京都をこよなく愛し、魅力的な資産と街を考える西村ナオキのブログ!
京都にある不動産会社「八清(はちせ)」の専務、西村 直己と申します。
今回は早めにお目見えすることができました。
世間が慌ただしい中、大変な毎日を過ごされていると思いますが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
「希家おくべし!第三話『京町家投資のススメ①』」をお届けいたします。
今回のお話は少し長いので、細切れにして掲載予定です。
京町家投資のススメ①は、概論にあたります。
私が京都・町家が好きなことをご存知の方は多いと思いますが、どうして京都・京町家にこだわるのかを交えながら、京町家投資について分析していきます。
私が京町家を推す理由
現在、団塊の世代の相続対策が最盛期を迎え、アパートや賃貸マンションの建設が止まりません。
「どれもこれも似たようなデザインの建物。本当に需要があるのか?」建設現場を目にするといつもそんな言葉が心に浮かびます。
空き家が依然として増え続けているのは統計データを見ても明らかで、その一方で戦前からの伝統建築である京町家は年々倒壊され2%のペースで減り続けているのをご存知でしょうか。
(その中で京都市内に残存するのは約4万軒と言われています。)
そのような状況でありながらも、八清が京町家再生と流通に関わってから、おかげさまで早くも19年が経過しました。
私どものなりわいである伝統建築の再生・利用・活用は、何年続けても楽しいものです。
大工の手仕事による家は一軒一軒造りが違うし、安普請(やすぶしん)の路地奥の京町家であっても手作りの味わいがあるんですよね。
歴史のある古民家と対峙しながら、どう残すべきかと考えるのは楽しいしやり甲斐を感じています。
京町家は長年住んでいる年配の方から「暗い、寒い、住みにくい」などといわれますが、現代の技術でリノベーションをすれば、住宅としての機能性・快適性が付加されて住み心地のよい家に生まれ変わる可能性を秘めています。
また京町家の建つ場所は独自の文化や昔からのコミュニティが根付く京都の旧市街地。
歴史や文化が息づく京都の市街地に住むことで、世界的に有名な祇園祭の内側に触れることができるほか、地域の体育祭(※1)やローカルの風習である地蔵盆といった、守るべき京都の地域文化の輪に加わることもできます。
そして、日々の暮らしの中で和の趣に包まれた自宅の坪庭を眺めるひと時は何とも言えない心地よさがあります。
そんな文化や自然に寄り添った暮らしこそが最先端のトレンドと言えるのではないかと私は思います。
社会貢献をしながら、地域の風習に触れながら、趣のある京都での暮らしを享受できる京町家という住まいは、非常に魅力的だと考えています。
日々を通してその魅力にふれているからこそ、「京町家を買うことは資産形成につながる」ということを、八清の社員はみんな感じています。
京町家を賃貸住宅として活用することでアパートやマンションの投資との差別化もできます。
(そうそう、私自身も会社近くの路地奥のリノベ京町家に10年間住み、その後貸家として賃貸運営を実践中なんです。)
路地奥の京町家を使った賃貸住宅としての投資は、私としても強く推したい投資カテゴリーです。
京町家はリセールバリュー・貸家の賃貸需要・再建築不可のメリット・節税効果・顧客属性(・・・書き出せばたくさんあるのですが)、京町家保全は街並みを守る社会貢献などの観点から、中長期の資産運用にこれほど適した投資はないと私は考えています。
それでは、京町家投資の経済的側面について理論的に説明をしていきます。
住まいの資産性としての評価
住まいの評価軸として機能性、快適性、利便性、生活環境、資産性の要素が挙げることができます。
