先日の議論で、ファサードの壁にはタイルを用いることが決まった。次はタイルの配置と素材に議論が移る。窓との兼ね合いもあるが、どこからどこまでタイルを貼るかによって、ファサードの印象がずいぶん異なってくるのだ。ここでデザイナー江見からの提案が出た。
まず、「1階・2階とも全てをタイル貼りにする」案。そして、「2階は漆喰の部分を残し、1階のみタイル貼りにする」案。2階まで全て貼ると、「素材によってタイル面が広いと重たい印象になるかも?」「せっかくなので残っている既存の町家らしい形を残しては?」という声が。上のイラストは現状の2階部分。元々2階部分は町家でよく見かけるようなファサードだが、向かって右に小ぶりの引き戸が2つ付いていることが特徴。以前から、これはこのままで使いたいと言う意見がでていた。大正~昭和初期にかけては、洋風建築に傾倒してしまうのではなく、和と洋が同居する和洋折衷型の要素を踏まえたものが流行した。そういった意味でも、今回は2階を元の形のままで残すことに決まった。
そしていよいよ、1階部分の検討が始まる。 頭を悩ませるのがタイルの配置、つまり縦方向・横方向の組み合わせだ。 全て横方向のパターン(左)から始まり、多少動きをつけた横方向と縦方向との組み合わせパターン(中央)。さらに、足元まで タイルにするのではなくモルタルやレンガの腰壁でメリハリをつけるパターン(右)。 持ち寄った参考資料とプラン図面を見比べながら イメージを固めていく。
ここで合わせて検討されたのが、窓の形状。まず一つ目に考えられたのが、西洋建築を連想するイメージの代表格、半円、つまりアーチ型の窓が提案された。上部が半円になった、両開きの窓である。(右イラスト) このような半円のアーチの形は、窓だけでなく、建物の入り口など目立つ場所にデザインされるているのを多く見かける。それが西洋・近代建築の特徴の一つであるのだ。そして、アーチ型と並んで提案されたのが、スクエア型、つまり四角の窓である。
そのイメージは左上のイラスト。片開きの窓だが、窓の淵が立体的に突出した、いわゆるモール加工が施されたイメージ。左下の写真が斜めからモール部分を見たところ。このモール加工も西洋・近代建築では欠かせない要素として挙げられる。
窓についてはこの2パターンで協議された。「アーチ型では少し主張が強いかもしれない、周囲の町並みとの調和を考慮すべき」あるいは、「大正~昭和の洋館らしい雰囲気が出る」、など様々な意見が出たが、最終的にはスクエア・モールタイプに決定した。やはり一番インパクトが強いファサードに対してはメンバーも熱い思いが有り、この後も綿密な打ち合わせが続いていく。次回はタイルの素材について報告する。
洋館のイメージが強いアーチ型も捨てがたかったですね。でもシンプルなスクエアは飽きがこないデザインだし、モールでイイ雰囲気に仕上げますよ! とデザイナー江見は話す。