甦る路地 再建築不可の
建物を新築住宅に!
2022
Nov.
前道1.8mしかない袋地にある築99年の
荒廃した連棟長屋を解体し、
新築に挑戦したプロジェクトです。
京都には都心4区だけで約3,000か所の路地があり、その路地に建ち並ぶ家の多くが建築基準法の道路に2m以上接道していない再建築不可の家です。空き家となったり、老朽化が進み危険な家があるなど、安心して暮らせるとは言い難い路地もあり、路地の再生が京都のまちづくりにおける課題の1つとなっています。
本物件は再建築できない路地奥にある荒廃した空き家でしたが、連担建築物設計制度を利用することで再建築可能となり、新しい建物を建てることができました。
連担建築物設計制度とは?
建築しようとする敷地に、すでに建物が建っている別の敷地を含めてひとつの敷地とみなし各建築物の位置及び構造が安全上、防火上、衛生上支障ないと特定行政庁が認めるものについては、複数建築物が同一敷地内にあるものとみなして、建築規制を適用されます。
STORYものがたり
Prologue路地奥の再建築不可物件。
京都市内を縦断する鴨川は出町柳で賀茂川と高野川が合流し、南へと流れて淀川になります。鴨川デルタと呼ばれる合流ポイントの北側、賀茂川の葵橋と出雲路橋の間の土手に面した場所が今回の物件です。
八清が数年前から所有していた物件で、賃貸居住者がおられましたが、その方が退居され空き家となり、どのような活用をするべきか検討することになりました。というのも、この物件はボロボロの状態で、リノベーションするには少し難しい間取りでしたが、ここは路地の奥にあり再建築不可。解体して新築を建てることはできない物件だったのです。
- 解体前の本物件
Chapter 01連担建築物設計制度に
チャレンジしてみよう!
「連担建築物設計制度を使ってみてはどうか?」と八清の会長 西村孝平が発案します。連担建築物設計制度とは上記説明の通り、路地内の通路に面する家の所有者に承諾をもらい、一つの敷地として建築規制を緩和し建築許可を得る制度です。ここでは本物件の他に2軒の家があり、どちらも所有者が住んでおられたので、快諾してもらうことができました。この3軒で管理組合を立ち上げ、認定区域内での新築や増改築、土地利用の変更などは事前に組合内で確認し京都市長の認定を受けなければいけないことになります。
Chapter 02様々なタスクが立ちはだかる
連担建築物設計制度を申請するには3軒の土地の境界を確定しなければならず、確定していないところがあったので、今回の件では測量などに時間を要しました。路地の入口だけではない避難経路の確保も申請には重要な項目となります。賀茂川への避難経路を確保することで認可を得ることができました。他にも路地の整備や防災設備の設置、組合の管理協定を結ぶことなど、連担建築物設計制度を利用するに当たり様々なタスクをクリアしていく必要があります。また賀茂川の景観を守る別の規制などもあり、それらもクリアしていかなければいけませんでした。
- 2022年4月桜のころ工事中
Chapter 032022年8月完成!!
工事中も資材の入手が困難になり工事がストップする事態が発生。建築申請から工事中も様々なタスクをクリアし、「連担建築物設計制度を利用しよう!」と検討はじめてから約3年半、ようやく竣工へとこぎつけました。苦労はありましたが、安心して暮らせる路地に整備ができたうえ、土地が再建築可能になるので再販売しやすく価値が上がるという大きなメリットがあります。そして、2階の小上がりから望む賀茂川の眺望がすばらしい家が出来上がりました。
- 社内の公募で「あおい路地」
と命名しました。
Epilogueこれからのまちづくりの前例に
プロデュースを担当した、八清 建築ディレクション部 鈴木に話を聞きました。
「一般的に連担建築物設計制度で一番難しいとされている点が所有者の合意形成をとることです。今回は皆様にご理解いただき同意をえることができました。境界確定で時間を要しましたが、設計士の成田さんに協力いただき連担建築物設計制度の申請を行いました。ボロボロだった空き家がきれいに新築でき、路地内の植栽を整備できた他、路地の入口とは別の賀茂川への避難経路も確保できたことで、八清が掲げる『安心、安全、快適』が遵守できたと思います。今後このケースをモデルに、京都らしい文化的なまち並みは残しながらも多くの路地が再生され、安心して暮らせる京都のまちへと発展していくことを願っています。」
- 設計:Bee design factory 成田 和嗣(右)
- プロデュース:株式会社八清 鈴木 章雄(中)
- 施工:株式会社フォレストウッド 島岡 佳弘(左)