京都をこよなく愛し、
魅力的な資産と街を考える西村ナオキのブログ!
皆さん、ごぶさたしております。
京都にある不動産会社「八清(はちせ)」の専務、西村 直己と申します。
情勢の荒波にもまれ、なかなか続話を出すことができなかったのですが、ようやく私のブログ希家おくべし!第二話『不動産投資とは何か?』をお届けできる運びとなりました。
今回はちょっとお勉強的な内容なのですが、自らを見つめなおすひと時だと思ってお付き合いいただけると幸いです。
不動産投資というと、どのようなイメージですか?
投資に要する金額が、株や投資信託のような他の金融商品よりもはるかに大きく、ハードルが高く感じられるかもしれません。
物件の市場や特性、資産価値をよく見極めないと、大きな損失になる危険性をはらんでいるのが不動産投資の怖いところです。
まして、これからの日本は人口減少社会であり、空き家・空室が増えていき、平均を取ると日本の多くの不動産の価値は下落していくと予想されます。
しかしながら良い物件を見極めることができるなら、安定的な家賃を得ることができ、売りたいときに換金することが容易です。
皆さんの多くは「不動産投資」と「住まい」とを切り離して考えていらっしゃると思います。
しかし、不動産投資の考え方は住まいの資産価値を考える上で共通する面も多く、実は大変役に立ちます。
不動産の潜在力と将来の市場の変化を見抜く洞察力が、資産価値の高い住まいさがしを考える上で、大変重要なのです。
これから不動産投資をはじめたいと考えていらっしゃる読者の皆さんだけでなく、住まいを考える方にも不動産投資的な発想を学んでいただければと思います。
さて、最初によく誤解をされる言葉の定義の話です。
投機(とうき)と投資(とうし)の違いについて説明しておきます。
不動産の投機と投資の違い
投機や投資というと金融商品の購入などリスクが大きいイメージでしょうか。
日本ではやらないほうが良い事の代名詞のように認識されている事が多いです。
しかしそれは保守的な考え方で、中長期的な資産形成や資産保全のためには、何もせず無策でいることのほうがむしろ危ないのではと個人的には考えています。
不動産の投機や投資の定義の違いからしっかり押さえておきましょう。
投機→ 不動産を購入し、短期間所有して売却していく。
投資→ 中長期的な利益を求めて不動産を運用していく。
短期的利益のために売買を繰り返すことを「投機(とうき)」と言います。
例えば、物件購入後、短い保有期間のうちにそれ以上の値段で売却し、キャピタルゲイン(※1)を得ることを指します。
これに対して「投資(とうし)」は中長期にわたり、物件に資金を投入することで保有資産(量)の増加、あるいは、資産価値(質)を増加・維持させリターンを得る行為を指します。
後者の投資には、さらに5つの大きな方向性があります。
- ① 定期的収益
- 投資家は特定期間、継続して収益を得たいと考えます。
- ② レバレッジ
- 投資家は借りたお金を利用してより多くのリターンを得たいと考えます。そのために、借りたお金のコスト(金利等)よりも高い収益があるものを取得する必要があります。
- ③ 資本増加
- オーナーは資産価値を上げたいと考え、長期的に資産価値を上げるために家賃を上げていく事を望みます。
- ④ 安全性
(元本の保護をしたい) - オーナーは長期間価値を保つであろう高級な不動産を購入してそれを維持し、その投資を守ることを望みます。
- ⑤ 税務上の利得
(節税したい) - オーナーは減価償却(※2)によって所得があったと見なされる時期を遅らせる、あるいは節税することを望みます
つけ加えるならば、6つ目として「社会貢献」や「自分自身の誇り」のためにというのも、不動産投資の大きな目的としてあるかもしれませんね。
先ほど申し上げた5つの目的に「オーナー」と「投資家」という2つの主語が出てくることに注目してください。
実はこれ、とっても深い話なんです。
この2つの主語、各プレイヤーの段階によって選ぶべき目的が代わり、この目的により採るべき最適な手段が変わってくるという事を示しています。
目的の達成の為に具体的にどんな手段が挙げられるのか、それぞれの目的について見ていきましょう。
投資家の目的
「投資家」は、自己資本を活かして、取れる範囲の可能なリスクを積極的に取り、資産を積極的に増やしていくプレイヤーを指しています。
大きく2つの目的があります。
① 投資家の目的:定期的収益(キャッシュフロー)とは、家賃収入が定期的に長く続くことを目的にしています。
投資家の採るべき方針として、賃貸モノとしての市場の強さ(需要と供給バランスが影響)とオーナーの期待収益率を満たす収益性(利回り)の良さという両方のバランスを考えた物件選定をまず行います。
その上で、適宜建物と運用上のメンテナンスを行うことで、質の高いキャッシュフローを目指していきます。
② 投資家の目的:レバレッジ(※3)は、言わば「てこの原理」です。
投資家の採るべき方針として、質が良く収益性の高い収益物件を探し、できる限り低利率かつ長期の融資(20年以上等)を受け購入することです。
そうすることで、利回りの利ざやが大きくなり、投資額に対するキャッシュフローを大きくできます。
融資の充当を大きく、自己資本の投入額を少なくすることで、自己資本に対しての収益率として物件の利回りを上回る収益率を獲得できます。
オーナーの目的
「オーナー」は、既に一定以上の資産や不動産を保有される方で、この資産をどう運用するのがベストかを考えるプレイヤーです。
大きく3つの目的があります。
③ オーナーの目的:資本増加は、インフレヘッジ(※4)のための手段になります。
