<六.階段>
題名の通り、この家は「紅い階段」を中心に彩られていく。 日本人が自由闊達に生きた大正時代をイメージする、華やかな「紅」。 日本文化において「紅」と言えば、寺院の廊下や、お茶席、婚礼の会場、雛壇などで見られる、いわゆる「毛氈(もうせん)」を思い起こす。 特に紅いものを「緋毛氈」と呼び、時には魔除けの役目を持つこともあるという。 日本最古の毛氈は正倉院の所蔵とされ、奈良時代に新羅から伝わった。
今回、実際に使用するのは現代のカットパイルのカーペットであるが、鮮やかで華やかな雰囲気、儀式のような厳かな趣き、そしてどこかミステリアスな香りが同居する独特の空間が得られるだろう。部屋を見渡すとどの角度からも目にすることができ、2階の「秘密の部屋」へ導く「紅い階段」となるのである。