不動産業に従事し始めて10年近くが経とうとしております。
人が生きるのに必要な基本要素として「衣・食・住」があげられます。
人の生活のベースに携わることが魅力と思いこの業界に飛び込んだのがついこの間のように感じます。
この度の研修では以前テレビで長崎のとあるレストランオーナーがインタビューを受けている番組があり、そのレストランに野菜を卸している農家の方の野菜の育成方法が印象に残り、今回お邪魔して農業体験と野菜を作るうえでどういったことを心掛けているか伺うことにしました。
関西から長崎までは新幹線で移動しました。
先日長崎まで新幹線が開通したということを聞いていたため、便利になったのかと思っていたところ博多から2回も乗り換えることに...。
西九州新幹線をめぐっては自治体間で意見が分かれているようで直通というわけにはいきませんでした。
お邪魔させていただいた農家の方は長崎県の島原半島にお住まいです。
雲仙普賢岳と有明海に挟まれたこの地域。
山も海もこんなに近くにある景色に思わずため息が出ました。
農業体験!?
今回の研修のメインである農業体験をさせていただく畑を見せてもらおうと思ったところ、タネについて質問を受けました。
「F1種と固定種は知っていますか」と。
わかりませんと言うより早く「まずはこの本を読んで欲しい」と『タネが危ない』(野口勲著2011年日本経済新聞出版社)という本を渡されました。
思ったのと違う・・・。
農業の一端を体験させていただき食べ物をつくるのは大変、生産者の方に感謝して等が今回の研修の着地点かなと少々高を括っておりました。
理論から入るのか!?と驚かされました。
本書の中にはメンデルの法則や優勢劣勢(今の教科書では顕性・潜性)遺伝子の話など高校の生物の授業を思い出しました。
固定種というのは、「固定された形質が親から子へ受け継がれる種」のことです。(引用 野口種苗研究所)
育つ速度もまばらで、完成形が不揃いであるデメリットがありますが、自家採種可能という点と味が濃くおいしい(書き手の感想含む)というメリットがあります。
F1種は一代交雑した雑種です。
雑種強制という力が働き生産性が高く均質に育てられる大きなメリットがあります。
ただ現在このF1種の多くの種子が雄性不稔というおしべが生成されない性質を受け継いだ種子を用いて受粉を行っています。
雄性不稔は動物に当てはめると男性原因の不妊症であり、こういった野菜は安全なのだろうかと提起されています。
この雄性不稔の種については議論が分かれる為、紹介させていただいた本も含め興味のある方は一度調べてみてください。
理論が終わったところで実際に畑にお邪魔して育成中のお野菜を見せてもらうことになりました。
畑の案内を農家の方としてくれたのはこちらの猫。
畑を見学中に通り道を教えてくれるように前を歩いてくれました。
目線はいただけませんでした...。
こちらの畑では「自然のままに育てる」ことを信条にしております。
季節に応じて蒔く種を選び、雨が降ったタイミングや土の状態をみて種を蒔くそうです。
驚いたことに水もやらず草抜きもしないで育てているそうです。
一見どこに野菜があるか判別しづらいですが、よく見ると人参の葉があったり、大根の葉があったりとところどころに野菜が育っていました。
普段見かける野菜畑との違いに驚きの連続でした。
育成している野菜を収穫させてもらうことにしました。
まずは人参。
続いて聖護院大根。
京野菜にここで出会えるとは思いませんでした。
続いて赤かぶ
収穫させていただいた野菜をまとめました。
先にも書いたとおり固定種は発芽も生育スピードもそれぞれの種ごとに違い、収穫の際の大きさもまばらです。
よく見かける野菜とはだいぶ違うため失礼ながらおいしいのかな?等思ってしまいました。
実際に滞在中にこの畑でとれた野菜をいただきましたが、味が濃くておいしい!
テレビ番組で紹介されていたレストランのオーナーのお話でも野菜の作り方への配慮もさることながら美味しいと言っていたことを思い出しました。
また、不揃いについてですが、人間においてもそれぞれ性格も体格も違うのだから野菜とて個体差があって当然ということに改めて気づかされました。
読んだ本にも記載がありましたが、どうしても流通ベースに乗せようと思うと形や成長速度が一定であることが求められます。
ただ私たちが普段口にする、体を構成する食べ物についてどういった選択が正しいのか立ち止まって考える必要があるなと感じました。
消費者として意識して無理のない範囲でよいものを選ぶことから始めようと思いました。
雲仙普賢岳噴火の影響
島原半島と言えば雲仙普賢岳の噴火による被害が記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。
今回農業体験をさせていただいた農家の方のご好意で雲仙普賢岳の噴火による被害の様子を見て回りました。
30年近くたった今でも噴火による被害の様子を後世に伝えるべく各所に当時の建物が残っておりました。
土石流で窓ガラスが割れた小学校の様子や海岸沿いの被害住戸の保存公園を見てきました。
海岸沿いの保存公園では2階建ての家屋の屋根が少し顔を出しているだけでほとんど埋まってしまっている様子を目の当たりにしました。
自然災害に対しての人間の無力さを感じる光景でした。
一方で噴火によるよって形成された土壌は水はけもよく農業用地として広く活用されています。
また、湧き水や温泉なども噴火によってできたりもします。
そこに住む人に恵みももたらします。
自然の厳しさと恵みの例は他にも枚挙にいとまはないものの現地に足を運んだからこそ体感できたものかと思います。
今回は被害についての見学がメインになりましたが、次に来た時には「恵み」のほうである温泉に入りに行きたいところです。
終わりに
今回研修を通して人の生活の根源に関わるテーマを学べたなと思いました。
特に今回お世話になった農家の方の食に関する考え方にははっとさせられました。
どうしても収益を上げようと思うと効率という点は欠かせない世の中になってきております。
ただ、いいものをつくろうとするときにやはり手間暇を惜しまず取り組むこと、そこに哲学があることが大事だなと痛感しました。
我々の仕事においても同様のことが言えるかと思います。
効率の行きつく先は均質化や平準化、つまり面白味にかけるということ。
日常に忙殺される中で立ち止まって考える貴重な時間になりました。
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八清社員が日本各地へ興味が赴くままでかけ、見て、聞いて、普段の業務では得られない知見を広めてきましたのでレポートします。
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