<四.屋根裏の御幣>
解体後、屋根裏から出てきたのは「御幣(ごへい)」。棟札には施主の名前、棟梁の名前、そして棟上げが行われた「昭和三年九月拾日」の文字が書かれている。棟上げが無事に終了したことに感謝し、そして建物が無事に完成することを祈る儀式を上棟式という。この棟上げの折に、お飾りを付けた棟札を上げ魔除けとする。それがこの「御幣」である。この「御幣」、実は京都及び関西では「おかめ」のお面を取りつける風習がある。
その昔、大報恩寺(通称千本釈迦堂)の本堂を建立する際、棟梁が柱の一本を誤って短く切ってしまい棟があがらなくなった。その棟梁の女房の阿亀が、残り三本も短く切って枡を使って高さを合わせる妙案を出した。そのおかげで無事に本堂は出来上がった。しかし、女房の知恵で出来上がったとなると夫に恥をかかせることになる、と完成を見ずに阿亀は自害してしまう。そのため、棟梁は完成したお堂の棟に阿亀の福面を取りつけ、女房の冥福と本堂の無事を祈った。これが今でも棟札におかめのお面をつける由来である。実際に京都の古い家屋を取り壊すと屋根裏から出てくることが多い。この家も施主の願いを込めて建てられたのである。