大正ロマンプロジェクトトップへ戻る

大正ロマン弐号 紅い階段の家

大正ロマン弐号 紅い階段の家

<五.昭和3年築>

解体後、訪れた現場は予想に反して老朽化が進んでいた。天井や壁の貼られた状態では読めない躯体構造の老朽化である。 蟻害の跡が残る柱があれば、腐食で黒く変色し傾いている柱もあり、ひどくくたびれていた。 棟札に書かれていたように、この家屋は昭和3年築、いわゆる伝統工法で建てられている。柱が一つ石と呼ばれる石の上に乗っているだけで、固定されているわけではない。これが伝統工法であることの大きな特徴なのである。見た目だけでは判断できない柱の状態を確認するため、ごく単純な作業だが、金槌でコンコン叩き音の高さで柱の状態を確認していく。正常な柱の場合、「カンカン」と甲高い音をたてるのだが、水分を含んでいる、つまり中が腐食しているような柱は響きが悪い。一本一本叩いて確認していく。 83年の歳月は建物をずいぶんと蝕んでいた。