今回訪問したのは、伏見酒蔵地区から少し北に上がったところの大型京町家。
ハチセがこれまで改修してきた中でも最大級の町家でした。改装中には天井裏から「文政二歳」という棟札が!実に190年も前の建物だったのです。
そんな歴史を感じるスケールの大きな町家で暮らして半年になるU様にお話をお伺いしました。
― 実際に暮されてみて感じたことは?
U様(奥さま):寒いですね。本当に。前のお家も寒かったのですが、みんなが一つの部屋に集まりそれなりに暖かかった。これだけのリビングの大空間ですし、部屋も広いから仕方ないですけど。このお家に引っ越してきたのは12月も終わり頃でしたので、余計に寒く感じたのだと思います。逆に2階の子供たちの部屋はとても暖かいですよ。
八清 施工担当者:そうですか・・・吹き抜けにする難しいところです。日本のお家は夏向けの建物なので、夏をいかに過ごしやすくするかを考えて造られています。 冬は我慢・・・といったところでしょうか。でも、今は両方快適に過ごせるような感じを求められるのは当然ですけど。今回はリビングの寒さ対策としてペレットストーブを入れられましたがいかがですか?
U様(ご主人):正直、すぐに暖まらないですね。スイッチをいれてから完全に暖まるまで1~2時間ぐらい・・・。外の温度にもよりますが。やはりどうしても足元が冷える。だから一緒に石油ファンヒーターも動かしています。しかも一番暖かい特等席は愛犬に占領されてますし。でも暖まってきたら、2階も含めて全体が暖かくなりますね。
それでもやっぱりこの吹き抜けは良いですね。階段も気にいっています。解放感がありますし、釘で打ったようなものではなく、はめ込みのような感じですし。吹き抜けの感じと良く合ってますね。
八清 施工担当者:そうでしたね。階段については色々考えましたね。 当初はアイアン(鉄)と組み合わせるようなことも出てましたが、最終的に、木製で圧迫感の無いようにとのことでしたので、大工さん達と色々考えて、込栓で止めるというこの形になり、結果的に良かったです。
U様(ご主人):あと寒いと言えば、蔵。蔵に入るときは着こんで、外出るときと同じ格好で入らないといけないぐらい。 そのかわり夏はとても涼しそうですし、それは楽しみですね。
U様(奥さま):確かに蔵も寒いです。蔵は、1階が主人の趣味の部屋。本や雑誌がたくさん詰まってます。 そして2階は私が占領しています。趣味の手芸に没頭する部屋になっています。 実は前の家から大切にしていたダイニングテーブルを置いていまして。 まだ寒いので中でじっくりと・・・とはいかないのですが、蔵もこれからが楽しみな部分ですね。
八清 施工担当者:初めは収納として考えておられましたが、設計士さんから生活空間にしては?と提案があり、このような形になりましたね。とても楽しんでおられるご様子に僕も嬉しいです。そういえば蔵は工事の時、夏の時分は本当に涼しかったですからね。
U様(奥さま):夏は本当に楽しみです!夏になったら是非来てみてくださいね。
八清 施工担当者:それは良いですね。是非お話聞かせてください!!
U様(ご主人):もうひとつ変わったと言えば・・・洗濯物干場でしょうか。前のお家はとても日当たりが良く、2階で南に面してて。ここは、物干し場スペースにはちょっと日が当たりにくいですね。洗濯機は乾燥器付きのものを買ったので、今の時期はそれでしのいでる感じですが。
― 元々別の場所にあったものを再利用されているそうですが・・・?
U様(ご主人):玄関の靴脱ぎ石と時代祭の様子が描かれた欄間のことですね。 元々昔の実家にあったものなんですが、引越しの使えるかもしれないと思って残していました。 それで藤井さんに相談してみることにしたのです。
八清 施工担当者:そうですね。色々と面白いものをご提案頂きましたね。特にあの大きな靴脱ぎ石には驚きました! 元々式台がいるというお話はしていましたので、ご主人からご提案頂いたんですよね。 ただ、この大きな石を置くのに、玄関のクロークを縮ることになりましたね。
U様(ご主人):そう。当初の計画からすると、クロークがもっと大きくて、あの石が置けるようなスペースじゃなかったのですが。でも、クロークを縮めてもいいからあの石を置きたい、と妻と話して計画を変更しました。
U様(奥さま):でも良かったです。あの玄関の雰囲気はとても気に入っています。 ここに移してから少しずつ磨いていますが、なんだか光ってるように見えてきまして。
八清 施工担当者:本当に良い雰囲気ですね。元から間口のわりに玄関は小さく、元あった引き違いの建具をそのまま使わせてもらいましたが、靴脱ぎ石とともに、入るとぐっと広がる空間を演出してくれてますね。
U様(ご主人):法事のときには親戚がたくさん来ていたのですが、みんな元の実家にあった懐かしいものを見て、昔を思い出されて喜んで帰られました。
U様(奥さま):そうそう、みなさん190年前の棟札にもびっくりしていました!今も床の間に飾っていますが・・・
八清 施工担当者:そうですね、建物を解体しているときに、屋根裏からでてきた棟札の「文政二歳(年)」という文字には驚きましたね。190年前に建てられたということですから!
