<十五.モリスの壁紙>
あえて触れてこなかった2階の部屋。紅い階段を登った先にもロマンのこだわりは隠れている。それは、「ウィリアムモリス」の壁紙。19世紀に活躍したウィリアムモリスは、思想家であり、詩人でもあり、そしてデザイナーとしての顔を持つ、著名な英国人である。産業革命で進む機械化による大量生産から粗悪なものが生まれることに警鐘を鳴らし、細やかな手仕事の重要性を強調したアーツ・アンド・クラフツ運動は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの流れを作ったと言われている。日本においては、民藝運動を起こした思想家「柳 宗悦」も、モリスに影響を受けた人物の一人である。そんなモリスの壁紙は、植物の細やかな描写まで繊細な糸で織られた、絵画のような一品。主張しすぎない、けれど繊細で気品のあるモリスのデザインは、そこに暮らす人を包み込んでくれることだろう。