油の役割も灯り用の貴重な油から家庭の必需品、食卓用へと役割が変わってきたそうです。
すっかり、油の製造をされているとばかり勘違いしていましたが、製造は匂いが出る物なので京都市内では出来ないそうです。
油とオイルのテイスティング
日本の油だけでなく、世界各国から厳選されたオイルがセレクトされ、店頭にはオリジナルラベルが貼られたごま油やえごま油と共にイタリア産やスペイン産のオリーブオイルも並んでいました。
店内の奥に進むとカウンターとショーケースがあり、こだわり抜いた贈答用商品や自然の油を使った化粧品が展示されています。
紙袋のデザインも素敵で一緒にプレゼントするとご当地感も出て喜ばれそうです。
油のテイスティングが出来ると伺い、早速試食体験させて頂きました。
油ってこんなにも風味があるのかと美味しさと違いにもびっくりでした。
それぞれに合う料理なんかも教えて頂けるので、普段の味が油一つでグレードアップしそうです。
どれも一味違って美味しかったのですが、自宅でもよく使いそうなイタリア産のオリーブオイルと国内製造のごま油を購入しました。
Campo Millenario 250ml 2,808円
小皿にオリーブオイルを出して、軽く塩をふってパンに付けて食べるだけで、イタリアへ行った気分になれます。
それくらい上品な風味でまろやかな甘味も感じられ香りも良く、少し高価な値段ではありますが、有名料理店さんへも卸されている物で納得の味でした。
贈り物としてもおすすめです。
玉締めしぼり胡麻油 180ml 918円
ごま油は、今までに無いくらいとても香ばしいごまの香が口いっぱいに広がって、「おぉ」っと思わず驚きの声を上げてしまいました。
油を食べたのにさっぱりとした口当たりで卵焼きにも合うとの事だったので、早速試してみたいです。
毎月第3土曜日はマルシェ開催
毎月第3土曜日には店前の駐車場で地域の人達と交流が出来るように『山中油店マルシェ』が開催されています。
毎回出店内容は変わるようですが、オーガニック野菜やパンにスイーツ、ゲームなど楽しそうな内容が盛りだくさん。
この辺りに住むと毎月の楽しみになりそうですね。
マルシェ広場の横隣、店前の日本家屋は今は倉庫として使用されていますが、昔は米蔵だったそうで特別に中へ入れて頂きました。
目を見張る程分厚い壁に立派なハリと高い天井、床下は高く籾殻と備長炭が引き詰められているそうで、空気は外より冷んやりとして一年通して一定の温度管理がしやすく、害虫の進入も防ぐなど昔の人の智恵を感じました。
山中油店
京都市上京区下立売通智恵光院西入下丸屋町508
京町家の宿
先ほどの山中油店さんが、近隣で一棟貸しの町家宿をされているとのことで外観を拝見させていただきました。
室内も気になったのですが平日でも満室とのこと。
京町家の宿が人気と聞いて、なぜか嬉しくなりました。
この辺りは平安内裏(だいり)跡地で、『源氏物語』の舞台となったところです。
2024年の大河ドラマは源氏物語の作者、紫式部の人生を描いた物語。
ドラマの舞台としても沢山描かれていますね。
この場所は、天皇が政治を行う紫宸殿(ししんでん)后妃の住まい承香殿(じょうきょうでん)などに当たります。
1000年前に思いを馳せながら、歴史散歩が楽しめますよ。
まち中は静かで車の通りも多くなく、歩きやすかったです。
京都で豆腐を作って100年『豆徳屋(まめとくや)』
先ほどの宿から北へ上がり、まちのお豆腐屋さんにもお邪魔してきました。
こちらは、代々続く100年の老舗のお豆腐屋さんです。
中に入ると、ピカピカに磨き上げられた調理場や作業場が目に入ってきました。
奥から出てきてくださったとても若い方が4代目の店主さん。
お忙しい中、色々と教えて頂きました。
店内入口から直接見えるので、まるで工場見学気分です。
朝5時から作られているとのことで、豆腐になるまでを間近で見る事は出来ませんが、工程がよく分かりました。
出来立てをお店で直ぐに購入できるのも嬉しいですね。
100%国産大豆を使い、そしてこちらも地下水を使って豆腐を作っています。
さらに磁気活水器を利用し活性化した水を使っているそうで、野菜など鮮度を保つ効果、活性酸素を低減する効果、人体に吸収しやすい水になるなど良い影響があるそうです。
京都の地下水を使ったお豆腐をまちのお豆腐屋さんで頂くのは初めての経験で楽しみにして来ました。
お豆腐の他にお揚げにがんもどきなどがあります。
こちらではがんもどきを「ひろうす」と表現されていますが、関西ことばみたいですね。
暖簾には「ひりょうす」と書かれていますが、これは実は先代がオーダーした時の手違いだとか。
でもそのまま採用したこの暖簾の裏話を聞いて思わず笑顔になる効果があるなんて徳があっていいですね。
それから、豆乳に甘酒、手作りおぼろ豆腐も自分で作れると聞いて購入してみました。
豆腐 300円
油揚げ 300円
ひろうす 130円
豆乳(大豆11〜12%) 220円
自家製甘酒『花糀』 450円
豆腐が作れる豆乳(大豆15%)300cc 250円(にがり1.8cc付き)
どれも優しい大豆の甘味と美味しいお水が感じられ、ふわふわとろっとろな食感で美味しかったです。
こちらの甘酒は店主のお母様のこだわりレシピで、東北から取り寄せた赤米が使われていて、小豆のような珍しい色をしています。
甘さ控えめで酸味もあり粒々感も程よくあって、飲みやすい味でした。冷やしてそのまま頂けるのが手軽でいいですね。
『豆腐が作れる豆乳』は「レンジで簡単に作れますよ」ということで頂いてみました。
作り方のレシピと一緒ににがりももらえるので安心ですし、にがりは最高の数値といわれる物を用意してくれていますよ。
出来上がったおぼろ豆腐は、薬味に負けないしっかりした濃い味わいでこちらも美味しく頂きました。
今回、大きな耐熱器で作りましたが、小さなカップでも簡単に出来るので、お子様と一緒に自分用おぼろ豆腐を作って、スプーンですくって食べても楽しそうです。
夜は7時まで開いているので、会社帰りでも立ち寄れそうですね。
豆徳屋
京都市上京区裏門通下長者町下る山本町90-1
他にも気になるお店がたくさんの出水エリア
近所の素敵なお店を伺ったところ、豆徳屋さんの目の前にある焼き芋屋『みつ蜜 坤高町店』、東へ行った辰巳公園の南にあるパン屋『アカネBAKERY』は、豆徳屋さんのおからを使ったパンが頂けると伺ったので食べてみたかったのですが、定休日だったのでまた今度プライベートでお邪魔したいと思います。
辰巳公園には『空爆被災を記録する碑』がありました。
京都も空爆で被災していたのですね。
たくさんの子どもが元気に走り回る姿を見ながら、平和な日常のありがたさを改めて感じました。
銭湯の『長者湯』もありますよ。
地域の方が続々と入っていくのを見かけました。
『キッチン ゴン 西陣店』も人気のお店です。
次は営業中にお邪魔したいと思います。
出水エリアだけではなく京都のまち中には地元に愛される個人店やタイムスリップしたかのような雰囲気が沢山残っているので、自分のお気に入りのエリアを探すまちブラも楽しいですよ。
次回のエリアも楽しみにしていてくださいね。
京都をまちブラしよう!
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