前回はシングルの間に資産性の高い不動産を買っておくべき、というテーマを取り上げました。
それでは今回は具体的にどんな不動産の資産性が高いか、という点についてお伝えしたいと思います。
不動産をマイホームとして購入しても、「一生涯住み続ける可能性がある」とは言い切れません。
家族構成が変わって住替える必要がある。
転勤などの理由で引っ越すことになる。
あるいは親の介護で実家に帰るといった可能性もあります。
その際、住宅ローンが残っていれば、「賃貸に出す」あるいは「売却する」ということも視野に入れておかなければなりません。
つまり貸しやすくて売りやすい物件というのもマイホーム購入には大切な要素なのです。
なぜ不動産にもブランドが大切なのか
総体的に不動産にも"ブランド"があると思っています。
特に女性に不動産購入のアドバイスをするとき、私はブランドバッグを買うときのようにブランド不動産を買っておくべきだと伝えています。
その理由は、人気のあるモノは再販性が高いからです。
エルメス、シャネル、ルイヴィトンなどのバッグは購入するときも高いですが、飽きたり、必要なくなった時に、買取業者に購入してもらったり、フリマで売れる金額も高く保たれています。
比較してドメスティックブランドの洋服やバッグは、再販するときは10円にも満たない額で取引されたり、価格がつかない場合があります。
元の値段もファストブランドに比べて、そんなに安くはありません。
その理由は"圧倒的な希少性"の違いです。
ブランドバッグは生産数が限られているので、欲しい人にとっては、どんなに高額でも中古になっても手に入れようとします。
ドメスティックブランドはたくさん生産されているので、同じようなものなら新しいモノを手に入れたいと思います。
またブランドには背景となるストーリーがあります。エルメスはもともとは馬具製作から始まったこと。
ルイ・ヴィトンは旅行鞄製作から始まったこと。
シャネルは創業者のココ・シャネルの存在がブランドのアイコンとなる歴史を持っていて、それがブランドのストーリーとしての価値につながっています。
単にモノを買うだけではなく、そのブランドが生まれた背景や歴史が一つの価値としてプラスαの魅力を生み出しているのです。
同じような現象は不動産にも起こります。
よく言われることですが、不動産には同じものが2つとありません。
工業製品のように次々に同じものが生産できるわけではありません。だからこそ、みんなが欲しいと思うものは価値が保たれ、それがブランドとして認知されていくことになります。
不動産におけるブランドとは
それでは不動産にとってのブランドは何かを考えてみたいと思います。
大まかに分けて立地、建物、管理体制の3つが考えられると思います。
私は中でも立地が一番重要だと思っています。
他の要素は後からの努力で改善できることもありますが、立地は自分の力だけでは変えることができません。
利便性や環境だけではなく、そこから見える景色が何か、どんな人が以前住んでいたか、といったことも希少性につながります。
建物に関しては、どんな建築家が建てたか、どんな企業が建てたか、どんな素材、どんな工法で建てられたかなどがブランドになるでしょう。
維持管理では、建物や住環境をよりよいレベルで保っているかが問われると思います。
日本は新築物件優先の考え方が今まで主流だったので、管理体制についてはあまり語られなかったと思いますが、今後、SDGSの考え方からも、建築後の建物をいかにいい状態で保存して生かしていくかは、問われるべき命題になると思います。
その1 立地の希少性というブランド
まず立地としてのブランドですが、現在の日本の首都としての東京はもちろんですが、「京都」の存在は世界的に知られています。
また海外の人が思い浮かべる歴史的な日本文化の象徴として「京都ブランド」の持つ独自性は絶大です。
また京都には、その世界的名声にこたえるべき規制がたくさんあります。
美しいまち並みを維持するために非常に厳しい規制が存在し、他の地域のように急激な開発で大規模なビルやマンションが次々と建つということはありません。
逆に景観を守るための建築規制は強化されているので、住宅の戸数が爆発的に増えるということもありません。
そのため、住宅の希少性が増し、資産価値は保たれます。
日本全体で見ると、今後日本の人口減少が進めば、賃貸ニーズの少ない地域では空室が増えて賃貸料が値下がりします。