インフレというと慢性的デフレが続く日本ではピンとこないかもしれませんが、インフレ時はカネの価値が下がりモノの価格が上昇します。
カネに対する不動産の価値はインフレ時に相対的に高まることからインフレ対策として有効になります。
(インフレはイメージしにくいので、「単純に高く売れるようにするため」と考えて頂いても良いです。)
またお金を借りることで、負債の価値も相対的に下がるという事もあります。さらにインフレ時は家賃が高くなります。
そうなれば結果的に不動産の価値もあがります。
オーナーの採るべき手段としては、中長期的に価値が上がりそうな不動産を選ぶこと、メンテナンスやバリューアップに気を遣うことも大切です。
④ オーナーの目的:安全性は、収益性は低くても元本の減少リスクの低い、資産を持ち、資産を防衛するのが目的になります。
オーナーの採るべき方針としては将来的に資産価値(売却時の価格)の下落可能性が低い高級な物件、または安定した需要のあるエリア、希少性の高い物件等を購入します。
そして、自身の物件をしっかりとメンテナンスをしていくことで売却(換金)時の元本の価値を維持することを目指します。
⑤ オーナーの目的:税務的利得は「所得の大きい個人や法人が所得税や法人税において建物や動産の減価償却で所得を相殺し、税金の繰り延べや、節税を行う事」です。
もう一つは「資産家のオーナーの相続税対策で節税効果を狙うこと」が目的です。
オーナーが採るべき方針として前者は建物の簿価が高い物件で、オーナーの計画に合致する運用期間で減価償却を狙える不動産を選ぶことです。
また、後者では時価よりも相続税評価が安くなる不動産を選択することを目指します。
例えば賃貸物件にすることで相続税評価は下がります。
個々についてより掘り下げていけば1タイプにつき軽く一話書けるくらいのボリュームなのですが(笑)、今回はここまででとどめておくことにします。
あとがき
いかがでしたでしょうか。
不動産投資におけるプレイヤーの観点から、どのような目的の場合にどのような手段をとるのかをお話ししました。
投資するプレイヤーの目的によって手段が変わるということですが、ご自身がまずどのタイプにあたるのかという自己分析をすれば、自分のタイプに合った精度の高い物件がおのずと見えてくることでしょう。
投資とは、選択の連続です。
知識は、あなたが選択をする上での羅針盤となります。
漠然とした投資というイメージが少しでも具体的になり、行動につながればと祈っております。
また、いずれのポジションであっても本質は①資産価値が高い状態にする事、②入居者にとって魅力的・快適な物件にすることで、質の良いキャッシュフローを生み出していく事に尽きます。
八清では京都市内のリノベーション物件や収益物件をお客様にご購入していただき、管理をさせていただく事で、お客様にあわせた投資活動をアドバイスさせて頂くことが可能です。
前回から時間が空いてしまいましたが、前回の第一はこちらから>>第一話 希家、おくべし!
第三話も現在執筆中ですので、お楽しみに!
注釈
※1 キャピタルゲインとは
不動産投資においては物件の売値(時価)と買値(仕入れ値、購入金額)の差額によって生じる利益のことを指します。
簡単な例:2000万円の不動産を買い、2500万円で売却すれば、500万円の利益(キャピタルゲイン)が得られるといったところです。(⇔インカムゲイン)【※1の本文へ戻る】
※2 減価償却とは
一言でいうと、資産の会計処理の方法です。
大まかに資産というと十万円以上のモノ(建物とか高級家具とか想像してください)なんですが、それらは購入時の市場価格から、価値が年々目減りしていきますよね。
その価値の減少分を決められた期間で経費化することを減価償却と言います。
減価償却費を会計で計上し、それが税務で損金に算入できる範囲内であれば、税金の繰り延べ(税金の支払いを遅延させる)効果が期待できます。
ここでは難しく考えず、減価償却というものを使って「売却するよりも前に建物を費用化していけるんだ、その結果税金の払いを遅くできるんだ」くらいに思っていただければ大丈夫です。【※2の本文へ戻る】
※3 レバレッジとは
自分の持ち金に銀行などで借りたお金を足して運用し、自分の持ち金だけで得ることができたリターンよりも大きなリターンが得られる効果のこと。
「レバレッジが効く」「レバレッジが働く」といった使い方をします。【※3の本文へ戻る】
※4 ヘッジとは
大まかにヘッジ=防止策という意味合いです。
リスクヘッジは投資や先物取引でよく使われる用語です。
投資の基本は、資本を分散させる『分散投資』です(投資で偉業を成し遂げた先人の言葉「卵は一つのカゴに盛るな」は有名な話ですね。)
そこで資本を分散させていくわけですが、その時の株の銘柄の 買い方として全く反対の値動きのする銘柄A,Bを買った場合を考えます。
もしAが値下がりしたとしても、反対の動きをするBは値上がりをします。
これでは大きな利益もでませんが、大きな損失もでないとも言えます。
その間にもインカムゲインは得ているわけですのでプラスマイナス0というわけでもありませんよね。
これがリスクヘッジの基本です。
ヘッジという言葉自体は広義的には「リスクを予測してそれに対応できるような保険や対策を取っておくこと」といった意味として日常でもつかわれているようです。
ここで本文にもどるのですが、インフレーションで価値が下がるカネを持っておくよりも、その時に価値が上がるモノ(例えば「不動産」「株式」「貴金属」など)を保有すること自体が、資産価値を減らさずにすむということになり、インフレに対する対策(ヘッジ)ということになります。【※4の本文へ戻る】
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