機能性や快適性は建物の性能で決まり、利便性と生活環境は立地や敷地条件で決まり、資産性は建物の性能と立地、敷地条件による総合的な評価であると考えています。
住まいとしての不動産は資産性の高低で分類すると概ね5つのレベルに大別することができます。
縦軸を収益性、横軸を資産性ととった場合の分布図は以下の通りです(収益性と資産性※2)。
- ① 資産価値はゼロに向かうので、売買時の居住期間の損益が賃貸時の居住期間の損益よりマイナスになる可能性があり気をつけるべき物件(例:郊外周辺の物件)
- ② 資産価値は下落するが、売買時の居住期間の損益が賃貸時の居住期間の損益よりプラスになり資産形成に寄与する物件(例:準郊外よりの物件)
- ③ 資産価値は下落傾向であるが、収益性が極めて高いので短期間の不動産投資で賃貸収益が見込める物件(例:準郊外の中古戸建て投資)
- ④ 資産価値が下落し難い傾向があり、収益性は低くはないので中長期の資産形成にむいている物件(例:賃貸需要のある準都心の中型の物件)
- ⑤ 資産価値が高いレベルで維持され、収益性が高いので中長期の不動産投資が見込める物件(例:賃貸需要のある都心の小型の物件)
京町家の建つ立地にもさまざまあり京町家の定義次第ではありますが、リノベーションされて10年以内の京町家は資産性の観点では概ね②④⑤のどれかのレベルに該当します。
(ここだけの話ですが、八清でも、皆さんに分かりやすくお勧めできるように④⑤の物件を分かりやすく表示するカテゴリーを作っている最中です。詳しく書けないのですが、乞うご期待といったところです。)
もちろん京町家や住まいは資産性が全てではありません。
自分に価値観に合った暮らしができるか?健康的か?本当の幸せとは何か?を考えてじっくり選んでほしいと願うのですが、どんな立地を選んだとしても中長期で保有する収益資産として住まいを持ちたい場合は京町家は強くおすすめできます。
その理由は今後の話で説明していきますね。
住まいの5つの評価軸の中で機能性、快適性や生活環境は一旦無視し、資産形成上の事だけを議論する場合、高所得者であればあるほどメリットが大きくなる可能性があります。
私がおすすめするのは路地奥や細街路に建つ京町家を活用した賃貸住宅としての投資ですが、前回の記事の不動産投資における5つの目的、すなわち[①定期的収益][⓶ レバレッジ][③資本増加][④ 安全性][⑤ 税務上の利得]のうち①④⑤の3つの目的は比較的楽に達成しうる投資であると私は考えています。
なぜ路地奥(細街路を含める)の京町家に投資的魅力があるのか?
見出しの問いについての解説を今後の連載で説明していきたいと考えています。
路地奥の京町家の投資の大きな強みは以下の4点に集約されます。
-
【要素①】賃貸用に企画開発された戸建賃貸物件の少なさ→5話
【要素②】京町家のリセールバリュー→6話
【要素③】路地奥≒再建築不可のメリット→7話
【要素④】「リノベ済み京町家」と「路地」の税務的メリット→8話
大きくはこの4つの特長により、路地奥の京町家の投資が独特であり魅力的なものになります。
再建築不可のメリットには、金融機関の担保評価が低いので割安で購入できるということですが、それに加えて安い評価を受ける再建築不可物件が将来において建築可能になったり、銀行での融資がうけられるようになったりする可能性も含んでいるのです。
そう考えるとおもしろいと思いませんか?
次回以降で一つずつ解説してまいりますが、その前に弊社八清がプロデュースしたリノベーション京町家で達成できる利回りの水準、さらには立地と建築費、建物面積が収益性へ及ぼす影響について本稿でざっと説明しておきますね。
ところで、収益性が高くなる物件はどんなものだと思いますか?
