「倫理的に正しいことを選択しよう」という姿勢を表したEthcal(エシカル)の考えを取り入れたこの家は、歴史的にも文化的にも貴重な京町家と、その町並みを保存するためのリノベーションが行われています。
リビングの上部に再生されるのは、町家の特徴の1つ「火袋」。
この家では住み継がれるうちに改装が施され、火袋も壁の中に閉ざされていましたが、そのおかげで昔の姿がそのまま残されていました。
長い年月をかけて少しずつ変化した黒い壁は、この家が刻んだ歴史の証。
人工では決して出すことのできない美しい風合いを持つ壁は、補修してそのまま使います。
(火袋を見上げて)
町家の保存に加え、文化や生活様式も受け継いでいただきたいとの考えから、
火袋と同じく保存、再生されるのは「ミセノマ」と「ミセ」、「ゲンカン」。
道路に最も近い位置にある「ミセ」は商売や職人の仕事場であり、ウチとソトを繋ぐ場所でした。
客人は道路と同じ感覚でミセニワに出入りし、ミセの板戸を開け、框(かまち)に腰かけて用談をしたと言います。
今回のリノベーションでは、間取りで「ミセ」や「ゲンカン」を残すだけでなく
公(ミセ・ミセニワ)と私(リビング)を建具で緩やかに仕切るなどし、
本来に近い役割を果たせるような工夫を施しています。
(打ち合わせ中の塗装屋さん:写真左と設計士クカニアの南さん:写真右)
また、見た目にはわからない箇所にも町家を住み継ぐための工夫を取り入れました。
写真左は、新たに設けられた耐力壁。
リビングとミセに1つずつ設置された2枚の壁が、この家を力強く支えます。
写真右は、隣家と接した壁に施工することで双方の生活音を吸収する「遮音シート」。
これからも長い歴史を刻んでいけるよう現代の生活に沿って見直しを行い、リノベーションを進めています。
エシカルハウスが建つのは、西陣織に携わる職人さんが集まり形成された「西陣」エリア。
地域文化を色濃く反映させながら独自の歴史を歩んだ「織屋建」という建て方の町家が並び、今でも京都らしい景観を保つ貴重な場所です。
エシカルハウスもその「織屋建」町家の1つですが、長い歴史の間に改装され、室内と同様に外観の町家らしさも、失われていました。
今回のエシカルプロジェクトで大切にしたいのは、「町家らしさを取り戻す」ことだけでなくこの地域が歩んできた歴史を尊重し、リノベーションによって今の景観に調和させること。
(外壁の色打ち合わせ)
周囲の町並みに合わせた外観に再生すると同時にプライバシーを尊重しつつソトに向かって開かれた町家の特徴的な文化を表す出格子を再生し、「個」ではなく「地域」に暮らすことに重きを置いたリノベーションを計画しています。