また購入する場合にも価格の維持が難しくなるエリアが増えると思います。
その点から考えても、京都というブランドは強いのです。
1つだけデメリットがあるとすれば、希少性の高さから物件を見つけるのが難しく、手に入れにくいという点があります。
つまりそれだけ資産性が保持されるということです。
その2 建物という価値に対するブランド
次に建築物としてのブランドを考えてみます。
有名な建築家が設計した建物や大手企業が分譲したマンションなど、定着したファンがいる物件はブランドになりやすいです。
また最新の設備が供えられた建物はもちろん価値が高いです。固定資産税の評価も新しければ新しいほど高くなります。
ただ海外などでは築年数がたった建物をセンス良くリノベーションして、元の価格より高額で取引される例もあります。
新築一辺倒だった日本も、最近では中古市場の価値が見直されてきています。
なかでも古民家は、日本全国で脚光を浴びています。
特に京都の町家は日本国内だけではなく海外からも人気を集めています。
ところが都市計画法に基づく不燃化の推進によって、建て替えが頻繁に行われています。
現在では、魅力ある町家のまち並みも少なくなり、その希少性のため、町家の価値が上がっているように思えます。
おしゃれなカフェや雑貨屋、宿などに改修されて話題になっている建物を目にすることが多くなっています。
また古民家で使われている部材は、年月を経て趣が増し、その風情が味わいになっていることも多いです。
その独特の手仕事を感じさせる建物は、日本文化の象徴とも言うべき魅力があります。
工業化された現代の建材は、新築時が一番美しく、メンテナンスを怠ると外壁やサッシなども徐々に劣化していくことが避けられません。
古民家は無垢材が使われていたり、手仕事の残る欄間やガラスなどが使われていたり、経年変化を味方にして魅力を増し、それ自体がブランドとなっているのではないでしょうか。
その3 価値を維持する管理体制というブランド
一般的に希少価値の高いものは、将来的に貴重な資源となる可能性があります。
古伊万里や古備前が骨董的価値を加えて高額で取引されるように、大衆的な江戸時代の浮世絵が、海外でも高額で取引されるように、古民家でも骨董的価値が見直されていくのではないでしょうか。
そのためには適切な維持管理が必要になってきます。
物件の適切なメンテナンスは、建物の資産価値を維持することになり、それが1つのブランドとして認識されていくと思います。
不動産に関しては、維持管理の視点が今まで軽視されてきたように思います。
日本の場合、古くなれば壊して建て替えればいいと考えられてきました。
しかし古民家のように一度壊してしまえば同じものは手に入りません。
経年による風化が味わいになっているものは、その時間や歴史そのものが価値になると思います。
もちろん現代の生活に合うように、適切な改修やメンテナンスをする必要があります。
構造耐力上の問題がある物件には、状態に適した補強内容を考え、構造補強の工事を行う。
台所、浴室などの水回りを快適な仕様に整える。
断熱材や遮音シートを使って、住みやすい建物をつくる。
建物としての住心地を上げながら、時間が作り上げてきた価値を保持していくことが大切です。
そのバランスを考えながら、保全していくためには、知識や経験が欠かせません。
これからは、その維持管理がブランドとなって認められていくと思っています。
京都が世界に誇るブランドとなりえる理由
上記の3つの視点からも、京都の不動産はブランドとなりえると言えます。
それが国内のみならず海外の人にもアピールできる点ではないでしょうか。
私は個人的に「京都」をエルメスのようなブランドだと思っています。
流行もうまく取り入れながら、自分たちの個性は決して忘れません。
親子代々にわたって、一つのバッグが大切に引き継がれていくように歴史や背景を大切にしています。
不具合があればメンテナンスにも応じてくれます。
たしかに東京都心部のマンションも高額で取引され、ブランド化しています。ただ一般の人が購入できない価格になり、限られた人たちだけの市場になっています。
それに比べて京都では、まだ手に届きやすい価格の住まいが見つけられます。
愛着を持って受け継がれていくブランドとしての魅力が、京都の不動産や古民家には存在しているように思います。
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