設計物語
まずは改装前の建物がどのような様子だったのかを、少しずつですがご紹介しています。(※本物件は成約済です。2010年6月)
10.<非常階段のサイン>
木戸門
(No.1) 2010.2.27更新
賀茂川に沿って走る、京都府立植物園から下鴨神社へと続く下鴨西通。
その下鴨西通に面して、普段通っていてもあまり目に付かない少し奥まった所に、瓦を載せた木戸門があります。そこが今回改装をする家への入口。
秋にこの家を訪れると、門の脇に植えてある紅葉が赤く染まり、絵になる雰囲気。
木戸門自体も良く見ると、階段に使ってある石、川のせせらぎに見えるような波模様が彫り込まれた板、小屋裏などに、気を配って作られているのが
わかります。この木戸門をくぐって家に帰るなんて、なんだか贅沢な気分になりますね。
専用通路
(No.2) 2010.2.27更新
木戸をくぐって中に入ると、味のある石敷きのアプローチが現れます。
今はホコリや落葉をかぶっていてはっきり見えませんが、青みがかった大きな石と、白い玉石がテンポよく敷かれています。綺麗に磨いて石敷きの両側も手入れをすれば、ぐっと雰囲気が良くなりそう。
玄関
(No.3) 2010.2.27更新
いよいよ建物についてのご紹介です。まずは玄関から。
玄関は半分は建具等が外されて、今は物置のようになっていますが、「舞良戸」が付けられた「和」な雰囲気。入ってすぐの玄関ホールは畳敷きで、華やかな作りだったことが伺えます。
和室(1)
(No.4) 2010.3.6更新
玄関を入ってすぐ脇にある4.5帖の和室。角部屋で、西側から光の入るお部屋です。この建物の和室には全ての部屋に床の間が付いて、それぞれに違った仕様になっています。この建物がどれだけ丁寧に作られていたのかが良くわかる部分です。
このお部屋は、床の間に窓が付き、幅の浅い腰までの高さの地袋が付けられています。
床柱には皮付きの赤松が使用されています。
縁側の天井を見上げると、こちらも丁寧な作りで、やや赤みがかった板に、黒い皮付きの垂木の組み合わせ。明かりとりの下地窓も良い雰囲気です。
和室(2)
(No.5) 2010.3.6更新
玄関を入り正面にある、6帖の和室。南側のお庭が一番綺麗に眺められるお部屋です。
床の間も風格のある作りで、「琵琶床」(=床の間の一部に飾り棚風の地袋を造ったもので、この棚に琵琶を飾ったことから琵琶床と呼ばれるらしい。)が付いています。
縁側の天井も見上げてみると、黒い塗料が塗られ、落ち着いた雰囲気のあるもの。
先ほどの「和室1」の縁側とは異なった仕上げです。
この建物は、使われなくなってから長い時間が経っているため、畳が傷んでいたり、崩れたりしている部分がありますが、建具の建てつけはさほど悪くないので、しっかりと建てられた家であったことが伺えます。
南側のお庭
(No.6) 2010.3.6更新
この家は敷地がゆったりと取られており、南側には広めのお庭があります。 石灯籠が置いてあることから、以前は日本庭園だったことがかろうじてわかりますが、手入れをされなくなって長く経っており、植えてある樹木も大きく育ちすぎて、南側からの日当りを悪くしています。
もちろん、今回の改装ではこのお庭も建物に合わせて、設計士さんに計画をお願いしています。
遊び心のある空間へと変化する予定です。
ダイニングと納戸
(No.7) 2010.03.11更新
1階、6帖の和室(2)の北側には、ダイニングとして使われていた洋室があり、洋室の東隣には広めの納戸があります。この納戸があることで、洋室には東側からの採光が取れていません。
この納戸の部分は思い切ってなくし、建物の東側に空間を設けて採光を良くする計画が出ています。
和室(3)
(No.8) 2010.03.11更新
次は2階の居室をご案内します。
階段を上ってすぐにある6帖の和室には、一風変わった床の間が設えられています。
1階4.5畳の「和室1」と良く似た雰囲気ですが、こちらの床の間には細く模様の入った木の棒が3本、端の方に縦に配されています(左側の写真奥)。床の間?なのかどうか一瞬迷いますが、床柱と台が付いています。
こちらの天井は、赤みがかった杉の天井板に、皮付きの木が竿縁として使われています。
1階の4.5条の和室、縁側の天井とどことなく似ている雰囲気です。
和室(4)
(No.9) 2010.03.11更新
廊下の先にもまた、6帖の和室があります。こちらは南向きで窓が大きく取ってあり、一番日当りの良いお部屋です。障子紙が破れたり、ところどころ朽ちていますが、建具の建てつけが良いので、補修してこのままの雰囲気を残せそう。
こちらの床の間は、障子の縦と横の線だけで、統一感のある美しい雰囲気が出来あがっています。
部屋の南側には、広めの縁側があり、木製の古建具を通して光が入り込みます。
非常階段のサイン?
(No.10) 2010.03.15更新
この建物には何故か、公共施設で見られるような「非常階段」の緑のサインや、緊急時のオレンジの柄の常備灯が付いています。 普通の住宅では見かけられないものですよね?なぜこんなものがあるのか?
その理由は、この町「下鴨宮崎町」の歴史に関係しています。この町には戦前から戦後にかけて「松竹下賀茂撮影所」がありました。
その松竹撮影所の関係者が京都の宿として使用していたのが、この建物の由来だそうです。
建物が町家の作りである伝統工法であること、松竹の撮影所が
1923年~1950年まで下鴨にあったことを考えると、戦前かもしく
は戦後間もない時期に建てられた建物ということも考えられます。
由来がわかって改めてこの建物を見ると、風格のある床の間も、
細かい細工からもその頃の様子が想像できますね。
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