― 室内犬を飼われてますが、傷みなどの対策はされていますか?
八清 施工担当者:マメ柴のほくと君、今日も元気いっぱい出迎えてくれましたね。愛犬との暮らしはいかがですか?
U様(ご主人):やっぱり無垢の床はだいぶ傷つき、水をこぼされたりもしてます。
対策として、フロアカーペットを敷き、その上には絨毯を敷いてみたりしていますが・・・どうやら木の節が気になるようで、がりがり引っ掻いています。
せっかく敷いているフロアカーペットも噛んでしまいますからね。柱も壁も爪とぎでがりがりやられてますし。だから壁や柱はアクリルの白いボードで覆ったりもしています。
八清 施工担当者:やっぱり・・・・・・。でも愛犬は可愛いですからね・・・(笑)
U様(奥さま):本当にリビングの一番良い場所取られてますね。
本当はソファでも置いてテレビを見ながらくつろげるかな、と思ってましたが、完全に占領されてしまいました。ペレットストーブも近いですしあそこは特等席ですね。まだ小さくてやんちゃなので、もう少し大人になって落ち着いたらソファを置くこともできるのではないかと考えています。
実はさっきもお話しした蔵のダイニングテーブル、前の家の時からがりがりやられていました。でも今回ハチセさんに紹介してもらった家具屋さんに直してもらったらとってもきれいになって戻ってきまして、新品みたいになりました。
もうこれで、永久に使っていけるので嬉しいですね。なんせ15~16年ぐらい使ってるものですから。
― 最後にお気に入りの点を教えてください
U様(ご主人):私はやっぱりリビング。階段と吹き抜けの感じが気に入ってます。
家族がくつろぐ場になってますから。みんながここに集まります。
U様(奥さま):私はやっぱり玄関。お友達が「広い!ここで寝れる!」と言ってました。
入って驚くような広さと、やっぱり存在感のある大きな靴脱ぎ石のある雰囲気ですね。
DATA
- 所 在
- 京都市伏見区
- 家族構成
- 5人
- 間取構成
- 4LDK・お庭・蔵・離れ・車庫(住み替えで町家を購入。設計・仕様決めに参加されました。)
- 特 徴
- 間口も広く奥行きも長い大型の京町家。火袋の小屋組みをそのまま吹抜けに活かしたリビングが特徴。比較的元の形に近い改修を行った。元からあった蔵も改修して再利用。
・・・お話しを伺って(担当H)・・・
愛犬ほくとくんにメロメロのU様ご夫婦。けっこう傷ついてねぇ・・・と言いながらも、愛おしそうに愛犬を見つめる姿はとてもほほえましく感じました。
お話しを伺ったときは冬の終わりだったのですが、蔵にしてもお庭にしても、これから暖かくなるのがすごく楽しみ!と口をそろえておっしゃられてました。
また夏の終わりにお話しを伺ってみたいものです。
U様ご協力ありがとうございました!
― 今の家と出会った流れ、当初の印象は・・・?
U様(ご主人):住み替えで物件を探していたところでした。
たまたまチラシを見ていて、思っていたような広さがあった間取だったので見に行ってみようかと。でも実は他のところへ行っていた帰りでした。
U様(奥さま):そうそう、時間があれば寄ろうか、なんて感じで。
夕方の終わりがけだったのですが、待機されていた営業の方が快く見せてくださいましてね。終わりがけに入っていくと結構嫌がるところも多いのですが、じっくり見学させてもらいましたよ。
八清 施工担当者:その時ご対応させて頂いたのが、営業の担当者でしたね。
そういえばその後京山々のモデル住宅にも来られてますし、お会いしたときは新築の方向で考えられてましたよね?
U様(ご主人):ええ。当初は元住んでいたところでの建て替えも考えていましたが、建ぺい率が40%の地域でしたので建て替えるとなると、元の家よりぐっと狭くなってしまうというところから、住み替えする方向で考えることにしまして。そして、広さが取れれば新築にこだわる必要もないか、と。それで、二条のモデルハウスにも行って大手の住宅メーカーさんのものも見てきました。
ただ、なんかイメージが違ってるような気がしましてね。
当初から木をたくさん使うような家が良いと思ってましたし、木をふんだんに使っている京山々のモデル住宅やハチセさんの改装物件を見せてもらって色々迷ったなかで、最終的に熱心にアドバイスしてくれたハチセさんにお世話になることに決めました。
八清 施工担当者:ここはハチセの中でも初めてぐらいの規模の大きな物件で、僕もどうなるか楽しみでしたね。 改装前、火袋の下の土間は何もなくて、本当にがらんどう、て感じで。初めて見られた時どういう印象でしたか?
U様(ご主人):とても住めると思える状態ではなかったですね。でも、古い家はこんなものだと思っていましたし、私たちにとっては間取と広さが魅力的で。家族の人数もそうですが、荷物が多いということもありましたので、この広さなら、と思いました。
U様(奥さま):主人の実家がこんな風な古いお家だったんです。蔵もありましたし。そのイメージがなんとなくあって、良く似ている、と私は思ってました。