設計物語
大黒さん
2010.04.05打合せ①
打合せが行われたのは賀茂川沿いに桜が咲く4月の初め。現地へ行くと、前回の打合せで話に出ていた倉庫にあった大黒さん(大黒柱)がやって来ていました。
京町家(それも大型のもの)の大黒柱に使われていただけあって、つやつやと黒光りする太い部材は、横たわっているだけでも貫禄があります。
後日話を聞くと、大黒柱の搬入は玄関からでは出来なかったため、1階和室の庭側の窓を通して建物の中まで入れたそう。約7~8mの長さの大きな材です。
年輪を数えると、少なく見ても50年以上は数えられます。以前に大黒柱として使用されていた町家は戦前の建物になるので、建てられてから60年以上は経過していると考えられる・・・そうなると、この材の歴史は100年以上ということになって・・・、気の遠くなる話です。
これだけ年月が経過していても歪みもなく、また新しい場所で使えます。
それは昔の職人さんの技術の成せる技。この大黒柱が作られたのは、今のような機械もあまり無い時代です。
年月が経過しても歪みのないように製材するのは、よほど腕の良い職人さんの仕事だったのだろうということが想像されますね。
通し柱の撤去
2010.4.05打合せ②
搬入されてきた大黒柱は、今は白アリの腐食で傷んでいる通し柱を抜いてしまい、その部分に入れることになります。続いては、傷んでいる通し柱の撤去の様子です。
撤去する通し柱は左側写真で示したもの。1階は既存の玄関ホールの角にあたる柱です。
2階では廊下の床の載っている部分になり、2階の床梁との接合部がしっかりと組まれています。
まずは大胆に2階の床よりも上の部分に切れ目を入れて、上部から取り外します。(写真①)
次は2階の床よりも下の部分に切れ目を入れます。(写真②)
下の部分が外されて、残りは2階の床梁と繋がっている部分。(写真③)
この部分には接合部に上手に切れ目を入れて、材が完全に取り外されました。(写真④)
撤去されるまで、ものの30分。この日は3人の大工さんが現場に居られ、声を掛け合いながら
テキパキと作業を進めておられました。
材の切欠き
2010.4.05打合せ③
続いては、大黒柱に接合部の切欠きを付けていきます。接合部は既存の建物にぴったりとはまるように、材を切欠いていかなければなりません。
※切欠き=材と材を接合させるために、材の一部を切り取って出来る穴・溝などの部分。
2階の通し柱を外した部分をその場で測り、大黒柱の方には測った材に合わせてしるしを付け、ノミや木槌などの大工道具で大黒柱を削っていきます。この辺は大工さんの職人技。
カンカンと良い音を響かせながら、 切欠きを削っていく作業もどんどん進んでいきます。
今日の打ち合わせの時間内では、その後大黒さんがはまる様子までは撮影できませんでしたが、次回の打合せ時には大黒さんが次の新しい場所で、家を支えている様子が見られるはずです。