<壱.下鴨>
ここは下鴨。 高野川と賀茂川の間を占める三角州に広がる一帯のことである。下鴨神社を覆い隠すように繁る「糺すの森」は、古来の原生林がそのままに残る聖域。左京とは、平安京造営以前より、渡来系民族賀茂一族が移り住んでいたとされた場所であり、賀茂氏の氏神とされた上賀茂神社・下鴨神社が創建され、特に下鴨神社の周辺を「下鴨」と呼んだ。 ながらく社領地であったため近世までのどかな農村地帯であったが、住宅地として躍進を見せるのは市電の整備が進んだ昭和に入ってから。ある一角は京都きっての高級住宅地としての側面も持つが、特にこの大正ロマン弐号の辺りには、古い伝統家屋もあれば、レトロなアパートメント、明治以降に流行した洋館建ての住宅、さらには教会が混在する。洛中とは一味もふた味も違う、独特の雰囲気が漂う町、大正ロマン弐はここ下鴨にて幕を開ける。