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前回の出張先で活火山による自然の厳しさと恵について少し書いていたのもあり、研修先としてどこか温泉に行こうと漠然と考えておりました。

そこで近場にありながら一度も訪れたことのない城崎温泉に行くことにしましました。

昨年度の記事

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島原の自然に触れ、農業を体験する【八清の自由研究2023 その22】

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城崎まで

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城崎温泉駅

城崎温泉と聞くと真っ先に白樺派の作家志賀直哉の『城崎にて』が頭に浮かびました。

山手線に轢かれて九死に一生を得た主人公が療養の為に城崎温泉を訪ねるお話で描写の鋭さが評価されている作品です。

そのようなことを思い浮かべながら調べると「本と温泉」という取り組みがあり、城崎でしか買えない本があることが分かりました。

それも有名著者の方々が書かれているとのことで俄然行かねばと思い城崎を訪れました。

城崎への行程は京都駅から特急が出ており、乗ってしまえば迷うことなくたどり着くことができる為、移動慣れしていない私としてはありがたい限りでした。

2時間半ほど特急車両に揺られながら、ひたすらメール等の連絡をしておりました。

出張中につき一秒たりとも気を抜けません!

城崎駅に着くとそこは観光名所としての賑わいが広がっておりました。

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広場からの撮影

旅館『三國屋』のおもてなし

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部屋の玄関

今回お邪魔した旅館は三國屋です。

江戸時代末期ごろからの開業という歴史あるお宿でして、「心の宿」をモットーにされています。

三國屋は22年から数年かけて家族向けのお宿としてシフトチェンジをされたそうで、今回の旅ではその心配りを随所に感じました。

使われているポットやお茶一つとっても素晴らしいものが揃っており、家族で「これはいい!!」と連呼しておりました。

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各種お茶

また、子どもと気兼ねなく入ることができる貸切風呂も充実している等、子ども連れには至れり尽くせりでした。

室内の設えも凝っており床の意匠や広々とした和室等、とても贅沢なお部屋でした。

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和室 ※写真左手に洋間がありベッドの用意がありました

三國屋

Webページ

城崎温泉

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外湯巡りをする観光客

さて一息ついたところで温泉に行こうと外湯めぐりを開始しました。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、城崎には外湯が7カ所(来訪時1つ休館)あり、各宿には温泉がありません。

温泉はまち全体で共有しております。

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水面に映える柳(昼)

「まち全体が一軒の宿」として共存共栄してきた歴史があるようです。

昨今、人より多くのもの(お金や資源、市場シェア等)をいかにして占有できるかがビジネスにおいても重要とされる中、共同体意識の高さを強みにしている姿をみました。

奪い合う方法では先がないことを大分前から気づいて取り組んでいる姿に頭が下がる思いでした。

そんなことを思いながら各温泉にお邪魔しました。

外湯にはそれぞれコンセプトがあり、せっかくだからすべて回ろうと思い休館中の外湯以外に行ってきました。

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御所の湯

その中でも、滝を見ながら入浴できる御所の湯は圧巻で、いつまでも見ながら入りたいなと思ったのですが、湯が熱くのぼせてしまい、どうしても短時間しか入れないため昼と夜と2回行きました。

川を中心に木造建築が立ち並ぶ光景は見事で川辺の柳と道行く人の浴衣姿が観光地の雰囲気を醸しておりました。

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3階建木造建築

皆オシャレで浴衣を着るのではなく、自然と浴衣が似合う雰囲気はこの城崎というまちが醸成しているのだなと改めて思いました。

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水面に映える柳(夜)

一方で地元の方が仕事終わりに外湯に寄って会話している姿を見かけました。

外湯は温泉には違いないのですが、どこか地元の銭湯を思わせる雰囲気もあり、ここで生活を営む方の日常を垣間見ることが出来ました。

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海の幸

外湯巡りから戻り旅館では地元の食材をふんだんに使った料理が振る舞われました。

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蟹をはじめとした海の幸、但馬牛等どれもおいしくいただきました。

本と温泉

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城崎文芸館エントランス

2013年は志賀直哉が城崎に来場して100周年となる節目であり、その記念事業として「本と温泉」という城崎の文化見直し、次の100年を見据えて取り組むレーベルを立ち上げられました。

この城崎に来ないと買えない本を出版しております。(コロナ禍においては一時的に通信販売もしていた)

この取り組みに賛同し、万城目学や湊かなえ等が作品を書き下ろしています。

まち興しの取り組みとして優位性のある温泉と何かを掛け合わせることで違った切り口で世間にアプローチをかけているなと思いました。

我々八清としては「不動産」と何かを掛け合わせ、地域を盛り立てていくことを改めて掲げたところです。

得意分野を軸足に、様々なものを掛け合わせていく姿勢は参考にできる部分が多いと思いました。

今後もこの城崎の取り組みを追っていこうと思いました。

そこでせっかくここまで来たので本を購入すべく、城崎文芸館を訪問しました。

1階では城崎温泉の始まりや1925年に発生した北但大震災とそこからの復興等の展示がありました。

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2階展示

2階には志賀直哉を中心とした白樺派の作家の展示がありました。

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1階ロビー 物販コーナー

そして1階のロビーには物販コーナーがあり、そこに本と温泉レーベルの各種本が販売されており一式購入しました。

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購入した書籍

これを書いている時点ではまだ読み終わっておりませんが、これから読むのが楽しみです。

本と温泉

Webページ

城崎文芸館

Webページ

まとめ 「競争」ではなく「共創」

城崎温泉を訪れて気づいたことは各旅館が競争をしていないように見えたことです。

もちろんお商売なので繁盛させるために知恵を絞っていかなければならないのですが、それをまち全体で行っているところが魅力的でした。

その一つは先にも上げましたが、源泉を町所有とした点です。

もともと敷地内に源泉を有していた宿がいくつかあったようですが、まち全体の繁栄を優先しその権利を放棄したエピソードがありました(『建築と温泉』2024年2月)。

「持続可能な開発」という言葉はここかしこで耳にし、言葉のインフレが起こっている気がします。

そういった言葉だけでなく実際の取り組みを見聞きする中で、限られたパイを取り合うのではなく、共有し新たな価値を共に創る姿勢が求められていると改めて強く感じました。

京都というまちが舞台にはなりますが、当社においても同様のことが言えます。

そういった輪を広げていくことが地域全体として発展していく必要条件だと思います。

今回の研修で感じたこと気づいたことを念頭に置いて京都でも取り組んでいこうと思います。