皆様こんにちは、コロナも変異が進み新たな株が世間を騒がせていますが、息災にお過ごしでしょうか。
従来通り大変な業種、折り合いを見つけて新しく事業を展開する業種、さまざまに工夫されて事業を営まれていることと思います。
このような中で、ファンの方々が八清の物件を楽しみにしてくださることや、さまざまな企業や投資家の方から注目していただいていることはありがたい限りです。
ここまでは京町家投資のススメ、戸建賃貸のマーケットの魅力、京町家のリセールバリューの高さと解説してきました。
第9話は再建築不可物件の価格特性について深堀して、前後編で解説していきます。
再建築不可物件というと「価格は安いけど、デメリットが多い」というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?
八清は京町家ブームが到来する前からリノベーションが得意な不動産業者として、多くの再建築不可の路地奥物件の再生に取り組んでまいりました。
再建築不可物件を上手く活用することでデメリット以上のメリットや付加価値をお客様に提供できているのではないかと自負しております。
京都は日本全国でもおそらく上位の事例数を誇るのではないかと考えております。
実際に八清で買取り、再生している物件の約4割近くが再建築不可といっても過言ではありません。
次の章から再建築不可物件を数多く取り扱ってきた八清の代表であり約10年間にわたり路地奥京町家に住んだ経験のある私が、再建築不可物件(主に京町家)のメリットとデメリット、魅力、ファイナンス上の特性について解説していきます。
皆様もご存じの通り、京都の路地や細街路(さいがいろ)は魅力があり多くの人を惹きつけます。
その雰囲気は場所により様々ですが、細い路地を歩くとなんだかワクワクしたり歴史的な情緒を感じたりといった体験を一度はしたことがあるのではないでしょうか。
感性をくすぐる路地や細街路ですが、経済面の特徴もしっかりとおさえておきましょう。
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1. 再建築不可物件とは
再建築不可とはどういう状況を指すのかを八清Webページ「再建築不可物件講座」などでも解説をしてきておりますが、いまいちど復習しておきましょう。
そもそもどういう状態が再建築不可になるのかと言うと建築基準法の道路に2m以上接道していない場合が該当します。
物件が路地や通路(非道路)のみにしか接していない物件は 原則、再建築不可となります。
この場合、申請が必要な建築行為(新築、増築、改築、移築) はできませんが改修工事は可能です。
中古物件を法規適合性で類型化すると大きく2種類に分けられます。
違反建築物件と既存不適格物件です。
違反建築とは、建築基準法制定以後に無許可で建てられた物件を言います。
2mの接道に満たないものや他人地を一部使って確保しているような土地(A)が多いです。
あと、厳密には違反建築ではないのですが、長屋の集合住宅のように一団の土地で建築確認を申請している物件であり、敷地奥にある長屋単体では建て替えのできないテラスハウス(B)というイレギュラーなケースもあります。
一方で既存不適格物件は、建築基準法制定以前に建った物件で、現在の建築基準法には適合していない物件がほとんどですが、違反建築ではないという事で法規面では若干の緩和があります。
既存不適格物件を分類すると、大きく2種類あります。
専用通路型と袋小路型です。
専用通路型とは別名旗竿型とも言われ、旗竿部分と旗の部分が一筆の土地で構成されております(C)
袋小路型は様々なケースがありますが、通常路地(私道)部分と建物の敷地部分は別の所有者であることが一般的です(D)
私道の所有形態は物件により様々ですが、トンネル路地という形態も京都にはたくさんあり独特な景観を形成しています。
▲トンネル路地:路地の上には建物があり、形態や所有はさまざま。祭りの道具や町内のものを保存していた名残なのだとか
2.再建築不可物件における経済面の特徴 9項目
次に再建築不可物件の経済面での特徴を簡単に9項目にまとめておきます。
① 土地としての担保価値が低く、融資が適用されにくい
