chapter11路地TVで色々発信してみた。つながってみた

取組の目的

2020年、私たちは新型コロナウイルスの感染拡大により、様々な局面で対面による取組を自粛せざるを得なくなりました。
そして多くの場面でオンラインツールを活用しました。
オンラインツールはとても便利なものですが「仕方がないけど、オンラインでやりましょうか」というように、やむなくの代替手段として使われることが多かった中、もっとポジティブな使い方ができないだろうか、と考えていました。

今回の中堂寺前田町での路地再生の取組をしている中で、全国の路地を対象に活動されている方々との交流を通じて路地再生のムーブメントをつくりたいと京都市の西陣地区で活動をされているアニュアルギャラリーさんと相談している折、今回の「路地TV」のアイデアが生まれました。
「仕方なしにオンライン」ではなく、テレビ番組のように同時にたくさんの路地のコンテンツを配信し、テレビチャンネルをザッピングするように視聴者が閲覧するコンテンツを選ぶことができる、新しいメディアとしての実験ができないか、と。

路地tv2021チラシ 出典:都市居住推進研究会

本取組は、映像を用いて、路地が持つ多様性と可能性を広く発信し、全国の参加者、視聴者と共に現代社会における理解を深めることにより、身近に存在する路地の再評価を促すとともに、路地の魅力を活かしたまちづくりの推進を図ることを目的に企画・実施しました。

媒体としてオンラインを通じたライブ配信や録画編集コンテンツそれぞれを番組とし、それらをテーマ別に複数のチャンネルに分類、構成し「放送」しました。

路地tv2021番組例 出典:都市居住推進研究会
路地tv2021番組表 出典:都市居住推進研究会

初開催となる今回は京都市内、とりわけ職住が一体となった西陣の路地を中心にひとやまちの姿、活動を紹介する他、日本各地域、世界各都市の路地の活動等と一体的な発信を通じて、各地の多様な主体が交流し、今後の継続的な連携や協働の契機となることを目指しました。

取組の概要

路地tv2021当日の様子 出典:都市居住推進研究会
主催:
特定非営利活動法人 ANEWAL Gallery(アニュアルギャラリー)、都市居住推進研究会、京都市(プロジェクト推進室)
開催日時:
2021年1月16日(土)10:00~17:00
番組数:
生放送、収録・編集コンテンツを合わせて51
アーカイブサイトopen_in_new(外部リンク)

取組の成果

「路地」というキーワードでの交流・連携の契機となった

  1. 都住研、アニュアルギャラリーそれぞれと繋がりのある全国の活動団体や個人に映像の提供やパネリストでの参加を得て、番組を媒体に多様な交流が得られた。
  2. 生配信の番組では、参加者を公募し、広く開いた運営をした。
  3. 全国各地の路地及び路地を取り巻く活動を共有する中で、路地の捉え方など地域性を色濃く反映した多様性があることを確認した。

多様なコンテンツを発信できた

  1. 全国各地だけでなく、韓国からも映像が寄せられ、路地の多様性を共有することができた。
  2. 世界の路地の写真をスライドショーとして整理・発信することで、魅力的な路地を継承する必要性は世界中の都市で展開されていることを可視化した。
  3. トークセッション、まち案内、事例紹介、路地訪問、講義など多様な形式で番組を編成した。
  4. 民間の取組だけでなく、京都市とも連携し行政施策の発信を行った。

映像として蓄積

  1. 当日配信した内容は、すべてアーカイブ化されて現在でも視聴可能とした。

以上のような目的・手段で行った「路地TV」ですが、機材の設営や映像の配信はともに取り組んだアニュアルギャラリーさんに頼りっぱなしでした。

キックオフの番組である「全国路地まちプレゼン&トークセッション」では、オンラインで神戸の駒ヶ林、福岡市の博多、東京都の向島、滋賀県の米原、徳島県の牟岐町、そして京都の方々とzoomでお話をしながらそれをUstreamで生配信する、というものでした。
これに一般公募の方もオンラインで参加する、といういきなりアクロバティックな展開だったのですが、アニュアルギャラリーさんの技術のバックアップと準備がなければできなかったでしょう。
この時に感じたのは、オンラインだからこそ移動時間と場所を問わない、これまでにない交流・発信の形ができるということです。

その後、シンポジウムや学習会などはオンライン参加が可能なものが増え、従来の東京一極集中が緩和され、移動時間とコストに拘束されない情報の共有の場が広がっていきました。
同時に複数チャンネルを提供する「路地TV」のようなアクロバティックなものは見かけませんが(笑)。

映像の作成と編集は「発信したい!」という思いばかりが先走って技術がついてこないようなものも少なくありませんでしたが(都住研が担当したものは、です)、限られた時間で怒濤のように進めた番組コンテンツづくりで、少しは技術が向上したでしょうか?
ぜひ、アーカイブサイトをご覧いただいて、ご批評を頂戴したいです。

都市居住推進研究会 事務局/京都光華女子大学 准教授/スーク創生事務所代表大島 祥子

京都のまちづくりの縁の下を担いたいと日々研鑽しています。
一級建築士/技術士(建設部門)/宅地建物取引士/博士(学術)