chapter05はじまりは、市役所と協働したケーススタディ

2024年1月に完成した「中堂寺前田町路地再生長屋プロジェクト」。
これは、袋路を子育て支援住環境にしていくことができないか?という大きな夢を描き、これを実現することを目指して進めてきました。

思い起こせば、始まりは9年前の2014年12月。
街区内の空き家が危険家屋と見なされ、この家屋の所有者と京都市が話し合いをしたことから始まります。
ここは20年以上前に火災があり、焼け落ちた空き地と焼け跡が残る空き家が残存したままの場所でした。
敷地は幅員1.6m程度の通路に面している袋路の敷地。
現在の制度では改修や新築はできませんでした。

そこで京都市から「京都市地域の空き家相談員」として登録している八清の西村会長が派遣され、相談に乗る中で「老朽木造建築物除却事業」を活用することとし、建物が除却されました。
この一連の経過を通じて、今回の街区が京都市および専門家の間で認識されることになったのです。

「このような場所は、京都市には実は多くあるのではないか」
「不幸な火災があったが、空き地ができることで2本の袋路が空間的に繋がった」
「避難の安全を確保する2方向避難を確保する可能性があるのでは」

ということから、京都市都市計画局まち再生・創造推進室が路地再生の事業に関するケーススタディを開始され、建築審査会に諮りながら再生の可能性の検討をしている中で、都市居住推進研究会(以下「都住研」)に共同研究の提案がありました。
これが2016年。

共同研究では、2方向避難を確保して、戸建て住宅を3戸建設する試案を作成、これを実現する展開を検討しました。

一方、この検討する中で「敷地条件だけを鑑みて郊外に建設するような住宅ではなく、この立地、そして京都市内に求められる住宅を計画することが重要ではないか」という問題提起がありました。

そこで都住研では、この問題意識を深めることとし、多様な展開が考えられる中「路地空間は子育て・子育ちの空間としての可能性があるのではないか」という仮説を設定、これを研究テーマとして深めることとしました。
さらに敷地の個別解を検討するだけでなく、京都に多く存在する同様な袋路での可能性も視野に入れながら、国土交通省のモデル事業(詳細はChapter6へ)として、中堂寺前田町の実際の敷地を対象に具体的な研究をすることとしました。

この取組と並行して、都住研では、発足20年にあたり、現代的観点に立った路地のまちづくりについての提言を行いました(参照 外部リンク)open_in_new

提言提出の様子(2016.9.7)

提言では、路地を生かしたまちづくりの推進を喚起するために独自目線で京都の魅力的な路地の選定をした「路地21選」や、路地の関係者が自ら路地の未来を考え、選び、実践する手助けとなるツール「路地診断シート」「路地カルテ」「展開検討シート」の開発を行い、路地をいかしたまちづくりのメニューとプロセスを可視化し、2016年9月に提言としてまとめ京都市長に提出しました。

路地21選 提供:都市居住推進研究会

都市居住推進研究会 事務局/京都光華女子大学 准教授/スーク創生事務所代表大島 祥子

京都のまちづくりの縁の下を担いたいと日々研鑽しています。
一級建築士/技術士(建設部門)/宅地建物取引士/博士(学術)