② 土地評価は接道物件(整形地&幅員あり)の半値以下となりやすい
③ 物件の建物前面まで工事車両が入れないため建築費用が大きくなる
④ 賃料は再建築可能な物件と変わらない
⑤ リセールバリュー(再販価値)は不動産会社の流通能力に左右される
⑥ 税務メリットが生まれやすい
⑦ 火事で全焼してしまうと再生が難しい
⑧ 一定の道路条件を満たせば建替えが出来る可能性も残されている
⑨ 旅館や店舗など特殊建築物への転用にハードルがある
それぞれ補足も踏まえて解説していきますね。
2.1再建築不可の流通性、収益性とファイナンス①~⑥
再建築不可物件の土地単体では価値がないと書きましたが、建物付き不動産としてはデメリットだけでなくメリットも大きい事から、実需向けだけでなく、セカンドハウス用、投資用としても非常に人気があります。
価格的な要件を満たせば流通する物件がほとんどです。
土地部分の流通評価は大まかに言うと半値9掛け=つまり近隣相場の45%以下、大雑把な価格イメージとしてご理解いただけると幸いです。
逆に建物に関しては工事費が増大します。
工事車輛が建物にどれだけ接近して駐車できるか?(=路地の深さなどによって変わる部分)ですが、接道している物件よりも10~20%増額になる可能性もあると理解しておきましょう。
(逆にポジティブに見れば建物価値が高いという見方もあります、笑)
また細街路には車が入れないからこそ、子供やお年寄りも含めて安全に住めるという事もありますよね。
路地では人の目がセキュリティになるという事も言えるかもしれません。
さて、価格特性面の詳しいことは後編に譲るとしてここでは再建築不可物件の融資について解説します。
建替えができない事よりも、融資が受けにくいことで価格的な影響が大きいのが実際のところです。
再建築不可物件や戦後の在来建築(=基本的には違反建築)の融資手段としては、無担保ローン(フリーローン)があります。
京都中央信用金庫のフリーローンであれば2000万円まで1.7%(2022年1月現在)で融資を受けられる可能性があります。
但し、返済期間は最高20年となります。
また三井住友トラストローン&ファイナンスの住宅ローンであれば金利は変動金利型3.9%~4.4%(2020年2月現在のデータにて、ご興味があれば銀行にご確認ください)と高いのですが、様々な顧客や物件の特殊条件に対応できる可能性があります。
ということで物件が再建築不可であっても、借りられるローンはいくつかあります。
昭和25年以前に伝統構法で建てられた京町家に限定すれば京町家ローンがあります。
京都信用金庫・京都中央信用金庫は住宅・投資用のローン商品、また、滋賀銀行・スルガ銀行は住宅に対応するローン商品を有しており、再建築不可であっても京町家であることの証明ができれば融資を受けられる可能性があるのです。
顧客属性を重視したスキームとなっているようですが、再建築不可物件に融資というのは私が知る限り、全国で例がありません。
スルガ銀行であれば、京都府外からの移住に関しても対応ができるローン商品になっております。
※なお、改装前に京町家だと認められない場合も外観を京町家に戻す改修をすることで京町家の証明をしてもらえる可能性もあるようです。
京町家は現金で購入する富裕層が多いのですが、融資が受けられる物件もあるということで一定の流動性は担保されていると言えるでしょう。
次に再建築不可物件の家賃についてです。
家賃水準は、もちろん部屋の明るい暗い、間取りの良し悪しなど物件の個別性に対しては影響を受けますが、再建築可能な物件と比べて低いという事はありません。
投資物件として検討される方にはこの事と、後に紹介する税務メリットなどにより、収益面のメリットが出てくることが大きいです。
税務メリットは不動産の運営費になる固定資産税、取得コストになる登録免許税、不動産取得税だけでなく所得税/法人税、相続税/贈与税などにも及びます。
再建築不可の20坪以下の土地であれば固定資産税は年間1万円を下回る場所が多く、この安さが賃貸経営の運営費低減につながります。
