chapter08路地事業の事業性はどうなの?
住まい環境整備モデル事業について
路地は元々建築基準法が施行される以前からある細街路です。
路地は大きく分けて、通り抜けできる路地と袋路の路地があります。
八清では京町家を扱うようになって、町家の路地の流通が拡大するようにいろいろと試行錯誤してきましたが、一番影響力があったのは京町家ローンがつくようになった事です。
袋路の京町家は今まで建築基準法上の非道路に接道する建物(再建築不可)であったためローンがつかなかったので現金でしか購入することしかできませんでした。
京都には袋路の京町家がたくさん点在していたので、何とかローン付けができるように粘り強く長期にわたり金融機関を説得して、15年超しにやっと京町家ローンが利用出来るようになりました。
お陰で都心の京町家を子育て世代にも購入できようになった事は非常にうれしく思います。
路地の中には解体されて更地のまま残されている袋路が市内に散見されますが、一旦解体すると建て替えができません。
そのような袋路の土地に新築住宅をいかに合法的に建てられるかが問題になります。
八清では最近、建築基準法第86条の連坦建築設計制度による新築住宅を2か所で建てさせていただきました。
連坦建築設計制度(以下連坦)で一番難しいのは2方向避難通路の確保です。
京つむ木は4軒の伝統構法の新築住宅を建てましたが袋路のため避難通路の確保が問題でした。
たまたま北側に路地があり2戸の住宅が建っていましたが、防災用の避難戸の設置を快く了解していただき、お互いの避難戸として利用することで連坦の許可が取れるようになりました。
もう一つの連坦は鴨川の河川敷に面した3軒路地の1軒を連坦を利用して建て替えましたが、問題の避難通路は立地に恵まれ裏の河川敷を利用できたため簡単に許可を取ることができました。
連坦以外の方法で建築している現場が下京区にあります。
火事により建物が3戸消失して、2つの袋路が20数年間更地のまま放置されていました。
残った3戸も消失は免れましたが、居住者がいなくなった空き家で放置されたままでした。
幅員が1.6mぐらいしかないため建て替えはできない非道路です。
今回は連坦でも条件になった2方向避難と幅員の拡幅(3m)、建物の耐火性能アップ(準耐火構造)、非常ベルの設置で43条2項2号道路の許可を京都市の建築審査会に願い出て許可を取り、2024年1月完成となりました。
以上が袋路の新築建築のアプローチの方法です。
袋路ではなく通り抜けの路地の多くは、道路幅員が1.8m以下であり2項道路に認められていない非道路です。
建築基準法第42条第2項道路でない非道路を建築基準法第42条第6項の申請の許可を京都市建築審査会に申し出て許可を取ることができます。
道路幅員と接道の長さにもよりますが、うまく許可が取れれば再建築が可能な土地に生まれ変わります。
細街路、特に袋路の事業性については2方向避難をいかに確保できるか、また、複数の事業物件があることで事業者の仕事が有利に働くことができる案件を提供することが最も事業性に近づく条件だと思われます。
まずはいろいろな案件から可能性の高い路地を探しだし、粘り強い交渉でもって2方向避難を確保することから始めれば、事業性の展開が見えてくるのではないでしょうか。
株式会社八清 取締役会長/都市居住推進研究会西村 孝平
趣味は月に100キロ走るジョギングで、会社の行き帰りなど片道5キロは日常茶飯事。不動産業30年強!文化財級の経験値は、問題を抱える住宅や路地の悩みを解決してきた不動産の超エキスパート!