鉄馬の京町家(2022年)
この建物の建築当時(1924年頃)は、国産バイクの製造が始まる前で、
ハーレー・ダビッドソンやインディアン・モトサイクル、トライアンフなど
海外からの輸入二輪車のみが流通していました。
それは華族や富豪などの一部特権階級のためだけの高額な趣味商品として、
「鉄馬(てつうま)」と呼ばれたそうです。
輸入元のアメリカでバイク全般を指す愛称である“アイアンホース”を訳したものです。
このような時代背景を持つ京町家の土間に、愛車を迎え入れるなんて、
鉄馬という呼び名に愛着が増しませんか。
「鉄馬の京町家」には、玄関横に約5.5帖の土間空間を設けています。
インナーガレージとして大型バイクも納める事ができ、
メンテナンス空間も確保できる広さです。
ガレージとして修理設備を完備しているわけではありませんが、
そこにバイクがあるだけで玄関からも、LDKからも絵になる空間になります。
ガレージ扉を開けると土間は前庭と繋がり、
さらにフレキシブルに使える多目的空間になります。
外と内をゆるく繋げることで、数値面積では測れない一体感を演出しました。
築90年以上経過した京町家は、老朽化にともない歪みや傾きがあり、
設計士さんや大工さんと綿密な打ち合わせを行い丁寧に修繕を行いました。
歴史を感じる梁や柱と便利で快適な設備の融合であるフルリノベーションは、
バイクではレストアという言葉に置き換えられます。
リターンライダーが増え、ネオクラッシック、旧車バイクの高騰などで
バイク業界にも注目が高まっている中、
鉄馬オーナーの居場所がこのレストアされた京町家にあったら良いなと感じています。
外出自粛やテレワークの増加にともない、
新しい生活様式に寄り添った住まいが求められるようになりました。
おうち時間を楽しめる、少しだけ尖ったこだわりの京町家がつくりたい。
鉄馬の京町家は、そんな「バイク愛好家」への想いから生まれました。
暮らし企画部:柳内