リセールバリュー(再び売るときに価格がどうなるか?)は扱う物件の立地と種類、それによる融資扱いの可否、扱う不動産会社の流通能力に大きく左右されますが、総じて再建築可能な物件よりは低くなる傾向です。
しかし、京町家等に関して言えば再建築不可物件であっても八清でのリセールバリューは総じて高い傾向です。
ここは大いに京都の中古物件流通プラットフォームとしての八清という会社の力をおおいに頼りにしていただきたいところです。笑
▲八清は2000年代前半から独自のサイトを構築しており、京都の不動産情報を発信しております。特に京町家に関する情報は京都トップクラスの情報発信力。毎日のように新しい物件の情報を更新中。英語サイトもあり
▲弊社の流通データ・分析から、デザイン性や住みやすさに加えて、資産性の高い物件「sumor」を提案をさせていただいております
2.2火災リスクにどう対処するか⑦
再建築不可物件は全焼してしまうと再生が難しいという問題です。
合法的に新築や改築ができない限り、火災は木造の京町家にとって天敵です。
火災に対するリスクヘッジ方法は、火災の原因を断ち切ることと、再生した住宅にきちんと火災保険をかけることしかありません。
火災原因を少なくするという事については、①家屋内では煙草を控える②IHクッキングヒーターを採用しガス器具を設置しない➂木造で問題になることが多い電気火災が起こらないように分電盤や他の電気系統のメンテナンスをしっかりするなどの対策が重要です。
そして火災保険に関してですが、昨今は地震以外にも台風や大雨による風災・水災による自然災害が多いので、地域特性を考慮し、総合型火災保険でしっかりとカバーをすること、賃貸物件の場合は借家人に借家人賠償保険に入ってもらうことが重要です。。
路地奥のリノベーション物件の場合、上述の理由にて特に京町家リノベーションでは建物単価が高くなることが多く、通常の保険の金額範囲を超える可能性が強いのです。
超過保険的に保険として高い建物価値に対応してもらえるか代理店に相談されるのをお勧めします。
私感としては扱う不動産会社、建築会社の実績や信頼にもよりますが対応してもらえる可能性はあると考えております。
2.3建て替え、転用の可能性も残されている⑧⑨
再建築不可物件でも建替えができる可能性もあるという事をご紹介させてください。
京都市内の場合、建て替えに関して言うと、2つ方法があります。
一つは①『建築基準法43条但し書き道路』といって非道路を道路と自治体に認めてもらって、建築審査会を経て個別判断で建築を可能にする方法です。
そしてもう一つ建て替えができる制度があります。
長くなるのでここでは詳しく解説しませんが、②一団地申請を用いる方法です。
京都市はこの10年で旧市街地に関しての消防上の計画として路地を減らす方向から街の魅力を保全する考えから、路地も守りつつ防災を行うという方向にシフトしており、路地奥や細街路に面した物件でも建替えができる制度が充実してきております。
行政にて新築可能と判定され、建築確認が下りれば、融資も可能になります。
融資が可能になれば流通価値も高まるのです。
旅館や飲食店などの転用については大きなハードルがあるのは事実です。
ただし、ここも個別判断で可能になる条件が京都市にはあります。
ポイントは道路幅員や非道路の所有形態なのですが、ここでは詳しい解説は致しません。
上述の件も含め、流通の度合い・専門家の意見・ローンのご相談等、質問やご興味があれば弊社までぜひご相談ください。
3.まとめ
本稿では再建築不可物件の魅力と経済面の特徴について大きく9項目にまとめ解説を致しました。
リスクはありますが、適切に対処をして流通能力の高い会社に依頼することでリスクを減らし、その魅力と経済面のメリットを大きく享受していただきたいと考えております。
次回、第10回はさらに再建築不可を深堀し、価格特性について種類・立地による類型化をしつつ解説、第11回では再建築不可の価格特性を税務メリットとして活用していく方法について解説するつもりです。
ご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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