それはずばり、リノベーション済みの「路地奥の」京町家です。
建築コストが上昇した現在でも、特別贅沢でない標準的な仕様のリノベ済みの物件だと表面利回りで5%(※3)、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料の4種の運営費を差し引いたネット利回りで4.3%弱という水準の物件が収益性としては高い水準であるということが八清での成約事例のデータで示されています。
加えて、買主様が高所得者であるという属性などを考慮すると、節税額を含めた利回りは6~8%になる可能性があります。
(節税目的で資産購入をお考えの方、詳しくはお問い合わせ・ご相談くださいね)
余談なのですが人通りが多い場所にある商業向きの物件も、もちろん存在します。
そういった場所では住宅としてではなく店舗として住宅賃料よりもはるかに高い賃料で貸すことができます。
また人通りはあまりなくても立地がオフィス街にあったり、ハブ駅の近くであれば法人の事業所として住宅よりも高く貸せる可能性もあります。
法人需要についてはまた別途説明していきますね。
次回、4話(京町家投資のススメ②)では、京町家の利回り(収益性)についてさらに深堀りしていきます!
あとがき
「京町家投資のススメ②」は、ほどなくしてお届けできるように準備中ですので、もうしばらくお待ちくださいね。
京町家投資はまだまだ穴場のカテゴリーにあたると私は考えています。
専門家の方からでさえ「京町家って流通しているんですね」「宿以外にも使う人いるんですかね?貸したりできるんですか?」と驚きの声をいただくことも多いのです。
また、本文でお話した通り、オーナーさんや昔から住んでる年配の方は「京町家は寒いしくらいし不便や、今の人はこんなんに住まへんやろ」っておっしゃるんですよ。
でも普段から不動産を取り扱っている私たちからしたら、趣のある京町家に住みたい、そこで事業をしたいので探しているっていう声を日常で聞くわけです、お互いに認識が全く違うのが非常に興味深いですよね。
そんな中で「京町家を利用したい」「京町家を不動産活用したい」とお考えの方々はもちろんのこと、加えて、投資がしたいとお考えの方をつなぐのが私どもの仕事の一つだと考えております。
これからも京町家投資の魅力を伝えるべく努力いたしますのでどうか末永くお付き合いいただけるとうれしいです。
注釈
※1 京都の学区と地域の体育祭
京都には明治時代ごろに設定された学区という概念があり京都の学区(きょうとのがっく)は、日本で最初に創設された64校を起源としています。明治期から戦中まで小学校運営・行政機能の一部を担う地域単位です、簡単にいうと学校区内の町連合みたいなものでしょうか。(現代の小学校の新設や統廃合が進み通学区域も変わってきているため、学区≠通学区域です。)
その学区内で元●●小のグラウンドなどで秋に開催される運動会があります。テレビ番組のケン〇ンショーで何度か特集されているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。運動会恒例の町対抗のリレー、綱引き、玉入れがあり、子どもをはじめ大人や年配の方々がガチで競い合います。翌日は筋肉痛が話のタネというなんともシュールなイベントなのですが、ご近所さんとの連帯感やお付き合いの温かさを感じられるひと時でもあります。もちろん私も参加しておりますよ!>>本文に戻る
※2 希家おくべしの中での「収益性」と「資産性」
厳密にいうと、一般の定義とは少し違ってきます・・・希家おくべしでの意味を説明しておきますと・・・。
収益性→元本(物件購入価格)を回収する速度のことで収益率として示される。高い収益性には必ず何らかのリスクが伴います。
資産性→中長期的な元本の換金価値、再販価値の意味を含みます。長期間経過後も高い価値が維持される(もしくは値上がりする)物件は資産性の高い物件という事になります。>>本文に戻る
※3 表面利回り5%
本文でもお伝えした通り、物件原価、工事費が相当に安く収まらないと表面利回り6%はリノベーション京町家ではなかなか成立しえなのが実情ですが・・・!実は5%でもなかなか立派な数字なんです。なぜならば、戸建物件として扱えるので、入居者の退去後はより高く売れる可能性があるからです。景気に左右されにくく流動性リスクが低いことの裏返しなんですね。一棟タイプの収益物件には無い安全性があるとも言えます。>>本文に戻る
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