大塀造の京町家

道路に面して塀を立て庭を介して建物がある「大塀造」の町家です。この形式は、かつて裕福な商人や医者などが住居専用に建てたものです。本物件の塀はやや高く、上部は聚楽塗、下部は縦板張り、屋根は目板瓦で仕上げられており、風格のある堂々とした外観が特徴です。

緑で彩るアプローチ

門をくぐると、ボタン、ツバキ、サザンカなど四季折々の花々が彩るアプローチ（露地庭）が広がります。門のすぐ後ろには「ギンモクセイ」が立ち、淡いオレンジ色の花を咲かせるキンモクセイの原種であるこの木は、花の色が「銀」を思わせる白に近い黄色をしています。大木に成長したギンモクセイは希少で、これからも大切に育ててほしい木の一つです。

通り庭と台所

アプローチを進むと、通り庭への入口が現れます。母屋は平家建てで、上部は吹き抜けになっており、北側には小屋裏収納が設けられています。板壁で仕切られた台所には、おくどさん（竈）、人研ぎの流し台、井戸、そしてつるべの滑車がそのまま残されており、当時の暮らしを想像させる趣があります。

客間と前庭

門の北側に前庭への入口があります。前庭には立派な松の木が植えられ、縁側前には手水鉢が設置され、飛び石が打たれており、和の趣を感じられる美しい庭園が広がります。前庭に面する6帖の客間には、竿縁天井、平書院の床の間、地袋・天袋付きの床脇といった、数寄屋風の設えが美しく残されています。当時、この客間はお客様をもてなすために作られたものと考えられます。

座敷と中庭

母屋の中央には中庭が設けられています。前庭とは異なる雰囲気を持つこの中庭には、雪見灯籠や竹が配されており、玄関・客間・座敷から四季折々の景色を楽しむことができます。母屋の奥にある6帖の座敷には、竿縁天井と1間の床の間があり、床の間には磨き丸太の床柱が使われていて、格式のある上品な和の意匠が感じられます。

離れと奥庭

一番奥にある離れ棟には、「昭和四年六月廿七日」と記された御幣が残され、建築年代が明らかであります。木造2階建てのこの離れは、1階に奥庭からたっぷり光が差し込む6帖の座敷と洋室の奥の間があり、2階には広い物置スペースがあります。座敷はL字型の縁側に囲まれており、奥庭に面したガラス戸も美しく残されています。

ゴロンボ

平家の母屋と2階建ての離れには、いずれも建てられた当時から家を支えてきた古い太鼓梁（ゴロンボ）が見られます。母屋の通り庭と台所の上部は吹き抜けとなっており、梁を露出させた勾配天井が特徴的です。また、離れの2階にも小屋裏にゴロンボが見られ、長い年月を経た素材が持つ圧倒的な存在感を感じさせます。